グッド・ストライプス (2015)【映画】共感を斥ける平行線

      2015/05/02

わたしの人生には、たいしたドラマなんて起こらないはずだった。

グッドストライプス

『グッド・ストライプス』の試写会に行ってきました。

『コスプレイヤー』『マイムマイム』などで注目を浴びた俊英、岨手由貴子によるラブストーリー。交際4年を経て倦怠期に陥っていたカップルが、妊娠を機に結婚へと進んでいく姿を追い掛ける。『森崎書店の日々』などの菊池亜希子とテレビドラマ「花子とアン」などの中島歩が主人公の男女を好演。その脇を『鈴木先生』シリーズなどの臼田あさ美、『火垂』などの中村優子といった実力派が脇を固める。結婚に関する男女の価値観の差異などをリアルに見つめた視点に注目。

via: シネマトゥデイ

てな内容で、5月30日公開。

感想!

ぼく (わたし) の一冊目

ひとは誰しも、一冊は本を書ける、などとよく言われます。自分の辿ってきた人生を書き綴れば、それがそのまま一本の物語になるからです。

他人の人生を「体験」することが小説 (をはじめとする物語。映画もまた然り) の醍醐味なわけですから、どれほど平凡に思える日常でも立派な物語となりえます。自分では気づいていなくても、他人から見たら驚きに満ちあふれている、かもしれません。

本作はそんな、ごくごく平凡な男女の日常を切り取った、ぼく (わたし) の「一冊目」のような映画です。

情景を愉しむ

最近ではこの手の、何も起こらない日常的情景を描いた映画って、めっきり減ってしまったように思います。古くは小津 (て、あんまり観たことないけど笑) なんかにも通じる、邦画の得意分野だと思っているのですが……。

ぼくはこのブログでよく「良い退屈」という表現をしていますが、映画ってそもそも「退屈」なものだと思っています。究極的にはストーリーなんてなくったっていいんです。

そもそも「物語」のパターンなんてそれほど多くなくて、古くからあるものの置き換え・焼き直しにすぎません。それなのに展開の妙 (や特異なキャラクタ) ばかりを重視するせいで、ストーリーが「邪魔」しちゃってる映画が多いように感じます。

それよりは、何気ない「情景」を愉しみたい。何も語ってくれなくてもいいんです。映画はもっと「退屈」でいい。本作はそんな「良い退屈」が流れている、とってもステキな映画です。

「面白い」とか「巧い」とかではなく、「好き」。そんな感想がしっくりくる作品です (ちなみに最近だと、『フランシス・ハ』や『6才のボクが、大人になるまで。』なんかも、わりと近い感覚でした) 。

ストーリーが邪魔をしない

ストーリーが邪魔、てことについてもう少し書きます。

何かを語ろうとして「物語」の風呂敷を広げていくと、普通の感覚では最後、畳まないといけなくなります。それもできるだけキレイに。あるいはわざとちょっとずらしたり、てのが効果的な場合もあります。

いずれにしても、ある程度は畳まないといけない。それが邪魔だと感じるときがあるのです。たまには広げっぱなしでもよくねーか。

そもそも人生では、物事がキレイに解決することなんてほとんどありません。広げっぱなしだろうが何だろうが、人生は続いていきます。

現実がそうだから、フィクションの中だけではキレイに収まってほしい、という考え方もありますけど、たまには本当の人生のように、モヤモヤを残したまま続いていく、みたいなおはなしがあってもいいんじゃないかと思うのです。「リアル」ってのはつまりそーゆうことなんじゃないかと (リアルな話、みんな好きでしょ?巷にあふれる、実話実話実話) 。

本作では、特に何かが明確なカタチで解決する、というシーンがひとつもありません。まあそもそも何も起こってない、とゆう言い方もできますが笑。

友人とケンカして、何となくで仲直りしたりとか、元カノと浮気するけど、何事もなく終わったり、あるいは親との距離が近づいたり離れたり。実際の人生ってそうだよなあ、と至るところしみじみできるのです。

大切なことは言わない

うまいなあと思ったのは、セリフに頼らないところ。ひとって肝腎なときほど、何も言わないんですよね。気恥ずかしかったり、言葉にすると安っぽくなったり、理由はさまざまですが、とにかく言葉には出さない。本音は言わない。

