人間らしい人間【映画】イミテーション・ゲーム (2014)

      2015/06/25

挑むのは、世界最強の暗号__。

イミテーション・ゲーム

『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密 (The Imitation Game) 』鑑賞。

第2次世界大戦時、ドイツの世界最強の暗号エニグマを解き明かした天才数学者アラン・チューリングの波乱の人生を描いた伝記ドラマ。劣勢だったイギリスの勝利に貢献し、その後コンピューターの概念を創造し「人工知能の父」と呼ばれた英雄にもかかわらず、戦後悲劇の運命をたどったチューリングを、ベネディクト・カンバーバッチが熱演する。

via: シネマトゥデイ

てな内容で、アカデミー賞8部門ノミネート、脚色賞受賞 (グレアム・ムーア) 。

感想!

公開が終わるギリギリのタイミングで観てきました。

バードマン』を観た直後につづけて観たんですが、これがケチのつけはじめ笑。あの斬新な映像のあとだと、本作のゆるやかな流れはいかにも単調で、もう退屈極まりなかったです笑。

「知ってる」はなしは感動できない

映像やセットはとてもキレイなんですが、何だかキレイすぎて逆に嘘くさい印象を受けました。

登場人物もセット同様、いかにも単純なキャラクタばかりが並んでいて、NHKの朝ドラや大河ドラマのような、わかりやすーい伝記映画を見させられているようでした。まあある意味見やすいのかもしれませんが、ぼくには退屈すぎて、正直苦痛ですらありました。

アラン・チューリングの物語って、ぼくみたいな理系人間にとってはわりと常識だったりします。本作で描かれている内容はほとんど知っているわけで、もう少し掘り下げたところまで表現してほしかったなあ、とゆうのが率直な感想です。驚きとゆうか、感動する部分がこれっぽっちもありませんでした。

つかこれまた個人的な失敗なんですが、観にいく前に予習 (復習?) を兼ねて、サイモン・シン『暗号解読』を読み直してしまったのもマズかったです。原作 (本作の原作は別です) 読んでから映画観ると大抵ガッカリしますけど、そのパターンに近いです。本のが遥かに面白かった笑。

知っているはなしでも楽しめることだってもちろんありますが、本作はそれを凌ぐほどの感動はなかった、とゆうことです。

エニグマの説明は不十分ですし (つか本作の描写だけじゃ、知らないひとはチンプンカンプンなんじゃないか) 、毒りんごのエピソードなんて映像化にもってこいなのに、ちゃんと描いてなかったりして (敢えてなのかなんなのか知りませんが) 、いかにも中途半端。物足りなさばかりが募りました。

思うに (クソダサい) 邦題に引きずられてしまったのが、イマイチ楽しめなかった原因なのかな、とゆう気がします。あのサブタイトルじゃ、だれだって暗号解読がメインなのかと思うよね。

んでも実際、エニグマのはなしは主題ではないとゆうか、むしろチューリングの「秘密」(とゆうか内面) を描くことが本作の真の目的なのかな、てことを観ててちょっと思いました。

人間らしさとは何か

作中でも少しだけ言及がありますが、人工知能 (AI) を判定するための「チューリング・テスト」というものがあります。

ブラインドをしたAI (または人間) と人間が会話をすることで、相手が機械か否かを判定するとゆうものです。本作のタイトル「イミテーション・ゲーム (モノマネゲーム) 」もこのテストからきています。

この「人間なのか機械なのか」を判定するうえで、「人間らしい」とは何か、という問いが半ば必然的に浮かび上がってきます。

人間同士の会話では、必ずしも思った通りに発言するわけではありません。どころか、まったく逆のことを、意識無意識に関わらず言ってしまう、なんてことがよくあります (あるいは、そんな状況のほうがむしろ多いかもしれません) 。

「人間らしさ」をどのように定義したらいいのか。コンピュータ科学 (あるいは哲学) の領域ではより高次元な議論がなされているのだと思いますが、ちょっと考えただけでもなかなか難しい問題のように思われます。

