わが母の記 (2011)【映画】なぜ『しろばんば』を読まされたのか

      2015/06/10

たとえ忘れてしまっても、きっと愛だけが残る。

わが母の記 樹木希林

『わが母の記』鑑賞。

「敦煌」「天平の甍」などで知られる小説家・井上靖が自身の家族とのきずなを基に著した自伝的小説「わが母の記」を、『クライマーズ・ハイ』などの原田眞人監督が映画化した家族ドラマ。老いた母親との断絶を埋めようとする小説家の姿を映し、母の強い愛を描いていく。主人公の小説家には役所広司、母には樹木希林、そして小説家の娘に宮崎あおいが扮し、日本を代表する演技派俳優たちの共演に期待が高まる。

via: シネマトゥデイ

てな内容で、『あん』(もうすぐ公開ですね!) で希林さんにハマったんで観てみました。あーつか母の日だからTVで放送してたのか今気づきました笑 (ついでにいうと、原田眞人監督&希林さん出演の『駆け込み女と駆け出し男』も近く公開みたいです) 。

んでよくよくキャスト観てみたら、希林さんのほかにも、『グッド・ストライプス』 (『あん』と同日公開!) で好きになった菊池亜希子さんや、もともと大好きな宮﨑あおいさんが姉妹役 (長女役のミムラさんもわりと好きです) で出ていたりしてかなり豪華。むしろ何で観てなかったのかナゾなくらいです笑。

まあ、テーマはもうみるからにつまんなそう (さらっと言った笑) てのもあるんですが、最近はこの手の「退屈そうな」映画が好きになってきているので、わりとノリノリで観ることができました。退屈を求めてノリノリ、てちょっとおかしいですけど笑。

感想!

読まされた作家

井上靖さんの小説って、実はほとんど読んだことがありません。『しろばんば』くらいでしょうか。中学だか高校だかのころ、夏休みの宿題で読書感想文を書くために「しかたなしに」読んだ記憶があります。とゆうわけで、ぼくの中ではわりと「読まされた」作家て位置づけだったりします。

『しろばんば』は今でもわりと感想文の定番のようですが、何でこんなん (大文豪つかまえて失礼極まりねー笑) が指定図書なのか、意味がわかりません笑。読んだ当時もピンとこなかったですし、今でもよくわからない……。

本作『わが母の記』でもこの『しろばんば』に関するはなしがたびたび登場します。

主人公洪作 (役所広司) は、子供のころ妾の婆さんと暮らしていたわけですが、娘の琴子 (宮﨑あおい) はそのことを指して「不潔」と表現します。この感覚がすべてとゆうか、『しろばんば』という小説がまとっている雰囲気そのものが、なにやら「不潔」なんですね。てまあ、ほとんど憶えてないんですが笑。

まあそもそもぼくが読んだ当時は、「妾」の意味すらよくわかっていなかったような気もします笑。映画の当時 (昭和30年代) からして妾との暮らしが「不潔」なんて言われてるんですから、今だったらちょっと考えられないんじゃないかなあ。今の子供たちはどう読んでいるのだろうか……。

小津のオマージュ

何だか観るからに退屈そうな映画で公開時にはスルーしたんですが、観てみたらなかなかに「良い退屈」で、わりと好きな雰囲気でした。

オープニングからして、小津安二郎監督『浮草』のオマージュを感じさせるシーンでテンション上がります (ちなみにその雨の軒下のシーン、八重 (希林さん) の若いころを演じている女性が、いかにも希林さんの若いころ、て感じですげーなあと思ったんですが、しばらくして希林さんの実の娘さん、内田也哉子さんだってことに気づきました笑。そりゃ似てるわけだ!と、ひとりナットクして可笑しかったです) 。

ついでにゆうと、テニスコートでの情景は『麗しのサブリナ』を彷彿とさせます。どちらも描かれるシーンの意味合いは大きく異なるのですが、構図が何やら似ているのです。ほかにもいろんなオマージュがありそう。

