ジミー、野を駆ける伝説 (2014)【映画】

      2015/01/20

今に息づく自由という大樹。それはかつて”名もなき英雄”が蒔いた一粒の種__。

ジミー野を駆ける伝説 ケンローチ

試写会にて『ジミー、野を駆ける伝説 (Jimmy’s Hall) 』鑑賞。2014年イギリス / アイルランド / フランス。ケン・ローチ監督。109分。

『麦の穂をゆらす風』などのケン・ローチがメガホンを取り、1930年代のアイルランドを舞台に、庶民の自由のために戦った無名の活動家を描くヒューマンドラマ。アメリカからアイルランドの片田舎に帰郷した主人公が、教会や地主といった権力を持つ者たちに弾圧されながら、それでも仲間たちと共に自由を求めて活動するさまをつづる。

via: シネマトゥデイ

主演はバリー・ウォード。共演にシモーヌ・カービー、ジム・ノートンほか。1月17日から公開。

実に美しい映画だった。それでいて現代にも通じるテーマを扱っていて、いろいろと考えさせられる。穏やかな中にも熱いメッセージ性を感じる、とっても良い映画だった!

絵画のような美しさ

美しい、という表現が実にしっくりくる映画だと思う。アイルランドの自然と、そこに息づく人々を切り取ったような映像は、まるで絵画のよう

自然の風景はもちろんのこと、衣装やセットの細部にも強いこだわりを感じることができる。

映画を「観る」というよりは、映像を「眺める」といった感覚がより近い。画面を通して、匂いや温度、肌触りまで伝わってくるような気がするから凄まじい。

野は駆けません笑

展開も穏やかで、過剰な演出は一切なし。静かに進んでいくのが何とも心地いい。ヨーロッパのセンスはやっぱり好きだなあ。

ストーリーそのものは、まあシンプルと言っていい。

舞台は1930年代のアイルランド。故郷に帰ってきたかつてのカリスマ、ジミー (バリー・ウォード) が、集会所 (ホール) を再建し、村に活気が戻る。

ところがそれを良しとしない守旧派の抵抗に合い、弾圧を受ける。村人はジミーを中心に団結、自由を手に入れるために抵抗する。はなしの骨子はこんなところだ。

本作の原題は『Jimmy’s Hall (ジミーのホール) 』。ジミーが再建する集会所がこの物語の中心であり、自由の象徴のように描かれているので、タイトルとしてとてもしっくりくる。

ところが邦題には、何だか余計な文章みたいなものがくっついている。この手のタイトルって最近多いように思うのだが、流行りなのだろうか。何だかいかにもダサいのでやめてほしい笑

本作について言えば、ジミーが野を駆けるシーンなんて、ひとつも出てこないからね笑。つかそもそも、そーゆう躍動感みたいなものとは対極にある映画のように思う。

駆けるのはむしろ、ジミーを追う側の人々。警官は彼を捕まえるために、若者たちは、彼に憧れて追いかけるように駆けていく。自転車でだけど。

まあジミーは常にその先を行ってるわけだから、ある意味駆けてはいるのか笑。

時代の「空気」を感じ取る

ストーリー自体はわかりやすいものの、映画 (とゆうかこの国この時代) が纏っている「空気」みたいなものは、ちょっとわかりにくい。

時代の「空気」とゆうものは実に微妙で、説明するのが難しいというのはもちろんある (だから空気なわけだし) 。

本作はそんな繊細な「空気」を、わかりにくさも残したまま丁寧に描いていて素晴らしい。

ぼく自身、アイルランドの歴史についてはほとんど何も知らずに観たので、「空気」を掴めなくて、ちょっともどかしく感じる部分もあった。

やっていることは理解できるんだけど、その裏っ側にある価値観とか信念がよくわからないから、何だかモヤモヤが残る。

けどそんなもどかしさも含めて、この時代の「空気」を感じることが、この映画 (に限らずどの映画もそーだけど) の醍醐味のような気もするから、なかなか難しい。

そいや、この時代のアイルランドがどーゆう状況にあったかってのは、映画の冒頭、文章でさらっと説明されるんだけど、ちょっと説明不足にも感じる。

ちなみにこの、説明不足、てのは全編通してであって、これは本作の良さでもあるからまたややこしい笑。

あえて説明的な描写を排しているようなところもあって、観るものを選ぶとゆうか、けっこう鑑賞力を試されるなあとも感じた。

このあたりも絵画を鑑賞するときの感覚と似ていて面白い。

分裂した社会

では1930年代のアイルランドの「空気」とはどんなものだったのか。

内戦は終わって、一定の平和を手に入れたものの、まだ社会には多くの不和や分裂が残っている。その分裂の根っこには、貧富の差がある。

これって、戦争の前と後の差こそあれ、現代の状況とも大いに通じる部分があるような気がして恐ろしい、とゆうか他人事じゃねー (いや現代が「戦前」であってはならないんだけど) 。

