ホーキング、宇宙を語る (スティーヴン・W・ホーキング)【読書】時間とは何か?

      2015/04/12

「ホーキング本」初体験!

ホーキング宇宙を語る

ホーキング博士の半生を描いた映画『博士と彼女のセオリー』が良かったので、その著書も読んでみたくなりました。映画にも登場する『ホーキング、宇宙を語る』です。

本書の構成

この宇宙はどうやって生まれ、どんな構造をもっているのか?この人類の根源的な問いに正面から挑んだのが「アインシュタインの再来」ホーキングである。難病と闘い、不自由な生活を送りながら遙かな時空へと思念をはせる、現代神話の語り部としての「車椅子の天才」。限りない宇宙の神秘と、それさえ解き明かす人間理性の営為に全世界の読者が驚嘆した本書は、今や宇宙について語る人間すべてにとって必読の一冊である。

via: Amazon内容紹介 (「BOOK」データベースより)

てな内容で、目次はざっと以下の通りです。

目次

  • 謝辞__まえがきにかえて
  • 1 私たちの宇宙像
  • 2 空間と時間
  • 3 膨張する宇宙
  • 4 不確定性原理
  • 5 素粒子と自然界の力
  • 6 ブラックホール
  • 7 ブラックホールはそれほど黒くない
  • 8 宇宙の起源と運命
  • 9 時間の矢
  • 10 物理学の統合
  • 11 結論___人間の理性の勝利

本書の流れ

まずアリストテレスの時代から19世紀末までの世界観 (宇宙像) を概観したのち、相対性理論と膨張宇宙について触れます。

そこから導かれるギモンである「特異点」について説明し (ホーキングはロジャー・ペンローズとの共同研究である「特異点定理」によって世に知られるようになりました) 、この特異点という難題を解決するために、相対論と量子力学の統合という道へと進んでいきます。

その準備として量子論、さらには素粒子物理学を概観した後、ブラックホールの物理学に触れます。ここでは有名な「ホーキング放射」も登場します。

そして後半では、物理学の統合 (大統一理論) や人間原理、さらには超弦理論といった、今でも最先端の話題にまで踏み込んでいます。

感想!

わりと難解

本書は発売当時、世界で1,000万部以上、日本国内でも100万部以上売れて大ベストセラーになったそうです。本書をきっかけに、宇宙論ブームも巻き起こったんだとか。現役研究者の手による科学啓蒙書の走り、なのかもしれません。

だからわりと万人にも読みやすいのかと思っていたのですが……。数式こそ1つしか出てこないものの ( \( E=mc^{2} \) ) 、なかなかに骨っぽい内容で驚きました。かなりまともに物理してる……。当たり前だけど。多少なりとも物理学に慣れていないと、読みこなすのに少々難儀するかもしれません。

“妄想”ではなく”研究”

相対論や量子論の一般的な啓蒙書とゆうと、「双子のパラドックス」や「シュレディンガーの猫」、あるいは「多世界解釈」のような、SFの題材になりそうな話題ばかりをウロウロしてみたり、あるいは導かれる結論のみにさらっと触れているだけ、みたいなものが多いです。

そーゆう本を読むと、何だかごまかされたような、むずがゆい気持ちにさせられます。あるいは「宇宙論て何だかムズカシイなあ!科学って、結局のところ全部科学者の妄想なんじゃないの?」と、そんな感想を抱いてしまうひともいるかもしれません。

けれども本書は、ごまかしがほとんどありません。結論だけでなく、そこへ至る思考のアプローチがわりと丁寧に書かれているので、中身はよくわからなくてもナットク感が得られるのです。”妄想”ではなく、道筋立った”研究”として受け取ることができます。

そう感じるのは、ホーキングの研究者としての歩みに沿ったカタチで本書が展開されているからかもしれません。そしてそれは、20世紀の物理学の発展ともピッタリ重なるのです。

時間とは何か?

原題 (A Brief History of Time. 映画では「時間小史」と訳していました) にもあるように、「時間とは何か?」という問いが本書を貫く大きなテーマです。

そして、われわれ人類が宇宙像をどのように捉えてきたのかという変遷を通じて、「”なぜ”この宇宙は生まれたのか?」「”なぜ”我々人間が存在するのか?」といった、科学の先にある問いにまで踏み込んでいます。

神に関する言及や、ホーキングらしいユーモアも随所にみられて、難解ながらもグイグイ読ませます。

特に「虚時間」のはなしはぼく自身今まであまり知らなかったってのもあって、正直「何じゃそりゃ笑!?」と思っていたのですが、本書の説明はわりと説得力があって (少なくとも読んでいるときは) わかったような気になれました (ひとに説明できるほどには理解できてないんですが笑) 。

研究生活の半生記

ぼくは前述の映画を観た直後に本書を読みました。映画はホーキング夫妻の”私生活”が中心でしたが、本書はホーキングの”研究生活”の半生記として読むこともできます。

映画で描かれていたあのころは、こんな研究をしてたのかあ、などなど、いろいろ対比しながら読める面白さがありました。あと映画ではよくわからなかった物理学上の話題を、より深く理解できたのもよかったです。

(ちなみに、映画の原作は (当時の) 妻ジェーン・ワイルドなのですが、本書の1ページ目にはその「ジェーンに捧げる」と書かれていて、本を開いた瞬間思わず胸が熱くなりました。)

日本人が出てこない!

読んでいてちょっと残念だなあと思ったところが一点あります。それは、日本人がひとりも登場しないってことです。

インフレーションの佐藤勝彦先生や、あるいは自発的対称性の破れの南部陽一郎先生なんかは言及があってもよさそうなのに……。欧米での扱いってこんなもんなのかなあ。

そいや、外国人 (の研究者) の手による宇宙論の本て、ほとんどはじめて読んだ気がします。日本人が書いた本は (いずれも啓蒙書ですが) わりと読みましたし、だからこそ本書もまずまずスラスラと読めた、てのもあります。

日本もこの分野にはかなり強い、とゆーかあるいは本書が、その火付け役だったりして。若いころに本書を読んで、宇宙論の世界に興味を持った研究者もたくさんいそうな気がします。そーゆうひとたちが本を書くようになって、それをぼくが今読んでいる、てことなのかもしれません。

だったらスゴイな、膨張した宇宙が再び収縮して、元に戻ってきた感覚とも重な……らないか笑。

さいごに

ホーキング博士の著作を読むのは、本書がはじめてでした。

20世紀以降の難解な物理学を、数式を使わずに平易な文章で、それもここまでコンパクトにまとめられる (文庫本で300ページにも満たない!) ってだけでも、やはりホーキングは天才なのだなあと唸りっぱなしでした。

宇宙論啓蒙書の原典にして原点、特異点のような一冊。

おわり。

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オマケ

本書の内容に近い啓蒙書を以下にいくつか挙げておきます。本書よりはだいぶ読みやすいかと思います。

大栗博司先生や村山斉先生、佐藤勝彦先生の著書は、どれも読みやすくて面白いです。ぼくはここに挙げた意外にも何冊か読んでいます。

あと長くてもいいならサイモン・シン『宇宙創成』もオススメです。人類が辿った宇宙像の歴史がよくわかります。

本書の情報

『ホーキング、宇宙を語る__ビッグバンからブラックホールまで (A Brief History of Time; From The Big Bang to Black Holes) 』。1995年ハヤカワ文庫NF刊 (1989年早川書房刊 / 1988年原著初出) 。林一訳。268ページ。

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