料理と科学のおいしい出会い (石川伸一)【読書】科学が創造する「美味しい」

      2015/05/14

おいしい料理に必要なのは、料理人のウデだけじゃない!

料理と科学のおいしい出会い 石川伸一

石川伸一著『料理と科学のおいしい出会い 分子調理が食の常識を変える』読了。2014年DOJIN選書 (化学同人) 刊。220ページ。

近年、物理学、化学、生物学、工学の知識を調理のプロセスに取り込み、これまでにない、新しい料理を創造する「分子調理」が注目されている。本書では、その世界的な広がりの様子を眺め、料理と科学の幸運な出会いの場面を描く。おいしさを感じる人間の能力、おいしい料理を構成する成分、おいしい料理をつくる器具といった、料理と科学の親密な関係をひもといたうえで、現実の料理を超えた「超料理」も考える。少しでもおいしい料理を実現するための、分子調理の世界へようこそ!

via: Amazon内容紹介 (「BOOK」データベースより)

てな内容で、目次はざっと以下の通りです。

目次

  • 第1章 「料理と科学の出会い」の歴史
  • 第2章 「料理をおいしく感じる」の科学
  • 第3章 「おいしい料理」の科学
  • 第4章 「おいしく料理をつくる」の科学
  • 第5章 「おいしすぎる料理」の科学

感想!

たまに料理をすると、科学実験とよく似ているなあ、なんて思うことがあるのですが、最近では科学の手法がプロの料理の現場にも持ち込まれているのだそうです。

「分子ガストロノミー」、あるいは「分子調理」と言って、液体窒素や遠心分離器などの科学実験で使う器具やプロセスを料理に応用する試みです。科学の手法を使ってこれまでにはなかった「味」を創出しているのだとか。料理も進化しているのですね。

一方で科学的な知識を使って、一流料理人のプロセスがなぜ効果的なのかを検証する、といったアプローチも見られます。

前者は料理人が科学に、後者は科学者が料理にそれぞれ歩み寄ることで、新しい「おいしい」を生み出そうとしています。本書はそんな料理と科学の「おいしい」出会いを、その歴史や基本的な事項を含めてやさしく紹介しています。

これまで「食品科学」と呼ばれていたこの分野は、主に料理の成分を研究する学問でした。どの食材にどのような物質・分子がどれくらい入っているのかを明らかにする、というアプローチは分類学に近い印象があります。何とも静かな学問ですね。

一方で「分子ガストロノミー」は、調理による「変化」も含めて研究するという、もう一歩踏み込んだアプローチです。研究対象が静的なものから、より動的 (ダイナミック) な領域へと拡張されているのも大きな特徴といえます。

そんな「分子ガストロノミー」の成り立ちを、歴史的な経緯 (といっても高々10年ほどですが。そう考えるとかなり若い分野ですね) から解説しているのが第1章で、個人的にはこの章がもっともエキサイティングでした。

「おいしい」という主観的なものを目指す料理と、客観性を重視する科学というプロセスが、折り合いをつけるまでの紆余曲折が面白いです。目指しているところは同じなのに、料理人と科学者の間では (当たり前ですが) 物事の捉えかたが大きく異なるのです。

2章以降は分子調理学の基本的な事項が丁寧に解説されていきます。わりとマジメに調理科学の基礎を説明していて、1章から感じる新しさと比べてやや硬いですが、「おいしい」に関するメカニズムが平易な文章でよくわかるようになっています。

「おいしい」を感じる味覚 (を含めた人間の感覚器官) 、「おいしい」料理に欠かせない成分、調理器具や調理法といった料理の基礎が、どのように「おいしい」と繋がっているのかが、ひとつずつ解き明かされていきます。

ただし、納得感はやや薄いように感じました。これは本書に限らず化学や生物学の啓蒙書全般に言えることなのですが、「コレコレこんな分子がありまして、ソレのコノ部分が効いてるんですよ!」と言われても、読んでるほうは「はあ……」となるだけで、「なるほど!」とはなかなか思えないのです。

数学や物理学 (の良書) は、わりとそのあたり説得力を保ったまま読み進められるのですが、化学や生物学はやや弱いです。このあたり何か巧い方法はないものかと、よく思います。と以上は余談です。

本書のはなしに戻ると、納得感は薄いと言いながらもやはりところどころ読ませる内容で、最後まで飽きずに読み進めることができました。

アロマとフレーバーの違い (鼻から吸い込む香りが「アロマ」、喉から鼻に抜ける香りが「フレーバー」) や、和包丁は片刃で洋包丁や中華包丁は両刃、といった基本的な知識には純粋になるほどなあと思わされました。

あるいは無人島にひとつだけ調理器具を持っていくとしたら、ダントツで包丁を選ぶ、とゆうのを読んで、やぱ包丁はホントに料理の基本なんだな、てことを再認識しました。

そいや無人島ではないですが、童話『山賊のむすめローニャ』でも、洞窟生活ではナイフが最重要!て件が出てきましたね。そんなことも思い出しました。

あとあと、最近流行りの「熟成肉」について詳しく知れたのもよかったです。

ぼくは科学研究の場に身をおいていたせいか、お料理でも操作の「意味」がイチイチ気になってしまいます。「なぜ」そうするのかがわからないと気になって仕方がない、てほどではないですが (笑) 、意味が分からないと単純に手順が覚えられなかったりします。

本書を読むと、料理とその先にある「おいしい」までも含めたメカニズムがよくわかります。意味が分かると、お料理をするのも楽しくなってきます。

科学の方法論で、より「おいしい」を実現するための一冊。

おわり。

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オマケ

エル・ブリの秘密

「分子ガストロノミー」を実践するレストランとして登場する「エル・ブリ」は、映画にもなっているようです。本書の中でも紹介されている『エル・ブリの秘密』。映像で観ると、より一層スゴさが伝わるのではないかと思っています。いずれ観てみたい!

iTunes ▷ エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン(字幕版)

今回紹介した『料理と科学のおいしい出会い』はこちら。

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