ジミーと敵対するシェリダン神父 (ジム・ノートン) が象徴的な存在だ。

教会の説教で、「こちら側 (教会) か、向こう側 (ホール) か」といった安易な二者択一を迫って対立を煽ったり、和解を提案しにきたジミーの意見には耳を傾けようとしなかったり。まるでどこかの国の首相みたいだなあ。

ジミーが神父に向かって言う、「あなたは自分に跪くものの声にしか耳を貸さない」てセリフがとても印象的だ。

それでも神父は、ジミーが置いていったジャズのレコードを気に入ったり、人間的にはジミーのことを尊敬しているような節もあったりして、なかなか複雑なキャラクタだった。

本作は神父に限らず、みな安易にキャラクタ化されていなくて、どの登場人物も人間的な矛盾を抱えている。まるで本当にこの村で生きてきたかのような存在感を感じるのは、この多面性によるところが大きい。

対話をする大切さ

印象的なシーンはほかにもいくつかある。以下、散文的に気に入ったシーンを並べてみる。

まず集まって議論をするシーンが何度か見られるが、いずれのシーンも対話をする大切さが端的に現れていて興味深い。

ホール側の人間たちは、相手のはなしをちゃんと聞き、解決策を共に考えようとしているのに対して、教会側の人間たちは、当時の流行りや専門用語をそれぞれが好き勝手に言っているだけで、まるで議論が噛み合わない。

分裂のむなしさ

あるいは警官たちと、ジミーの母親が世間話をするシーン。

ジミーを捕らるため、警官たちが実家に押し掛けてくる。支度をしたいというジミーを待つ間、警官たちとジミーの母が、思い出ばなしをはじめる (その間に逃げられてしまうのだが笑) 。

ある警官は、子供のころ、ジミーの母に貸してもらった本が面白かったなどと、お礼を述べたりしている。小さい村のこと、みな昔からの知り合いなのだ。

それが追うものと追われるものに分かれてしまっている。隣人同士であるにもかかわらず。社会が分断されるということのむなしさが、このシーンに端的に現れているように思う。

それに、警官たちはジミーを捕らえることにさほど熱心ではない、ということも伝わってくる。

頭の中は消せない

憩いの場であると同時に、学びの場でもあったホールだが、次第に対立が深まっていき、最後には燃やされてしまう。

焼け跡を見ながら呆然と立ち尽くす村人に向かって、ある村人がこんなことを言う。

「学んだことはすべて頭の中に入っている。ホールは燃やせても、わたしたちの頭の中までは消せない

本作は心に響く言葉がほかにもたくさん出てくるが、個人的にはこれが一番グッときた。

さいごに

貧しくも清く生きようとする主人公たちは実に爽やかで、自然の風景と相まってとても美しかった。

その対照として描かれる神父たちには、必ずしも美しいだけではない人間の内面が現れていて、また素晴らしかった。

ケン・ローチ監督の映画を観るのは、実は本作がはじめて。細部にまでこだわりが感じられる映像、説明的でない描写、深みのある人物たち、などなど、実に丁寧に映画を撮る監督さん、とゆう印象を持った。過去の名作も観てみたい。

静かに流れるヨーロッパ映画は品があってステキ。水がじんわりとしみ込んでいくような、何とも味わい深い映画だった。

おわり。

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作品情報

公式ページはこちら。▷ 映画『ジミー、野を駆ける伝説』公式サイト

あらすじ

1932年のアイルランド。内戦終結から10年が経過し、元活動家のジミー・グラルトン (バリー・ウォード) が10年ぶりにアメリカから故郷の片田舎に戻ってくる。ジミーはかつて仲間たちと芸術やスポーツを楽しみ、語り合ったホールを復活させ、住民たちの間には活気が戻ってくる。しかし、神父のシェリダン (ジム・ノートン) が住民を戸別訪問してホールに行かないようにと警告し……。

via: シネマトゥデイ

予告編

映画『ジミー、野を駆ける伝説』予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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