バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014)【映画】JAZZだね!

      2015/04/20

全てを手に入れ、全てを手放した。もういちど輝くために、いったい何をすればいいのか__?

バードマン

『バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) 』鑑賞。

『バベル』などのアレハンドロ・G・イニャリトゥが監督を務め、落ち目の俳優が現実と幻想のはざまで追い込まれるさまを描いたブラックコメディー。人気の落ちた俳優が、ブロードウェイの舞台で復活しようとする中で、不運と精神的なダメージを重ねていく姿を映す。ヒーロー映画の元主演俳優役に『バットマン』シリーズなどのマイケル・キートンが扮するほか、エドワード・ノートンやエマ・ストーン、ナオミ・ワッツらが共演。不条理なストーリーと独特の世界観、まるでワンカットで撮影されたかのようなカメラワークにも注目。

via: シネマトゥデイ

てな内容で、アカデミー作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門受賞!今年最高の一本、だそうです。その触れ込みに違わずスゴイ映画でした!

感想!

既存の枠にハマらない

映画に限らず、既存の枠にハマらない作品 (業績) には、素晴らしいものが多いです。かつてぼくが身をおいていた科学研究の世界でも、新たな研究分野を創出するような論文 (研究) は、価値が高いとされていました。

で、本作もそーゆう、ジャンル分けが難しい映画です。ブラックコメディでありファンタジーであり、人間 (and 家族) ドラマでもあり、ヒーローもの、内幕モノで……。いろんな要素がたくさんつまっていて、どんな映画?と聞かれてもちょっと説明に困ってしまいます。一言で言い表せない。

本作がきっかけとなって、新しいジャンルが生まれる可能性がある。

だからこそのアカデミー作品賞なのかなとも思います。

敢えてジャンルを当てはめるとすると、「ジャズ」かな笑?

ジャズなひと、ジャズな映画

毎週楽しみに観ているTV番組「ヨルタモリ」で、タモリさん、じゃなかった岩手のジャズ喫茶マスター吉原さんが、こんなことを言っていました。

「ジャズという音楽があるんじゃなくて、ただ”ジャズなひと”がいる」

これに則れば、本作はまさに”ジャズな映画”ではないでしょうか。ジャズドラムのテンポに合わせて、リズムよく進んでいくさまは、映画自体がジャズそのもの!

主人公のリーガン (マイケル・キートン) でさえ、ブヨブヨのパンツ一丁でもリズムはジャズなのです。サイコーでしょ笑。

内面的でわりと暗くて、ときに息が詰まりそうなほどの鬱屈を抱えているのに、観ていてどこか心地いい。「観る」というよりは「感じる」といったほうが近い感覚かもしれません。劇中にもバーのシーンがたびたび登場しますが、ゆっくりグラスでも傾けながら、観るともなく観る。そんな雰囲気がハマるかもしれません。

「内」と「外」を行ったり来たり

本作は全編ほぼワンカットの長回し (のように見える) という驚異的な手法で撮られています。

長回し、大好きです。ヒッチコックの『ロープ』、TVドラマの『ER 緊急救命室』、一連の三谷幸喜作品 (ワンシーンワンカットの『THE有頂天ホテル』、ホントにワンカットの『short cut』と『大空港2013』) 、アルフォンソ・キュアロン & エマニュエル・ルベツキ (本作でも撮影監督!) の『トゥモロー・ワールド』と『ゼロ・グラビティ』などなど。長回しってだけで感動してしまいます。

本作は舞台 (演劇) 上演の裏側をワンカットで描いているので、まるで舞台のようにも思えてしまいます。が、そこはやっぱりちゃんと「映画」で、映画じゃないとできないような仕掛けも満載です (余談ですが、アメリカにおける「ハリウッド」と「ブロードウェイ」の微妙な空気感の違い、みたいなものも垣間見えて面白いです) 。

技術的な困難さはよくわかりませんが、いろんな人物にくっついたり離れたり、ワンカットなのに実質4日間くらいを描いていたりと (実際に観ないと意味が分からないでしょう笑) 、流れるように進んでいきます。

会話劇なので一見退屈ですが (退屈な映画、大好きです!) 、まるで退屈しないという、ちょっと不思議な感覚があります。被せられるドラムロールが、煽る煽る。テンションが激しく揺さぶられて、ちょっと疲れるほどでした。

特定の人物 (主にリーガン) を追いかけてあっちこっちつれ回されるうちに (実際にはかなり狭い範囲ですが) 、人物の内面に入り込んでいくような錯覚にも陥ります。一方で「観客」としてどこか突き放して「観ている」という枠組みも捨て切れず (劇中劇があるからかな?) 、スクリーンの「内」と「外」を行ったり来たりしているような感覚になるのは、驚きを通り越してちょっと怖かったです。

特に劇中劇のクライマックスに現れる観客たちのスタンディングオベーションは、鏡を見ているようでゾッとしました。あのシーンだけは完全にホラーだったな笑。

映画の観客だと思っていたら登場人物に感情移入していたり、その映画の中では劇が演じられていて、劇中劇の登場人物でもあり、劇を観ている観客でもあり……。自分が今どこにいるのか、よくわからなくなります。

