大富豪が語るふたつの「裕福」【映画】ハイネケン 誘拐の代償 (2014)

      2015/06/11

老獪な人質 vs. 素人の誘拐犯たち。

ハイネケン 誘拐の代償

『ハイネケン 誘拐の代償 (Kidnapping Freddy Heineken) 』の試写会に行ってきました。

1983年に実際に起こった「ハイネケン誘拐事件」に基づいたおはなしです (より詳しいあらすじを知りたいかたは、[シネマトゥデイ] あたりをご参照ください) 。

素人による大それた犯罪だったり、犯行計画が杜撰すぎて人質に叱られたり、といったあたりは先日観た『狼たちの午後』[感想] とちょっと似たところがあります。

キャッチコピーの「老獪な人質 vs. 素人の誘拐犯たち」であるとか、 [予告編] の雰囲気、さらには誘拐されるビール王ハイネケンを演じているのがアンソニー・ホプキンス、といったあたりから、何となく『羊たちの沈黙』のようなサスペンス・ミステリ ( [公式ページ] にもそう書かれています笑) を想像していましたが、実際はだいぶ違った趣きでした。

あくまでも犯人たちの人間ドラマが主題で、サスペンスを期待していると、ちょっと肩すかしを食らってしまうようなところがあります (ぼくがまさにそうでした笑) 。

それでもオープニングからテンポはいいですし、上映時間も90分ちょっととコンパクトにまとまっていて、平凡なプロットのわりには、さほど退屈せずに観ることができました。

ただし、アンソニー・ホプキンスをもっと観たかったな、というのがわりと率直な感想だったりもします。それと映画の内容とはまったく関係ないんですが、ビールのハイネケンも無性に飲みたくなりました笑。劇中でビールのほうは出てこないのに、です。なぜだろう、サブリミナル効果笑?社長が誘拐された事件の映画化とかだいぶ物騒ですが、わりと宣伝になっているよーな気もします。

アンソニー・ホプキンスは出演シーンが少ないにもかかわらず、その存在感には独特の説得力があって、惹き込まれます。

誘拐犯たちが最初っからハイネケンのペースに飲まれていたように、観客自身も、アンソニー・ホプキンスが画面に現れた瞬間から彼のペースに支配されてしまっているような感覚があります。そのシンクロが、心地いいです。まさにハマり役だよなあと、ただただ感動してしまいました。

誘拐されてもわりと余裕で飄々としている一方で、ともに人質となった運転手のことを案じて鼓舞したり (あの骨の歌は何なの笑) と、少ない描写でもちゃんとキャラクタに深みを持たせてくれています。とらえどころのない感じが、絶妙です。

それに比べると、誘拐犯たちの描写はやや物足りないものがあります。焦りや葛藤といった感情を、丁寧に追いかけてはいるものの、こちらは逆にとらえどころ (というか引っ掛かり) がなさすぎて、ヌルヌルと滑っていってしまう印象を受けました。だからこそ、ホプキンスとの絡みをもっと観たかったなあと思ってしまいます。

本作のテーマは、劇中でハイネケンが言う以下のセリフに尽くされています。

「裕福には二通りある。大金持ちになるか、たくさんの友人を持つか。両方はありえない」

なるほど、タイトルの「代償」てのはそーゆうことかあ。てこれ犯人側の視点で観てしまうと、わりとオーソドックスな友情物語みたいになってしまいますが、ハイネケンの立場で考えるとまた違った味わいがあります。

ハイネケンはすでに大金持ちなわけで、とゆうことは彼自身には友人がいないわけで、そんな孤独な男が運転手を心配している、という構図は、犯人たちの物語以上に切ないものがあります。あーでもこれは、人間的な感情どうこうというよりは、命の危険が迫っているのは運転手のほう、という経営者なりの論理的な計算も含まれてたりするのかな。

と、お金か友情か、つー単純な二元論よりも深いところまで、あれこれ考えずにはいられなくなる、アンソニー・ホプキンスの演技はやはり抜群です。

お金はたくさん持っているに越したことはないですが、本作の結末を観ると、ほどほどなのがいいのかなあとも思ってしまいます。あんまりお金持ちになりすぎても、ハイネケンのように誘拐されてしまいますからね笑。

おわり。

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作品情報

『ハイネケン 誘拐の代償 (Kidnapping Freddy Heineken / Kidnapping Mr. Heineken) 』。2014年ベルギー / イギリス / オランダ。ダニエル・アルフレッドソン監督。95分。

主演はジム・スタージェス。共演にサム・ワーシントン、アンソニー・ホプキンスほか。6月13日公開。

 -2010年代の映画 ,

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