龍三と七人の子分たち (2015)【映画】ヤクザが演じる「笑い」の手本

      2015/05/08

金無し、先無し、怖いモノ無し!俺たちに明日なんかいらない!!

龍三と七人の子分たち

『龍三と七人の子分たち』の試写会に行ってきました。

数多くの個性的な作品を世に送り出してきた北野武監督が、ユニークかつ異色の設定で放つコメディータッチのドラマ。オレオレ詐欺の被害者となって憤慨する元ヤクザの組長が子分を引き連れ、孫のような若さの首謀者たちを成敗していく。藤竜也、近藤正臣、中尾彬らベテランや実力派俳優たちが世直しに息巻く血気盛んなヤクザを快演する。高齢化社会や詐欺犯罪といった社会問題を巧みに盛り込んだストーリーに加え、バスの暴走などハードなアクションも見もの。

via: シネマトゥデイ

てな内容の北野武監督最新作です。ぼくは「痛い」のがニガテなので、北野映画とはあまり相性がよくないんですが、本作はそんなぼくでも「観られそう」、つーことで行ってまいりました。

予想通りいつものバイオレンスさは皆無!R指定もなく、老若男女がアタマ空っぽにして楽しめるコメディ映画でした!

感想!

「笑い」の教科書

大げさでも何でもなく、10秒に1回くらいの割合で「笑い」が仕込まれている映画でした。それもわりと基本的な「笑い」で、誰でも楽しめるほどにわかりやすくできています。

分かりやすすぎて返って先が読めてしまうようなところもありましたが、会場はどっかんどっかんウケていたので、まあこれで「正解」なのでしょう。当たり前ですが映画って、お客さんの反応を見て変えるってことができないので、笑いを取るのはタイヘンな作業だなと改めて思いました。コメディ映画って怖いなあ。

考えてみれば「万人が笑える」ってのも、かなり難しいことです。例えば内輪ネタ (家族のバカ話しかり、上司のモノマネしかり) は近しいひとを笑わせるにはもってこいですが、見ず知らずのひとを笑わせようと思ったら何かしらの「変換」が必要になるわけです。

そのさじ加減が難しい。そのあたりがお笑いのプロとアマの差なんでしょうが、最近ではプロも内輪ネタっぽいことをやるひとたちが増えています。

お笑い芸人のネタを観る機会はめっきり減ってしまいましたが、たまに観るとまるで笑えないことが多いです。面白い面白くない以前に、何を言ってる (やってる) んだかわからないのです。けど若いお客さんにはウケている。あれも特定の年齢層 (若者) へ向けた「内輪ネタ」の一種なのだなと思うのです。ターゲットを絞るのは大切ですが、その分、流行り廃りのサイクルは早いように感じます。

ましてや映画って、わりと長く残るものなので、ある程度はどの時代の誰が観ても笑えるように作らないといけない (ついでにゆうと、最近は同時代的すぎる映画ばっかりなわけですが) 。

本作はそんなさじ加減が見事なまでに絶妙で、さすがお笑いで天下を取ったたけしさんだなあと、至るところ唸らされました。フリはさり気なくてオチは丁寧。誰が観ても「意味」がわかる笑いです。何か型のような美しさすら感じます。まさに「芸」ですね。「笑い」の教科書みたいな映画です。

そんなコメディのお手本みたいな映画を、ヤクザとゆう「手本にしちゃいけない代表」みたいなキャラクタに演じさせるあたりの感覚もものすごくシュール。この構図が一番面白かったりもします笑。

マジメなひとほど面白い

万人が楽しめる「笑い」の基本て何だろ?て考えたときに、パッと思いつくのが「下ネタ」「マジメ」「ズレと勘違い」てあたりでしょうか。この映画、全部入ってる笑。

下ネタはまあいいとして (本作ではオナラです笑) 、他のふたつについてもう少し考えてみます。

まず、マジメなひとほど面白い、てのはコメディ映画の鉄則です。劇中のキャラクタが、こちらを笑せようとした瞬間面白くなくなる、みたいなところさえあります。

本作のキャラクタたちはみんな大マジメ。ふざけているひとはひとりもいません。マジメに右往左往する (のは主に周囲のひとたちだけど笑) さまが、端から観てるとものすごく可笑しいのです。

それと、勘違いやズレから生まれる笑い、とゆう要素もたくさん入っています。むしろメインといってもいいくらい。

昔のヤクザが、今の時代の流れにまったく乗れていないとゆう構図は、極端に言ってタイムスリップ系のコメディのような趣きさえあります。例えば戦国武将が現代に紛れ込んじゃうことで繰り広げられる面白さ、みたいな感覚と近いのです。

