博士と彼女のセオリー (2014)【映画】天才のとなりで

      2015/04/18

生きる希望をつないだのは、無限の愛。

博士と彼女のセオリー

『博士と彼女のセオリー (The Theory of Everything) 』鑑賞。2014年イギリス。ジェームズ・マーシュ監督。123分。

車椅子の物理学者スティーヴン・ホーキング博士の半生を描いた人間ドラマ。将来を嘱望されながらも若くして難病ALS (筋萎縮性側索硬化症) を発症した彼が、妻ジェーンの献身的な支えを得て、一緒に数々の困難に立ち向かっていくさまをつづる。

via: シネマトゥデイ

て内容で、主演はエディ・レッドメインとフェリシティ・ジョーンズ。

感想!

美しい。そんなありきたりな表現がこれほどピッタリくる映画も珍しいのではないでしょうか。

映画としての美しさと、科学 (サイエンス) の美しさ、そしてなによりも人間の愛の美しさが見事に融合した素晴らしい映画でした。

天才のとなりにいたひと

車椅子の天才スティーヴン・ホーキング博士若き日の恋物語を描いた映画で、原題が「The Theory of Everything」と聞いたときには、実に巧いタイトルをつけたなあと膝を打ちました。

博士が追い求める宇宙のすべてを表す方程式、万物の理論 (Theory of Everything) と、愛や心といった物理学では語ることのできないものの”理論”とを掛けているのだなあと。

残念ながら邦題「博士と彼女のセオリー」は少々その意味合いが変わってしまっているとゆうか、ややチープに感じます。ありきたりなラブストーリーを連想させる印象なのが、ちょっと残念でした。

ただ、「博士と”彼女”」となっているのはなかなか好感が持てます。本作はスティーヴン・ホーキングという存命する天才の半生を描いた映画であると同時に、その彼とともに歩んだ妻ジェーンの物語でもあるからです (なにしろ原作はジェーンの自伝です) 。

いやむしろ、多くのひとの共感を呼ぶのは「普通のひと」である彼女のほうかもしれません。天才の胸の内は理解できないかもしれないけれど、天才の”すぐ隣”にいたひとの物語なら共感しやすいからです。

時間とは何か

本作のキーワードは「時間」です。博士の研究テーマでもあります。「時間」とは何か。

博士は21歳で難病ALS (筋萎縮性側索硬化症) を発症し、余命2年と宣告されます。しかし突如その進行が止まり、50年経った現在でも生き続けています。

なぜ進行が止まったのかは「神」のみぞ知るところですが、思うに2年というわずかな「時間」を提示されながら、「時間」について誰よりも真摯に考えつづけた博士への、神様からのご褒美だったのではないか。本作を観ると、そんなふうに思えてなりません。

あるいは博士が生き伸びたことで物理学に多大な貢献をもたらしたわけですから、この稀代の天才を何としても生かさなければならないという、何か「見えざる力」が働いたのかもしれません。なーんて言ったら「神」を嫌う博士に怒られてしまうかもしれませんが笑。

それでも映画の終盤では博士自らが「神」の存在を肯定 (というよりは許容笑?) するような描写も見受けられます。宇宙のはじまりでは「神はさいころを振らな」かったかもしれませんが、我々の心の内面 (それは物理学では説明できない領域です) には「神」が存在してもいいんだよ、というのが本作の大きなテーマなのかなと、そんな気がしました。

無限の彼方へ、枠組みを拡げる

恋愛や生活といった研究以外の側面に焦点を当てつつも、わりと物理学のはなしもしっかりと出てきて、それが本筋ともちゃんと繋がっているあたりがこの映画のすごさでもあります。ブラックホールや、量子論と相対論の融合といった博士の業績や研究テーマが、さりげない描写で分かるようになっているあたりはとても巧いです。

ホーキング放射のアイデアを思いつくシーンは本作のハイライトと言ってもいいほどに見事で、思わず鳥肌が立ちました。

博士はこのホーキング放射のアイデアで頭角を現した物理学者です。それはアインシュタインの相対性理論にケチをつけるものでした。難癖をつけることで、理論の枠組みを拡張した。物理学はそうやって発展してきました。

翻ってスティーヴン (敢えてファーストネームで) とジェーンの愛のカタチも、徐々にその「枠組み」を拡げていきます。人間の内面は物理学ほどシンプルではないですが、少なくとも映画の中における彼らの心のありようやその変遷は、物理学の進みかたとシンクロする部分があって面白いです。

