太陽の塔 (森見登美彦)【読書】

      2015/04/22

すべての失恋男たちに捧ぐ、爆笑妄想青春巨篇 in 京都。

太陽の塔 森見登美彦

森見登美彦著『太陽の塔』読了。2006年新潮文庫 (2003年新潮社) 刊。237ページ。

私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

via: Amazon内容紹介 (「BOOK」データベースより)

森見登美彦さんの著書は、今まで順番を気にせず、パラパラとつまみ食いをするように読んできた (本作が6冊目だ) のだが、今年は未読の作品を、順番通りに読んでいこうと思っている。

つーわけでまずはデビュー作から。『太陽の塔』。

森見さんの作風をわかっている今読むと、こんなに面白いものはない!てほどに、至るところ大爆笑だったのだが、「1冊目」として出会っていたら、はたして楽しめたかどうか怪しい。それくらい、本作はぶっ飛んでいる (もちろん良い意味で) 。

著者を彷彿とさせるダメ京大生の「私」と、その友人たちが織りなす、だいぶバカバカしい学生生活笑。何をするってわけでもない、とゆうか、むしろほとんど何もしない。なのにグイグイ読ませる。

読んでる間はすこぶる愉快なのに、本を閉じるとほぼ何も残らない。これぞ森見ワールド!というべき独特の世界観は、デビュー作から全開、というよりは本作にこそ色濃い。後に続く作品の原点なのだなあ、てことをしみじみ感じた。

「私」は「水尾さん研究」と称して、フラれた元カノを付け回す。ほとんどストーカーだよね笑。ちょっと、いやだいぶ気持ち悪い。

今読むと本作、というよりは森見登美彦という作家が、よく世間に受け入れられたなあとも思う。この紙一重な感じは、いかにもデビュー作らしくて楽しい。

ところで「私」のような、論理的とゆうにはあまりに頭でっかちなキャラクタて、理系の一般的イメージに当たらずとも遠からず、て感じなのだろうか。理系男子だった人間としては、何だかちょっと哀しいな笑。

ただ、水尾さんを追いかけているうちに、いつしか彼女の夢の中に入り込むだとか、リアル (ではないか笑) の中に時折フワッと差し挿まれるファンタジー感は、だいぶ心地いい。

「地上から30センチ浮いたような」て表現が作中にもちょこちょこ出てくるけど、これは本作 (さらには後に続く森見ワールド) 自身の雰囲気をよく表しているとも思う。

ダメ学生の「あるある」と、わけのワカラナイ不思議世界の融合。その混ざり具合が何とも絶妙なんだよね。

大団円の幸福感もあいかわらず素晴らしい。「ええじゃないか騒動」って何だよ笑。これもやはりわけがわからないけれど、畳みかけの勢いで一気に満たされた気分に浸れる。サイコー。

学生の恋を描いた小説、てことで無理やりこじつけるならば、たまたま並行して新聞連載を読んでいる、夏目漱石『三四郎』と似ていなくもない、なんてことも思ったりした。

『三四郎』を100倍くらい不真面目にした感じ。いや、100年前の人間からすれば、三四郎たちだってだいぶ不真面目でけしからん、て感じだったのかもしれないなあ。

『三四郎』が「20世紀初頭」の「東大生」で、本作は「21世紀初頭」の「京大生」。いずれもその時代の「新人類」を描いているようなところもあったりなかったり。

『三四郎』が100年後の今読んでも楽しめるように、本作も100年後の未来人が読んだら、また今とは違った楽しみかたができるんじゃないか、なーんてことも思ったりした。

おわり。

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比喩の意味

作中に登場する比喩 (などの表現) のなかには、意味の知らないものをいくつかあった。そんな無知を補うべく、調べたもののいくつかを以下に並べておく。

ぼじそわかあ (P16)

般若心経の最後の文言。元来はサンスクリット語 (インドの言葉) で、漢字を当てると「菩提薩婆訶」。「幸あれ」みたいな意味らしい。

参考 ▷ 般若心経

ヴィタ・セクスアリス (P61)

ラテン語で「性欲的生活 (vita sexualis) 」という意味。森鴎外に同名 (『ヰタ・セクスアリス』) の小説がある。

ちなみに、同節には「ジョニー」という隠語も出てくる。これの意味は文脈で推察できるのだが、有名な隠語だってことは知らなかった。言われてみれば、まあそうだな笑。

ゴルディオスの結び目 (P65)

長いんでこのあたりを参考に。世界史的な故事はホント疎いなあ。じわじわ勉強しないと。

参考 ▷ ゴルディアスの結び目 – Wikipedia

ソポクレス級の悲劇 (P129)

古代ギリシャ (アテナイ) の悲劇作家。『オイディプス王』なんかが有名らしい。タイトルだけは聞いたことあるな。

避雷針 (P137)

「雨雲の中に電荷が溜まっていくだろ、それでぎりぎりいっぱいになったら、空気中をばりばりと電気が流れるわけだよ。それが雷だろ。問題はぎりぎりまで溜めるってことでな、その雨雲に溜まった電荷を少しずつ少しずつ地面に逃がしてやることができたら、雷が起こるまで電荷を溜め込まないですむわけだ。避雷針は電荷を逃がす通路さ。(後略) 」

これは思いっきり電磁気学の領域なので、知ってて然るべきなんだけど、恥ずかしながら知らなかった。

つか、雷をわざと誘導して避雷針に落とすことで、他に落ちるのを防いでるのかと思っていた。おバカさん!

精神的ホメオスタシス (P159)

ホメオスタシス (homeostasis) は「生体恒常性」という意味。生物学の用語なのね。詳しくは百科事典を。

参考 ▷ ホメオスタシス(ホメオスタシス)とは – コトバンク

「精神的〜」は、精神の安定を保つ、みたいなニュアンスで使っているんだろうなあ。

農学部 (著者と「私」の専攻) だと、やっぱこの辺りも学ぶのかな。つかぼくは生物も疎いんだよなあ。まあこちらは不思議と、あまり学びたいと思わないんだけど笑。

法界悋気 (P209)

これは普通に日本語の問題ですね。無知が恥ずかしい笑。

ほうかい-りんき【法界悋気】自分に無関係な人のことに嫉妬すること。また、他人の恋をねたむこと。おかやき。「法界」は自分とは何の関係もない他人の意。「悋気」は嫉妬心。「法界」は「ほっかい」とも読む。

via: goo辞書

「悋気」が嫉妬、てのは知ってたけど、「法界」は知らなかったなあ。

クトゥルー神話体系 (P148)

そーゆう架空の神話、というか小説群があるらしい。詳しくはとっても長いので以下を参照。

参考 ▷ クトゥルフ神話 – Wikipedia

つかつか、森見さんの2作目のタイトルって、これのオマージュ?つーわけで次は、その『四畳半神話体系』を読もうと思う。

今回読んだ『太陽の塔』はこちら。

 -小説

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