ストーリーはほとんどあってないようなものですが、希林さんに役所さん、あおいちゃんなどなど、大好きな俳優さんがたくさん出ておられるので、彼らを観ているだけでも十分鑑賞に耐えうる、という側面もあります。

キムラ緑子さんに菊池亜希子さんなど、脇を固める俳優陣も豪華な上にみんな大好き。それぞれに見せ場もあって、なかなか楽しいです。このキャストだとヘタなストーリーは返って邪魔になるような気もします。本作のような、情景の集積がちょうどいいです。逆にゆうとごまかしが利かないので、ヘタな芝居じゃ通用しないようなところもありますね。怖い怖い。

昭和の生活史

ほとんど予備知識ナシで楽しめる映画ですが、井上靖という作家を知らないと、わりとピンとこないようなところもあります (ぼくはピンときませんでした笑) 。とゆうか、知っていればより面白い、といったところでしょうか。

んまあでも、昭和の文豪の暮らしを知れるってのはなかなか面白かったです (境界を描いている、て表現はなるほどなあと思いました) 。キャラクタもいわゆる明治生まれのいけずな婆さんだったり、昭和の頑固オヤジだったり、てのは懐かしさを通り越して「生活史」を眺めるような面白さがあります。

学校で習う歴史 (に限らず「歴史」と言われるもの) は、ほとんどすべてが権力者の歴史なので、この手の「生活史」って学ぶ機会がほとんどありません。わりと大事なんですけどね。

で、そんな庶民 (とゆうにはかなり裕福ですが) の暮らしの歴史を知るには、映画や文学に触れるのが一番手っ取り早いです。とゆうか、映画や小説の「意義」(のひとつ) ってわりとそーゆう部分にあるような気もします。

あーそうか、『しろばんば』を「読まされた」意味もこのあたりにあるのかな。授業では教えられない「生活」の歴史を補完するための教材、てことなのかもしれません。

そう考えると、本作の原作と併せて『しろばんば』もまた読み返してみたくなります。今度は「読まされる」のではなく、主体的に読んでみたい。そんなふうに思わせてくれる映画です。

さいごに

本作を観ていて、老人にまつわるふたつのエピソードを思い出しました。

ひとつは祖父が入院していたときのはなし。今はもう亡くなってしまいましたが、その祖父が一度倒れたときに、意識が回復してからも2週間ほど頭がボーッとしていた時期がありました。一時的にボケていたんですね。

そのとき祖父は、本作の八重のように、ひどく若いころのはなし (祖父の場合は戦争のころのはなし) を急にしはじめたり、お医者さんや看護師さんのことを、大昔に死んだ知人と勘違いしたり、なんてことがありました。

もうひとつは今でも健在な祖母のはなし。祖母はボケてはいませんが、耳が遠いです。大抵は本当に聴こえていないのですが、ときどき自分に都合の悪いことは聴こえないフリをすることがあります。八重がボケたフリをしていたように。

本作を観ていたら、そんな身近な老人たちの挙動を思い出したりしました。

とゆうわけで、これから高齢者が増えていくなかで、ともに暮らしていくためのヒントもそれなりにつまっている一本。

おわり。

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作品情報

『わが母の記』。2011年松竹ほか。原田眞人監督。118分。

主演は役所広司。共演に樹木希林、宮﨑あおい、菊池亜希子、ミムラ、三浦貴大、真野恵里菜、キムラ緑子、南果歩、三國連太郎ほか。

あらすじ

昭和39年。小説家の伊上洪作 (役所広司) は実母の八重 (樹木希林) の手で育てられなかったこともあって、長男ではあるが母と距離をとっていた。しかし、父が亡くなったのを機に、伊上は母と向き合うことになる。八重もまた消えゆく記憶の中で、息子への愛を確かめようとしていた。

via: シネマトゥデイ

原作本と関連本はこちら。つか井上靖はわりとkindleで読めるんですねー。

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DVDは以下。

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