石橋湛山評論集【読書】

   

百年前の偉人からの金言。

石橋湛山評論集

『石橋湛山評論集』読了。1984年岩波文庫刊。松尾尊兌編。313ページ。

明治44年から敗戦直後まで、『東洋経済新報』において健筆を揮った石橋湛山 (1884 – 1973) の評論は、普選問題、ロシア革命、三・一独立運動、満州事変等についての評論のどれをとっても、日本にほとんど比類のない自由主義の論調に貫かれており、非武装・非侵略という日本国憲法の精神を見事なまでに先取していた。39篇を精選。

via: Amazon内容 (「BOOK」データベースより)

朝日新聞の論壇時評で取り上げられていて、読みたくなった一冊。

(論壇時評)自由の足元 支配と服従が横行する国 作家・高橋源一郎:朝日新聞デジタル

なるほど確かに、その論はまるで古びていない。どころか、今世の中で起こっている諸問題に対しても、そのまま通用するんじゃないかとゆうほどの新鮮さがあった。

石橋湛山とゆうひとをよく知らない場合は、解説にその生涯が詳しく書かれているので、そちらを先に読むといいかもしれない (ぼくもそうすればよかった笑) 。

収録されている評論の中で、もっとも古いものは100年以上前のものだが、今でも生き生きと読むことができる。著者の先見性か、あるいは人間の営みとゆうものは、100年くらいじゃそれほど変質しないとゆうことなのか。後者だとしたら、ちょっと哀しいな。

女性の社会進出、国防論、経済政策、貿易問題、政治献金問題、地方自治、などなど…… (朝ドラ『花子とアン』で話題になった、白蓮夫人のはなしが出てきたのにはアガッた笑) 。

今でも「問題」であり続けているものばかりで驚く。ふたつの大戦を挿んで、あるいはその内容はより複雑化しているのかもしれないが (そうだと信じたい) 、本質は何ら変わっていないようにも読める。

主張は極めてシンプル。徹底した自由主義、個人主義、平和主義。小さな国家。全編に貫かれている。

そしてシンプルな意見ほど、ズバリ言い切るのは難しい。それがこの著者のスゴさだろう。何よりも論理展開が素晴らしくて、とても読みやすい。

著者の論は、あるいは正論なのかもしれないが、だからこそ100年経っても古びない輝きを放っているようにも感じる。

つかこのひと、戦時中とかよく捕まらなかったな笑。たしかに戦中の文章 (「IV 戦時下の抵抗」参照) は、時代に沿いながらもギリギリのラインを攻めていて、その巧みさに思わずニヤリとさせられる。

強固なはしっかりと保ちつつ、柔軟に論を変えるしなやかさも併せ持つ。こーゆう政治家、今の世の中 (とゆうかいつの時代) にも欲しいなあ。

今の政治家で思い浮かぶのって、あまりにも強弁な連中か、あるいはコロコロと意見を変える連中のどちらかしかいないもん。前者は危うく、後者は頼りない。

湛山そのひとの政治活動が、病のために道半ばで閉ざされてしまたことがホントに悔やまれる。もっと長く首相を続けていれば、あるいは今の世の中は、もっと違ったものになっていたかもしれない。本書を読むと、ついついそんな幻想を抱きたくもなる。

ぼくはざっと流し読んでしまったけど、正直フォローしきれない部分もたくさんあった。ひとつひとつをじっくりと、時代背景なんかも学びながら熟読してみたら、もっと深く学べて面白そう、なんて思ったりもした。

本書を取り上げた、大学の講義やゼミ (もしくはカルチャースクール的な?) があったら受けてみたいなあ。あるいは高校の、社会や国語の授業でもいいかもしれない。むかし言葉でやや読みにくい文体もあるが、それはそれで勉強になりそう。

およそ政治の世界、あるいはジャーナリズムに携わる (志す) すべてのものにとって、必読の一冊ではないだろうか。

最後のオマケがてらに、グッときた文章の一部を引いておく。

我が国の政治的機能は、少数の有産者には遺憾なく有効に働くが、多数の無産階級には、ほとんど何らの保証を与えて居ない。ある意味において無産階級には政府なしともいわばいえよう。

via: P84, 騒擾の政治的意義, II 大正デモクラシーの陣頭で

米騒動についての文章だけど、今の格差拡大にもそのまま当てはまるような……。

第二次世界大戦後、列国の軍備が縮減しないのみか、軍備競争がかえって激化した感のあることは、迷惑至極であります。それは、いずれも自衛のためだと唱えられています。だが昔から、いかなる国でも、自ら侵略的軍備を保持していると声明した国はありません。すべての国が自分の国の軍備はただ自衛のためだと唱えて来ました。たぶん彼らはそう心から信じてもいたでありましょう。だが、自衛と侵略とは、戦術的にも戦略的にも、はっきりした区別のできることではありません。かくて自衛軍備だけしか持っていないはずの国々の間に、第一次世界戦争も第二次世界戦争も起こりました。

via: P265, プレスクラブ演説草稿, V 戦後日本の進路

「ただ自衛のためだと」「心から信じて」る、てのが厄介なんだよなあ……。

おわり。

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