シェフ 三ツ星フードトラック始めました (2014)【映画】映画ブロガーは観るべし!

   

美味しい人生は停まっていたら見つからない!?

シェフ 三ツ星フードトラック始めました

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました (Chef) 』の試写会に行ってきた。

『アイアンマン』シリーズなどの監督で俳優のジョン・ファヴローがメガホンを取り、究極のサンドイッチを売る旅をする元一流レストランのシェフを演じるドラマ。店を辞め、偶然キューバサンドイッチと出会ったシェフが、フードトラックでサンドイッチを売りながら人生を取り戻していくプロセスを映す。

via: シネマトゥデイ

つー内容で、監督・主演はジョン・ファヴロー。2月28日公開。

グルメブロガーは自分かもしれない

本作を観ながら、ふたつの文章を思い返していた。いずれも「批評」に関する言及だ。

ひとつは是枝裕和監督のインタビュー記事。主題は政治だが、映画批評について書かれた部分もあって面白い。ちょっと引用する。

同調圧力の強い日本では、自分の頭でものを考えるという訓練が積まれていないような気がするんですよね。自分なりの解釈を加えることに対する不安がとても強いので、批評の機能が弱ってしまっている。その結果が映画だと『泣けた!』『星四つ』。こんなに楽なリアクションはありません。何かと向き合い、それについて言葉をつむぐ訓練が欠けています。これは映画に限った話ではなく、政治などあらゆる分野でそうなっていると思います (太字引用者。以下同) 。

via: (インタビュー 今こそ政治を話そう)二分法の世界観 是枝裕和さん:朝日新聞デジタル(※全文を読むには無料の会員登録が必要)

この文章の何が本作と関係あるのかと思うかもしれないが、少なくともぼくは大いに関係があると感じた。つまりこうゆうことだ。

本作はジョン・ファヴロー演じる料理人キャスパーが、著名なグルメブロガー (オリヴァー・プラット) と”対決”するという展開を辿る。その結果キャスパーは窮地に陥るのだが、この前半部で描かれているのは、創作と批評の対立と受け取ることもできる。

ちなみにこれは鑑賞後に知ったことだけど、本作のアイデアはファヴロー監督の実体験が基になっているらしい。レストランをそのまま映画業界 (とそのファン) に置き換えてみても、まるっとそのまま当てはまるような構図になっている。

上に引用した是枝監督の発言は、言ってみれば作り手側の視点であり、これはキャスパーがブチ切れながらブロガーに対して吐く発言とも共通する部分があるように感じる。まあ、公衆の面前で切れたらいかんけど笑。

さて翻って批評家の意見はどうか。本作でグルメブロガーの心情があからさまに描かれることはないが、代わりにもうひとつの文章を引用してみる。スポーツライターの二宮清純さんがその著書で紹介していた、ボクシングに関するエピソードだ。

ある世界戦の直後のことだ。「あんなに左フックを振り回したって当たらなきゃ意味がないよ」。私が言うと他の記者たちも同調した。ひとり異を唱えたのが小林 (引用者注: 元日本バンタム級チャンピオン小林智昭。故人) だった。

「左フックは背中をかするだけでも意味があるんです。肝臓がグーッと腹の中で動く瞬間の恐怖といったら……わかりますか!?」

私は何も言い返せないばかりか、その程度の知識で記事を書いている自分を恥ずかしく思った。(略) ではスポーツ経験者じゃなければ、スポーツの記事は書けないのか。そんなことはない。書き手には書き手の思惑や感性がある。

via: P5-6, スポーツを「視る」技術 (講談社現代新書)

が「開き直るのはみっともない」とした上で、経験者 = 作り手 (映画や料理の場合は作り手なので、以下「作り手」に置き換えて書く) ではないからこそ、作り手以上に思索を巡らせ、ときに自らの視点や論理を疑いながら批評し、作品に対してはつねに誠実でなければならない、とつづけている。

あるいは先に引用した是枝監督の記事では、「日本人は”答え合わせ”をしたがる」とした上で、こんなことも言っている。

ロシア人の記者に『君は気づいてないかもしれないが、君は遺された人々、棄てられた人々を描いている。それが君の本質だ』って言われたことがあります。で、確かにそうだった。ずっと『棄民』の話を撮りたいと思っていたから。すばらしいでしょ。翻って日本では多数派の意見がなんとなく正解とみなされるし、星の数が多い方が見る価値の高い映画だということになってしまう。『浅はかさ』の原因はひとつではありません。それぞれの立場の人が自分の頭で考え、行動していくことで、少しずつ『深く』していくしかありません。

本作を観ながら、あのグルメブロガーはひょっとしたら自分なのかもしれないな、なんてふうに思ったら (ついでに言うと、そーゆう”向こう側”を慮る姿勢も重要だと思っている) 、ちょっと背筋が寒くなった。