本作はラブストーリーですが、「好き」だとか「愛してる」だとか、そーゆう安っぽいセリフは一言も吐きません。ついでにゆうと、キスシーンもない (浮気のセックスシーンはあるけど笑) 。

親にも大業なことを言いません。文字通りの意味で、芝居がかっていない。素晴らしいを通り越して、むしろ新鮮に感じてしまうほどです。

我々は日頃からTVや映画を観すぎてるせいで、少々毒されているのかもしれません。ちゃんと言葉にすることがカッコイイしエライと思ってしまいがちですが、近しい間柄なら言わなくたってちゃんと伝わります。

むしろ何でもかんでも言葉にしようとするせいで、そーゆう真の意味で「空気を読む」感覚が失われているのかもしれません。だいたい、気持ち悪いでしょう、好きだとか愛してるだとかしょっちゅう言い合ってるカップルって笑。

本作の中で描かれる時間は、たかだか一年ほどですが、その後もふたりの人生はずっと続いていく、という印象を残して映画は終わります。日常的な情景をただただ切り取ってきて、ときに観客をぽっと突き放す。これが絶妙な余韻となって残るのです。なかなか巧みなストーリーテリングだなと思いました。

何も語っていないようで、語り口が巧いとゆうのも何だか不思議ですね。

感じる「共通言語」

岨手由貴子監督も主演の菊池亜希子さんもぼくと同世代なせいか、何気ない一言や仕草に、同世代だからこそわかる「共通言語」を感じることができたのも面白かったです。

ぼくは結婚も出産 (男だから生めないけど、てそーゆう意味じゃなくて笑) も経験したことがないので、「共感」てのとはちょっと違うんですが、思わず「わかるわかる!」て描写がたくさん出てきます。それが必ずしも心地いい、てわけでもないあたりが本作のリアルさなのかなと思います。

男友だちの会話とかね、端から見てるとホントに気持ち悪くて不快です笑。とゆうか、男だけ3人以上で集まるってシチュエーションがすでにだいぶ気持ち悪い笑。

てだからぼくには男友だちが少ないのかなあ、なんてことも思ったり。けどお酒の席で「髪型が荻窪っぽい」とか「野球選手の日よけ」とかは、わりと自分も言っちゃいそうだなと気づいてゾッとしました。

んでもやっぱり、全体的に「共感」できたのは、真生 (中島歩) よりも緑 (菊池亜希子) のほうかなあ。家庭環境なんかは、わりと真生寄りだったけど。

画面の中の「わたし」

「共通言語」はイチイチ楽しいんですが、今ひとつ没入感は薄かったようにも思います。最初は自分が結婚と縁遠いからかと思ったんですが、どーもそれだけじゃなくて、映画が持っている構造そのものに原因があるような気がしました。

他人の人生を覗き見しているような感覚がある本作ですが、画面そのものも動く (ハンディで撮ってる?) ので、「撮っているひと」も感じてしまうのです。登場人物たちのほかに、「もうひとり」いる感覚。

それが観客自身、てことになるわけで、自分も映画の中に入っているような効果を生んでるのかもしれませんが、家の中にまでいるのはちょっとおかしいよね笑?とか考えると何だか集中できませんでした。

これは好み (あるいは予算?) の問題かもしれませんが、本作みたいに緩やかな映画は定点で撮ってほしいとゆう気持ちがあります。

んでもそれだと古くさい雰囲気になっちゃうのかな。あるいはひどく無機質で冷たい画になっちゃうとか?盗撮的な「怖さ」も生んでしまいそう、てそんなのは意図しないところだしなあ。難しいですね。

さいごに

本作のタイトル「グッド・ストライプス」には、「結婚しても相手にあわせて自分の趣味を変えたりせず、2つの平行線 (stripes) のままの関係でいいじゃないか」という意味が込められているそうです (舞台挨拶で監督さんが言っていました) 。素晴らしいタイトルですね。