はじめは若者の「恋」だったものが、難病というある種ブラックホール”より”も過酷な環境におかれることでテストされ、より深い「愛」へと変質していく。宇宙が膨張していくように、心が (ひいてはふたりの関係性が) 無限の彼方へと解き放たれるような晴れやかさがあります。

「別れ」という、どちらかというと哀しい結末を描いているわりに明るさを失わないのは、博士の陽気な性格もさることながら、この「枠組み」が拡がっていくような感覚のせいなのかなと、そんな気がしました。

ちなみにこれ原作は「Traveling to Infinity (無限への旅) 」で、なるほどこのタイトルも巧いなあ!と思いました。

人間は思ったよりも複雑だ

キャストのはなしもしておきましょう。博士を演じたエディ・レッドメインはアカデミー主演男優賞を受賞。

ALSが進行していくさまは見事 (しかも時系列に撮ったわけではないというんだから驚きます!) という他なく、受賞もナットクです。患ってからもさることながら、その前の元気だったころの青年期もなかなかよかったです。理系の若者特有の、ガサツで理屈っぽい雰囲気がよく表れていました笑。

妻ジェーンを演じたフェリシティ・ジョーンズ (こちらもアカデミー主演女優賞ノミネート) も、そんな博士をときに上回るほどの存在感を発揮していて素晴らしかったです。そして何よりもカワイイ笑!

本作はあまりセリフで説明せずに、微妙な表情や仕草で進んでいくとっても繊細な映画です。最近にしては珍しい。ちゃんと観ていないとちょっとわかりにくいと感じる向きもあるかもしれません。あからさまには説明してくれないので。

これ、関係者がほとんどまだ存命中だから配慮したとも考えられます (誰かが悪者のように見えてしまうとややこしいです) が、その微妙なさじ加減が人間の複雑さを見事に表していて惹き込まれました。

宇宙のすべてを表すひとつのシンプルな方程式を求める天才の内面には複雑な事情がある、というコントラストもよかったなあ。

さいごに

※少々ネタバレ含みます。

観る前は、ラブストーリー (苦手です) で難病もの (苦手です) で、しかもゴリゴリ理系なはなしってどーなんだろう (評価が辛くなりがちです笑) と正直心配していましたが、すべて杞憂におわりました笑。

ラスト近くのアメリカでの講演シーン、博士がフワッと立ち上がってペンを拾うファンタジー感が堪らなく素晴らしかったです。あーゆうのって難病ものの映画ではわりとベタですけど (たしかレイ・チャールズの『Ray』でも最後そんな演出だったような) 、全然あざとくなくて素直に感動しました。

「時間」をテーマにした天才の物語が逆再生しておわる、てのも映画としてあまりにニクい!これ以上ない最高のエンディングでした。

おわり。

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オマケ

ホーキング、宇宙を語る

劇中にも出てくる博士の著書『ホーキング、宇宙を語る』。その1ページ目にはこうあります。「ジェーンに捧げる__」。

これ、映画を観た帰りに図書館で借りて帰った (未読だったもんで) のですが、本を開いて思わず胸が熱くなりました。こーゆう謝辞って外国の作家はわりとお決まりのように付けますけど、本作を観たあとだとだいぶ違った味わいがあります。

2015/4/18追記: 読んで感想書きました。▷ ホーキング、宇宙を語る (スティーヴン・W・ホーキング)【読書】時間とは何か?

キップソーンとのエピソード

あるテーマについて、ホーキング博士がキップ・ソーン博士と賭けをしたというエピソードが出てきます (ブックメーカーの国イギリスに生まれただけあって、博士は賭けを好みます) 。

このあたりのエピソードはわりと有名なのかもしれませんが、ぼくは大栗博司先生の『重力とは何か』で読みました。ホーキング博士の業績もわかりやすく書かれているので、興味のあるかたは一読をオススメします。

てこれ、たしか『インターステラー』のときにも紹介したな笑。ちなみにその『インターステラー』の製作総指揮には、ホーキングの賭けの相手キップ・ソーンが名を連ねています。繋がった!

『博士と彼女のセオリー』作品情報

あらすじ

天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング (エディ・レッドメイン) はケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン (フェリシティ・ジョーンズ) と出会い恋に落ちる。その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。

via: シネマトゥデイ

予告編

エディ・レッドメインが第87回アカデミー賞主演男優賞を受賞!映画『博士と彼女のセオリー』日本版予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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