めくるめくパラレルワールドの様式美【読書】四畳半神話大系 (森見登美彦)

      2015/06/21

森見登美彦さん2作目の長編小説『四畳半神話大系』を読みました。森見さんの著作を読むのは、これで7冊目です。

四畳半神話大系 森見登美彦

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの並行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。

via: Amazon内容紹介 (「BOOK」データベースより)

てな内容で、処女作『太陽の塔』につづいて本作も、腐れ京大生が活躍 (暗躍?) する摩訶不思議な物語です。

感想!

本作は4つの物語で構成されています。大学1回生のとき、どのサークルを選ぶかによって変化する (とゆうか変化しない笑) 主人公「私」の大学生活が、オモシロ可笑しく描かれていきます。

めくるめく並行世界 (パラレルワールド) をウロウロするさまは、慣れてくると心地よく感じられるから不思議です。

最終話で「私」は四畳半から抜け出せなくなりますが (←さらっとネタバレ) 、この小説自体もハマり込んだら出たくなくなるような、極めて妖しげな魅力を放ちまくっています。

これは何やら、ぼくが子供のころの一時期ハマった、ゲームブックのような趣きもあります。ゲームブック、選択肢に沿ってページを飛んでいくことで物語が進んでいく、アレです。

あるいはTVゲームのサウンドノベル (「かまいたちの夜」がわりと有名です) も、コンセプトは同じですね。何度も同じ文章が出てくる、けれども物語は違う方向へ進んでいく (本作の場合、結末は似たりよったりなんですが笑) とゆう感覚が楽しいです。

繰り返しは少々クドい向きもありますが、そのクドさが一種の様式美のように働いて、返って幻想的な雰囲気を醸し出しているようにも感じられます。映画でゆうとヒッチコック『めまい』にも似た様式美で、どんどん階層を下っていくような陶酔に浸ることができます。

同じところをグルグルと回らされているうちに、読者であるこちら側もどんどん深みにハマっていく……。危険な感じが堪らない!同じ文章の繰り返しには、そんな効果もあるような気がしました。

似たようなストーリーを繰り返し見ているようでいて、前の物語で提示されたナゾがじわじわと明らかになっていくあたりも、非常に巧いです。このあたりもサウンドノベルの感覚と似ています。一巡目じゃ大抵クリアできない。けれどもプレイを重ねていくうちに選択肢が増えて、徐々に新しい物語を読めるようになっていく。そんなゲームの感覚を、小説にうまいこと取り込んでいます。

蛾の大群、つーかなーりワケわかんないエンディングのナゾが、見事に繋がるスッキリ感と言ったら!思わず叫び出したくなるほど素晴らしかったです。

書き手の視点からすると、同じ文章を使ってどこまで違う物語を繋げるか、みたいな挑戦ととらえることもできます。ある程度制約があったほうが、あるいは書きやすいのかもしれません。

最初に「4つの物語」と書きましたが、最終話だけは少し様相が異なっています。腐れ大学生の日常から一転、ガラッとSF的世界へ。この転換も実に鮮やかです。

つか、この世でもっとも狭い且つのんびりしている「四畳半」という空間で、ロビンソン・クルーソーもビックリな冒険小説を展開するとゆう発想からして天才まくります。四畳半世界がこんなに過酷だったなんて笑!ある意味無人島よりツラいかもしれません笑。

「自虐代理代理戦争」「もちぐま」などなど、意味不明なのに奇妙な納得感がある森見節は本作でももちろん健在。どころか、いや増しているほどです。「香織さん」の件なんてもうくだらなさすぎてサイコーまくります。大爆笑、でも良い子は読んじゃダメだよ笑!

有益なことは何もない。なのに超絶可笑しいとゆう、森見ワールド全開な一冊。

おわり。

にほんブログ村 本ブログ おすすめ本へ
↑このブログは今何位?クリックしていただくと励みになりますありがとうございますがむばります。

作品情報

森見登美彦著『四畳半神話大系』読了。2008年角川文庫 (2005年太田出版) 刊。405ページ。

目次は以下の通り。

  • 第一話 四畳半恋ノ邪魔者
  • 第二話 四畳半自虐代理代理戦争
  • 第三話 四畳半の甘い生活
  • 最終話 八十日間四畳半一周

本作はアニメ化もされているようです。アニメオリジナルのおはなしもあるみたいですね。そのうち観てみよっと。

 -小説

ad

スポンサーリンク

  関連記事

カッコウの卵は誰のもの (東野圭吾)【読書】

キャッチーなタイトルと読みやすさは相変わらず素晴らしいですが……。それなりに感動できるけど驚くほど心に残らない。東野圭吾作品の「軽さ」は健在です。

虚像の道化師 (東野圭吾)【読書】

刑事はさらに不可解な謎を抱え、あの研究室のドアを叩く。

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 (スティーグ・ラーソン)【読書】

世界中に旋風を巻き起こした驚異のミステリ三部作、ついに完結!

本陣殺人事件 (横溝正史)【読書】

金田一耕助、デビュー戦。

福家警部補の挨拶 (大倉崇裕) 【読書】

福家警部補は今日も徹夜で捜査する。

ミレニアム2 火と戯れる女 (スティーグ・ラーソン)【読書】

激動の第二部!

マリアビートル (伊坂幸太郎) 【読書】なぜ人を殺してはいけないのか

2時間30分のノンストップ最強エンタテインメント!

no image

博士の愛した数式 (小川洋子)【読書】

博士の愛した数式 (新潮文庫) posted with ヨメレバ 小川 洋子 新潮社 2005-11

おもしろきこともなき世をおもしろく【読書】世に棲む日日 (二) (司馬遼太郎)

すみなすものは心なりけり。

no image

真夏の方程式 (東野圭吾)【読書】

その夏、少年が出逢ったのは、〈博士〉だった__。

ad

スポンサーリンク

  Message

メールアドレスが公開されることはありません。

ad

スポンサーリンク

長いお別れ【映画感想】岸辺の旅(2015)

物理学に、ホール(正孔 / せいこう)という考え方がある。 整然と並んだ電子の列で、そのうちのひとつ

終わるまでが戦争です【映画】日本のいちばん長い日(2015)

降伏か、本土決戦か__。

迷路荘の惨劇 (横溝正史)【読書】

角川文庫・金田一耕助ファイルの8冊目『迷路荘の惨劇』を読みました。子どものころハマった金田一を、1年

ゼッタイ押すなよ!【映画】人生スイッチ (2014)

押したら、さいご。

マイベストグルメ!〜2015上半期〜

2015年の上半期に行ったお店の中から、特に美味しかった5店舗を選んでみました!

  • ランキングに参加しています。当ブログの順位は以下から確認できます。

    にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ

    ブログランキングならblogram track feed コタノト!



  • follow us in feedly