シャーロック・ホームズの冒険 (コナン・ドイル)【読書】
2015/01/22
この12の事件でホームズは世界一有名な探偵となった。
アーサー・コナン・ドイル著『シャーロック・ホームズ全集3 シャーロック・ホームズの冒険 (The Adventures of Sherlock Holmes) 』読了。
2014年河出文庫刊 (1891年原著初出) 。小林司 / 東山あかね訳。リチャード・ランセリン・グリーン (高田寛訳) 注・解説。732ページ。
ドイル自身がもっとも愛した短篇であり、探偵小説史上の記念碑的作品”まだらの紐”をはじめ、”ボヘミアの醜聞”、”赤毛組合”など、名探偵ホームズの人気を確立した第一短篇集。夢、喜劇、幻想が入り混じる、ドイルの最高傑作。オックスフォード大学版の注・解説にくわえ、初版本イラスト全点を復刻掲載した決定版。
三谷幸喜さん脚本の「学園ミステリー シャーロックホームズ」と並行して、原作を読み進めている。
『緋色の研究』『四つの署名』ときて、3冊目は『シャーロック・ホームズの冒険』。前2作は長編だったが、本作はホームズ初の短篇集である。
いやー面白かった!ホームズには軽い短篇のほうがよく似合う!特に本作は、ぼくでもタイトルを知っている (あるいは子供のころ断片的に読んだ) ような名作が目白押しで、まさにドイル = ホームズの最高傑作とゆうにふさわしい。
全12篇、注釈も豊富で、解説・あとがきも合わせると700ページを越える大著 (本を実際に”立てる”ことができる笑) だが、どのおはなしも面白くてスラスラと読めてしまう。読みはじめたら止まらなくなって、ほとんど一気読みだった。
収録作は、登場順に以下の通り。
「ボヘミアの醜聞」「花婿失踪事件」「赤毛組合」「ボスコム谷の惨劇」「オレンジの種五つ」「唇の捩れた男」「青いガーネット」「まだらの紐」「技師の親指」「花嫁失踪事件」「緑柱石の宝冠」「ぶな屋敷」。
ちなみに12篇の中でも一際面白かったのは、「赤毛組合」と「青いガーネット」かなあ。どの作品も味わい深いけど、この2作が特にお気に入り。
意外だったのは、殺人以外の事件も多いということ。どころか、犯罪でさえない事件もいくつか登場する。
はなしの性質も、軽いものから重たいものまで実に多彩。KKKなどの時事ネタが盛られているあたりは、前2作の長編とも共通する。
アイリーン・アドラー (「ボヘミアの醜聞」) やロイロット医師 (「まだらの紐」) といった、印象的なキャラクタ (宿敵たち、というべきか) も登場して楽しませてくれる。
ホームズの探偵術も推理だけにとどまらない。変装あり潜入あり (さらには怪しげなクスリもやっている笑。てこれは一種の趣味か。) で、”冒険 (Adventure) “というタイトルがいかにもピッタリくる。
ホームズが素晴らしいのは、ことが起こる前に事件を解決してしまったり、あるいは依頼とは異なる、より重大な事件を掘り起こしてきたりするところ。
ぼくの大好きな名探偵、金田一耕助 (こちらも今、ホームズと並行して読み返している) なんて、ほとんど関係者が全員死んでしまって、犯人の目的が半ば達成されてから、事件を解決 (?) したりするからなあ笑。
引き合いに出すのもアレだけど、比べて読むとその差は歴然笑 (まあ金田一は金田一で、別種の面白さがあるんだけどね) 。
依頼人を守り、殺人を未然に防ぐ。それでこそ名探偵というものだ。カッコイイぞ、ホームズ!
おわり。
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