八つ墓村 (横溝正史)【読書】

      2015/01/15

ホラー・ジャパネスクの頂点にたつ最高傑作!

八つ墓村 横溝正史

横溝正史著『金田一耕助ファイル1 八つ墓村』読了。1971年角川文庫刊 (1949年初出) 。494ページ。

戦国の頃、三千両の黄金を携えた八人の武者がこの村に落ちのびた。だが、欲に目の眩んだ村人たちは八人を惨殺。その後、不祥の怪異があい次ぎ、以来この村は”八つ墓村”と呼ばれるようになったという__。大正×年、落人襲撃の首謀者田治見庄左衛門の子孫、要蔵が突然発狂、三十二人の村人を虐殺し、行方不明となる。そして二十数年、謎の連続殺人事件が再びこの村を襲った……。
現代ホラー小説の原点ともいうべき、シリーズ最高傑作!!

via: Amazon内容紹介 (「BOOK」データベースより)

『八つ墓村』は、もっとも金田一”らしい”作品であるように思う。

何をもって”らしい”と言うかはムズカしいところだが、物語が背負っている背景や「匂い」といったものが、いかにもおどろおどろしくて、これぞ金田一!と言うにふさわしい雰囲気を醸し出している。

戦国時代の落ち武者の言い伝え、26年前の32人殺し、双子の老婆などなど、おー恐っ。

発狂した田治見要蔵なんて、もはやトラウマだよね笑。アタマに懐中電灯2本挿して、兵児帯に日本刀、ショットガン。何度か映像化されてるから余計にだけど、その風体からしていかにも恐ろしい。

で、ザ・金田一な作品のくせに、当の金田一が全然出てこない。つかね、毎度のことだけど、いつにも増して事件を解かない笑。金田一自身も言ってるけど、ホント何もしてないわ今回笑。

そのくせ最初っから犯人の目星はついてたとか言い放ったりするから憎たらしい。むざむざと8人 (犯人自身も入れたら9人か) も殺させるなよ。動機が見えなかったとか、拘りすぎだろ笑。ほかにもうちょっとやりようあったろうに。

この記録に筆を染めてから私がいつも不便を感じるのは、これが一種の探偵譚であるにもかかわらず、探偵のがわから筆をすすめていくことができないということである。ふつう一般の探偵小説では、探偵のがわから筆をすすめていくことによって、どの程度に調査が進行し、探偵が何を発見したかということを、読者に示すことができるのだ。そして、それによって、犯人や解決を暗示することができるのだが、この記録の場合、記述者はいつも探偵のそばにいたわけではない。いや記述者が探偵のそばにいるのは、ごく例外の場合に限るのだから、記録のすすんでいく過程において、警察がどの程度に、何を発見したかということを、ありのままに示すことができないのがほんとうなのである。

via: P210

金田一が出てこないのは、主人公寺田 (田治見) 辰弥の手記、とゆう形式をとっているから。これが独特の雰囲気で実に良い。読者も一緒になってこの村に入り、事件を追体験しているような錯覚に囚われる。

自らが分け入っていくかのような描写は、洞窟のシーンで絶大な効果を発揮する。闇の中を探っていく感覚は、怖さ倍増でもはやホラー。

うん、金田一って、ミステリとゆうよりはホラーなんだよね笑。本作なんて特に、関係者がどんどん死んでいくから、もうほとんど犯人そいつしか残ってねーだろ、てところまでいっちゃう。誰かどこかで止めようよホント笑。

それと本作は、財宝探しとゆうアドヴェンチャーの要素も加わっていて、より愉しい。隠し通路に宝の地図、鍾乳洞探検などなど、和製インディ・ジョーンズ的な面白さも満載。事件そっちのけで、この財宝探しのほうが興味深かったりもする。

とゆうか、メインの殺人事件とこの宝探しと、さらには辰弥出生の秘密や過去の事件などなど、いろんな要素が多層的に絡み合うことで、異様な世界観を生んでいるようにも思う。

コワ面白いミステリ・ホラーの古典。いろんな読みかたができて、やはり傑作なのだな、てことを改めて思った。

おわり。

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引用

グッときた文章を、以下に書き殴っておく。

すべてが気ちがいじみている。万事が調子が狂っている。しかし、この事件の犯人が、けっして馬鹿でも気ちがいでもないことは、あまりにも鮮やかすぎる手ぎわでもわかるではないか。われわれの眼に、この事件が気ちがいじみてうつるのは、犯人の計画が、全然、わかっていないせいではあるまいか。つまり、いままで起こった三つの殺人事件は、犯人の描こうとする、血みどろな殺人円の円周上の、三つの点にすぎないのではあるまいか。そして、犯人がその円を描き終わるまで、われわれは何を目的として、こういう殺人が行われるのかわからないのではあるまいか。

via: P152

人間もこの年ごろになると、すべての感情が揮発しつくして、情操腺が、軽油か海綿みたいになってしまうのかしらん。

via: P165

牛方たちは無言のまま、ずらりと私を取りまいた。何かいえば、躍りかからん気配である。私の腋の下から、タラタラとつめたい汗がながれた。私はそれほど、自分を臆病な人間とは思わぬけれど、理屈を説いてわからぬ相手だけに始末が悪いのだ。世の中に無知と無教養ほど恐ろしいものはない。

via: P185

むかし言葉

金田一で知るむかし言葉。意味が分からなくて思わず調べてしまった言葉をメモしておく。

訓導

訓導〈くんどう〉旧制度における小学校,国民学校の正規の教員の職名。

via: コトバンク

辰弥の母、鶴子が密かに思いを寄せていた亀井陽一の職業。学校の先生のことなのね。

博労

博労〈ばくろう〉牛馬の仲買人。

via: コトバンク

辰弥の祖父井川丑松などはこの職業。八つ墓村では、酪農がひとつの産業にもなっている。

ふくささばき

ふくさ、とは、茶道で用いる絹布のこと。袱紗、帛紗、服紗などと書くらしい。そのさばき。つまりは所作のことが、ふくささばき。

こんな動画が参考になる。

袱紗さばき 表千家 – YouTube

作中では双子の老婆小竹と小梅が、辰弥にお茶を振る舞うシーンがたびたび登場する。

と見こう見

とみ‐こうみ【左見右見】[名](スル) あっちを見たり、こっちを見たりすること。また、あちこち様子をうかがうこと。

via: goo辞書

とつおいつ

とつ‐おいつ[副](スル)《「取りつ置きつ」の音変化。手に取ったり下に置いたりの意》考えが定まらず、あれこれと思い迷うさま。

via: goo辞書

映像化

映像化はいろいろあるが、トヨエツが金田一をやった、市川崑監督作品が何といっても印象深い。

劇場公開時に本作を観にいったのがきっかけで、小説にもハマるようになった。思い出深い映画。

野村芳太郎監督版も有名。祟りじゃ〜!が流行ったそうな。山崎努さんの要蔵が怖すぎる。辰弥をショーケンが、金田一を渥美清さん (!) がそれぞれ演じている。

読むならこちらから。今ならkindle版もある。

 -小説

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