そのせいか本作は、どこかファンタジックにさえ感じてしまいます。いや、ノスタルジーと言ったほうがいいのかな。今はもうほとんどなくなってしまった「任侠映画」というジャンルを懐かしむようなところもありますからね。ぼくはあまり観たことないんですが、「任侠映画」に詳しいと、より楽しめるのかもしれません。

ドタバタ喜劇のようだけど、関係性で笑わせるような要素も多くて、しかも任侠映画のパロディ要素まで入ってるんだから独特だなあと思います。なおかつ、死体で遊ぶなんてゆうどぎついブラックジョークもぶっ込まれていて、まさに何でもあり。んでも下品になりすぎてないのが素晴らしいです。

さいごに / 子供のころの思い出話

子供のころ、お笑い番組をよく観ました。「ドリフ大爆笑」とか、志村けんさんのコント番組とか、たけしさんの「ひょうきん族」も好きだったなあ。これらの番組ってたぶん「大人が子供に見せたくないTV番組」の代表みたいな存在で、ぼくがチャンネルを合わせようとすると、親たちにイヤな顔をされたものです (昔はTVが一家に一台しかなかったのです) 。

でも渋々観はじめると、先に笑い出すのは決まって大人たちでした。観たいと思っていなくても、ついつい笑ってしまう。そこには何か普遍的な、万人が楽しめる「笑い」の構造があったのかなと、今にして思います。

家族みんなが同じものを観て、みんなで笑う。そーゆう家族揃って観られるお笑い番組って、今はもうなくなってしまいましたね。

本作はそんなかつての「お笑い番組全盛時代」のど真ん中にいた、たけしさんだからこそ撮れたコメディ映画なんだなあ。と、ぼくよりも年配のかたが多かった劇場で、彼らの笑い声を聞いていたら、そんなふうに思ったりしました。

とゆうわけで、オレオレ詐欺なんかはわりと現代的な「流行」を取り込んでるようでもありますが、印象としては時代が進んでも楽しめる「笑い」なんじゃないかなと思っています。10年後くらいにまた観てみたいです。

「笑い」ってのはこーやって取るんバカヤロー!とゆう監督の声が聞こえてきそうな一本。

おわり。

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オマケ

監督のインタビュー記事

クライマックスのバスのシーンが一番笑えたのですが、そのシーンを思いついたのが本作を作るきっかけだったみたいです。

参考 ▷ 北野武監督、ジイさんを撮る 「年寄りよ、不良になれ」:朝日新聞デジタル

そこから逆算してストーリーを練ったんだとか。巨匠の創作過程の一端が、ほんのちょっとだけ知れたのも面白かったです。

老人のコメディ

老人たちががむばるコメディで思い出すのは、まず三谷幸喜監督の『みんなのいえ』。こちらは大工さんのおはなしなので、本作よりもずっと和やかです。老人たちの頑固ぶりは似たり寄ったりだけど笑。

iTunesで観る。▷ みんなのいえ

最近だと『100歳の華麗なる冒険』もかなり好きでした。老人の物語って、何か惹かれるんですよね。

感想 ▷ 100歳の華麗なる冒険 (2013)【映画】

算数の問題

タイトルにつられて7人組かと思ってたんですが、よくよく考えたら龍三”と”七人なので1+7で8人でした。何か多くねーかと思いながら観てたんですが、だいぶ後半になってから気づきました。算数嫌い笑。

あとやっぱりタイトルから黒澤明監督『七人の侍』を思い出すんですが、エンタメ一直線な製作意図はどっちかつーと『隠し砦の三悪人』に近よなあなんてこともちょっと思いました。

作品情報

『龍三と七人の子分たち』。2015年オフィス北野ほか。北野武監督・脚本・編集。111分。

主演は藤竜也。共演に近藤正臣、中尾彬、品川徹、小野寺昭、安田顕、勝村政信、萬田久子、ビートたけしほか。4月25日公開。

あらすじ

組長を引退したものの、ヤクザの性分が消えないために普通の老人として生きていけない龍三 (藤竜也) 。そんな毎日にいら立ちを募らせる中、彼はオレオレ詐欺にだまされてしまう。人々をだます若い連中を許すわけにいかないと、龍三はかつての子分たちを召集して世直しをすることに。年齢に関係なくまだまだいけるとオレオレ詐欺のグループを倒しに向かう彼らだが、行く先々でとんでもない騒動を引き起こしていく。

via: シネマトゥデイ

予告編

映画『龍三と七人の子分たち』予告編 – YouTube

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