ちなみに、このチューリング・テストでAIの性能を競うローブナー賞では、最も人間らしいAIを表彰すると同時に、最も「人間らしい人間」も表彰しているそうです。面白いですね。

そんな「人間らしさ」とは何か、ということに関わる研究の端緒を、あまり「人間らしく」ない (ように見える) 人物が切り開いたというコントラストが、本作最大の善さなのではないかと思うわけです。

周囲との協調性を欠き、幼少期から孤立してきた人物だからこそ、「人間らしい」とは何か、ということを考えるに至ったのではないかと。

で、そのついでとして、第二次大戦における情報戦という、もうひとつの「イミテーション・ゲーム」(暗号を解読していても、解読していない「フリ」をする) とも掛けている、てあたりが本作の巧いところ、なのかもしれませんが、残念ながらイマイチ伝わりにくいんですよねー笑。

天才のすぐそばにいた凡人が描けていない

天才を描いた映画では、本人よりその周囲の人間をいかに描くかが重要だと思っています。われわれ凡人は、天才のすぐそばにいた平凡な視点というものを通して、その人物の偉大さ (や特異性) に触れるからです。

『ソーシャル・ネットワーク』しかり、『博士と彼女のセオリー』しかり、良質な天才映画では、必ず天才の近くにいた凡人も巧く描かれています。「天才とバカは何とか」とよく言いますが、天才の奇行ばかりを描いていたら、それは単なるヘンなひとになってしまいます。

周りの凡人が「人間的」であればあるほど、その天才の天才たる所以が際立つのです。

本作はその周囲の描きかたが圧倒的に雑です。安易に役割が決まりすぎていて、人間的な複雑さがまるで見えてきません。上でキャラクタが単純、と書いたのはそーゆう意味です。

例えば、チューリングのやることなすことにことごとく反発してくるデニストン中佐 (チャールズ・ダンス) は、単なるイヤミなやつにしか見えません。彼なりの言い分があってやっていることでも、裏側を描いてくれないからまるで「人間性」を感じないのです。

「向こう側」の視点が圧倒的に欠けています (この手の映画、本当に苦手です) 。まあそんなもんは観客各々で容易に想像できるだろう、と言われてしまえばそれまでですが、「人間らしさ」を描きたい映画で、その雑さはないだろう笑!と思ってしまいました。

あとクラーク女史 (キーラ・ナイトレイ) が頭良すぎるのもなあ。天才は天才に惚れる、てことなんでしょうけど (実際、アランがクリストファーを好きになった理由がそうですし) 、あまりに活躍しすぎでチューリングのすごさが霞んでしまうほどでした。

さいごに

何だか文句ばっかりになってしまいましたが、残念ついでにもうひとつ。

歴史観がいかにも「大河ドラマ的」なのも残念でなりません。イギリスが勝つという神の視点 (まあ時代を行ったり来たりするので、ある程度は仕方ないんですけど) に基づいて描かれているような気がしてなりませんでした。何とゆうか、「その時代」に息づく空気、みたいなものが全然伝わってこないのです。キレイなのに嘘くさい、てのはこの辺りとも関係がありそうですね。

いずれにしても、アラン・チューリングという人物をまったく知らなければ、そこそこ楽しめる作品なのかな、とは思います (散々腐しといて説得力がまるでない笑) 。

まあチューリングを知らないひとが、そもそもこの映画を観たいと思うか、つーはなしもありますが笑。

おわり。

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作品情報

『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密 (The Imitation Game) 』。2014年アメリカ / イギリス。モルテン・ティルドゥム監督。115分。

主演はベネディクト・カンバーバッチ。共演にキーラ・ナイトレイ、マーク・ストロングほか。

あらすじ

第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング (ベネディクト・カンバーバッチ) はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。

via: シネマトゥデイ

予告編

映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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