マネのできないコンテンツ

本作は、アメコミ映画ばかり作っているハリウッドの潮流 (マンガやアニメの焼き直しばかり作っている、日本の映画業界大手も同じです) や、あるいはSNS上の拡散にしか興味がない映画ファンや批評家に対する痛烈な「毒」も含んでいます。

この種の批判や、作り手と観客との乖離、みたいなはなしは『シェフ』を観たときにも感じました。

「冴えないおっさんの退屈な会話よりも、中身のないハデな映像が観たいんだろ?」てフレーズには、作り手側の諦めにも似た本音が垣間見えます。まあぼく自身はわりとこの映画みたいな「退屈な会話」が観たいクチなのですけど……。

今は何でもかんでも消費されてしまう時代です。情報はあっという間に流れていき、どんどん忘れられていく。

けど映画や他の芸術 (舞台でも文芸でも何でも) が描いているものって、実は昔からあまり変わってなかったりもします。30年以上前に書かれた、半ば古典と言ってもいいようなレイモンド・カーヴァーの作品が、本作の劇中劇として用いられていることもその事実を如実に物語っています。

そしてコンテンツが優れていれば、消費されずに残ります。全編ワンカット (のように見せる) なんて、マネしようと思ってもそうそうできるものではありません。あるいは、『6才のボクが、大人になるまで。』の、12年かけて撮影、なんてのもマネできない。

これらの映画が同じ年に出てきたとゆうのは、何やら映画の新しい潮流が生まれつつあるのかな、なんてふうにも思ったりします。

普遍的なものを、自分たちにしかできない手法で描く。本作は一見「退屈」に見える古典的なテーマでも、こんなに面白い映画を作れるんだぜ!という製作サイドの挑戦だったのかな、という気もします。

うん、何が言いかったんだかわからなくなってきたな笑。

さいごに

本作はそこそこ映画を観てるひとじゃないと楽しめないかなと、観終わった直後には思っていました。「アカデミー賞!」の看板と「ヒーローもの (?) 」に騙されてフラッと観にいっちゃうと、わりとポカンてなるのかなと。

でもこの文章を書いていて、やっぱいろんなひとに観てほしい!て考えに変わりました。

よくわかんないけど面白い!何だかわかんないけどスゴイ!てことは往々にしてあるわけで、映画って本来はそーゆう、だれにでも門戸が開かれた「娯楽」なんだよなあと。畏まってみる「芸術」なんかでは決してないし、それが映画の善さなんではないかと。

無知がもたらす、てつまりそーゆうことなんじゃないかなあ。

あとワンカットって手法は映画館で観てこそな気もします。おウチでDVDで観る、つまりは好きなときに中断できちゃうって状況だと、本作の魅力は半減してしまうでしょう。

それに映画館は、いっとき情報を遮断するにはうってつけの「場」です。映画を観てる間くらいはスマホの電源を切って、その世界観にどっぷり浸ってみる。なーんてもたまには悪くない。そう思わせてくれるほどの没入感が素晴らしい!映画の可能性を拡張する、稀有な傑作!

おわり。

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オマケ

愛について語るときに我々の語ること

劇中劇のレイモンド・カーヴァー『愛について語るときに我々の語ること』。観終わったあとに知ったのですが、これ翻訳は村上春樹さんなのですね。

フワッとした浮遊感は、どこか伊坂幸太郎さんの小説みたいだなとちょっと思ったんですが、その伊坂さんが明らかに影響を受けていると思われる村上春樹さん (伊坂さん本人は否定してるらしいけど) がレイモンド・カーヴァーの翻訳をしていて……。何だかちょっと繋がった感じ (こじつけ笑?) がしました。いずれ読んでみよー。

インクレディブル・ハルク

映画の冒頭、ケガ (笑) をした役者の代役を探す件で、名前を挙げる俳優がことごとくヒーロー映画の撮影中という笑えないジョークが出てきます。

で、ようやく見つかるのがエドワード・ノートン。てハルクやってたじゃん笑!(観てないけど。『アベンジャーズ』ではひと変わってるみたいだけど)

しかもリハの感想をスタッフに聞いたら”incredible”て笑!これ絶対ネタだよね笑?!みたいな小ネタが至るところ満載で、観るたびにハッケンがありそうです。

作品情報

『バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) (Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))』。2014年アメリカ。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督。120分。

主演はマイケル・キートン。共演にザック・ガリフィアナキス、エドワード・ノートン、アンドレア・ライズボロー、エイミー・ライアン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ、リンゼイ・ダンカンほか。

あらすじ

かつてヒーロー映画『バードマン』で一世を風靡した俳優リーガン・トムソン (マイケル・キートン) は、落ちぶれた今、自分が脚色を手掛けた舞台『愛について語るときに我々の語ること』に再起を懸けていた。しかし、降板した俳優の代役としてやって来たマイク・シャイナー (エドワード・ノートン) の才能がリーガンを追い込む。さらに娘サム (エマ・ストーン) との不仲に苦しみ、リーガンは舞台の役柄に自分自身を投影し始め……。

via: シネマトゥデイ

予告編

第87回アカデミー賞4冠!映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』新予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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