ぼく自身、映画のことをこうやってブログに書いている”映画ブロガー”の端くれとして、作品 (あるいは「映画」とゆう文化そのもの) に対しては常に誠実であろうと努めている。が、自分とは合わない映画を観ると、ときに作り手の苦労など忖度せずつい酷評してしまうこともある。

まあこのブログの影響力なんて高が知れているけれど、曲がりなりにも批評めいたことを書いている身としては、本作を観て襟を正される思いがした。

美味しいは正義

と、以上のような小難しいことは考えなくても、本作は十分楽しめる。

上述のブチ切れシーン以降の、逆転再生物語な展開はとってもわかりやすくて爽やかに感動できるし、小ネタも満載で至るところ笑える。実に映画らしい映画だ。

TwitterやFacebook、VineなどのSNSも登場して、”今風”であると同時にとっても効果的な小道具として使われていて巧い。炎上でピンチを招き、口コミによるマーケティングで復活するあたりはちょっと出来すぎな気もするけど、いちいちニヤリとさせられるから、まあいいか笑。

それに何より、出てくる料理がどれもこれもちょー美味しそう!空腹時に観ると飯テロ感全開でツラいが、お腹いっぱいすぎても堪能できないかもしれない笑。ぼく自身は腹七分目ほどの状態で観たのだが、そのくらいがちょうどいいようにも思う。

ちなみにこの試写会 (Filmarksさん主催) 、映画を観たあとに劇中で出てくるキューバサンドイッチを食べられるとゆう素晴らしいオマケつきで、観ながら「これ後で食べられるのかあ」と思うとだいぶ高まった (お店の様子はエントリを改めて書く予定) 。鑑賞前にあらかじめキューバサンドを食べられるお店を見つけておくといいかもしれない。

そのメインでもあるキューバサンドはもちろんとっても美味しそうなんだけど、特に惹かれたのは実は「売り物」じゃないお料理。スカヨハに振る舞うパスタとか、息子に出すチーズトーストなどなど、よそ行きじゃない、気取っていない感じがやぱ一番だな、とも思った。

中でも一番お腹空いたのは、焼きたてお肉の試食。具材探しでつまみ食い的に食べるシーンが堪らなかった。つまみ食い万歳笑

豪華キャスト!弟子コンビがサイコー!

キャストもみな素晴らしかった。ファヴロー監督の人望なのか、カメオ出演もかなり豪華で楽しい。

レストランのオーナーはダスティン・ホフマン。キャスパーから見たらかなーりイヤなやつだけど、裏にはオーナーとしての責任感や矜持も感じられてさすがだなと思った。発言に説得力がある。

元妻の元夫 (笑!) で実業家のロバート・ダウニー・Jrはキャスパーの窮地を救ってくれるキーマンなんだけど、ファヴロートの掛け合いのシーンは全部アドリブっぽかったな。空気感が絶妙だった。

ウェイトレス (元カノ?) のスカヨハは、何だかはじめてちょっとキュートだなと思えた。芝居も少しうまくなった笑?

つか元妻がソフィア・ベルガラで元カノがスカヨハって、女性としてのタイプ (とゆうか主にプロポーション) が似過ぎだし、キャスパーブヨブヨメタボ体型で性格もヒドそうなのにモテるな!やぱ美女は才能に惚れるんだな。何だかそのあたりの設定にも妙にリアリティがあった笑

キャスパーの弟子コンビもステキだったなあ。一緒についてきてくれるジョン・レグイザモ (『ER』のDr.クレメンテ!) はもちろんのこと、料理長を”継いだ”ボビー・カナヴェイル (『ブルージャスミン』のチリ!) もけっこう笑わせてくれた。後半でも出てきてほしかったなあ。

さいごに

「批評」って難しいな、なんてことを考えていたら、どんどん感想が書きづらくなってしまった笑。けど映画 (に限らずグルメでも何でも) の「評価」らしきものを発信しているひとは、そーゆう視点で本作を観てみても面白いかもしれない。

自分の影響力なんて大したことないと思うかもしれないが、是枝監督も言ってるように、それぞれが少しずつやっていくしかないのだから。

つってもまあ、インターネットってのは”答え合わせ”の場みたいな側面も多分にあるからなかなか難しいんだよなあ。

おわり。

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作品情報

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました (Chef) 』。2014年アメリカ。ジョン・ファヴロー監督 (兼製作・脚本・主演) 。115分。

共演にソフィア・ベルガラ、ジョン・レグイザモ、ダスティン・ホフマン、ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソンほか。2月28日公開。

あらすじ

一流レストランの料理人カール・キャスパー (ジョン・ファヴロー) はオーナー (ダスティン・ホフマン) と衝突。創造性に欠ける料理を作ることを拒み、店を辞めてしまう。マイアミに行ったカールは、とてもおいしいキューバサンドイッチと出会い、元妻 (ソフィア・ベルガラ) や友人 (ジョン・レグイザモ) 、息子 (エムジェイ・アンソニー) らとフードトラックでサンドイッチの移動販売を始めることにする。

via: シネマトゥデイ

予告編

おいしいサンドイッチを売ります!映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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