参考 ▷ 菊池亜希子の恋人演じた中島歩、“精神的に荒れ狂い”ながらも浅田真央に救われる – 映画ナタリー

それでも映画のラストシーン、ポスターにもなっている結婚式のシーンで、ふたりの距離がちょっとだけ近づいたように感じました。

ふたりは動いていないのに、カメラが引いたことで距離が近づいたような錯覚に陥る。あたかも周囲の空間が歪んで、ふたりが互いに引き寄せられたような感覚があって、何とも心地よかったです。

平行線のままだって、うまくやっていく術はいくらでもあります。共感なんて、しなくてもいいんです。何事も近づきすぎると、斥力まで強くなってしまいます。ほどほどの距離感がちょうどいい。てのも今風の考え方なんですかね笑。

いいじゃん、平行線。どこまで行っても交わらないかもしれないけれど、離れることだってないのだから。

おわり。

にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ
↑このブログは今何位?クリックしていただくと励みになりますありがとうございますがむばります。

作品情報

『グッド・ストライプス』。2015年ファントム・フィルムほか。岨手由貴子監督。119分。

主演は菊池亜希子と中島歩。共演に臼田あさ美、杏子、うじきつよし、中村優子ほか。5月30日公開。

あらすじ

4年も交際を続けるも、すっかりマンネリ気味の仲になってしまった緑 (菊池亜希子) と真生 (中島歩) のカップル。何となく別れようと考えていた矢先、緑が妊娠する。自然に結婚を意識して一緒に住み始めるが、緑は自由奔放で文化系女子、真生は優柔不断でおぼっちゃま気質なことから、何かと意見が対立してケンカを繰り返してしまう。そんな中でもお互いの両親へのあいさつをするなどして結婚に向けて準備を進めていく彼らは、その過程で思いも寄らなかった相手の過去や出自を知ることになり……。

via: シネマトゥデイ

予告編

予告編の最初 (映画の冒頭でもある) に出てくる、カレー屋での会話とかちょー好きです笑。

菊池亜希子×中島歩共演のラブストーリー!映画『グッド・ストライプス』予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 , ,

ad

スポンサーリンク

  関連記事

曇りのち晴れ【映画】アリスのままで (2014)

もうすぐ私は、すべてを忘れる。けれども愛した日々は、消えはしない。

アウトレイジ (2010)【映画023】

『アウトレイジ』鑑賞。些細な綻びからおおごとに発展していく展開が好き。全体的に映像がキレイなせいか、暴力シーンもあまり下品にはなってないです。

舟を編む (2013)【映画】

マジメって、面白い。

あなたへ (2012)【映画077】

大切な想い 大切な人に 届いていますか。

アメリカン・スナイパー (2014)【映画】英雄という名の合わせ鏡

米軍史上最多、160人を射殺した、ひとりの優しい父親。

わが母の記 (2011)【映画】なぜ『しろばんば』を読まされたのか

たとえ忘れてしまっても、きっと愛だけが残る。

あん (2015)【映画】どら焼きの中のライフイズビューティフル

やり残したことは、ありませんか?

そして父になる (2013)【映画058】

6年間育てた息子は、他人の子でした。

英国王のスピーチ (2010)【映画081】

英国史上、もっとも内気な王。

チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 (2015)【映画】

“ちょびヒゲ”が世界を救う!?

ad

スポンサーリンク

  Message

メールアドレスが公開されることはありません。

ad

スポンサーリンク

長いお別れ【映画感想】岸辺の旅(2015)

物理学に、ホール(正孔 / せいこう)という考え方がある。 整然と並んだ電子の列で、そのうちのひとつ

終わるまでが戦争です【映画】日本のいちばん長い日(2015)

降伏か、本土決戦か__。

迷路荘の惨劇 (横溝正史)【読書】

角川文庫・金田一耕助ファイルの8冊目『迷路荘の惨劇』を読みました。子どものころハマった金田一を、1年

ゼッタイ押すなよ!【映画】人生スイッチ (2014)

押したら、さいご。

マイベストグルメ!〜2015上半期〜

2015年の上半期に行ったお店の中から、特に美味しかった5店舗を選んでみました!

  • ランキングに参加しています。当ブログの順位は以下から確認できます。

    にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ

    ブログランキングならblogram track feed コタノト!



  • follow us in feedly