大栗先生、重力を語る【読書】重力とは何か (大栗博司)

   

宇宙を支配する力の正体。

重力とは何か

大栗博司先生の『重力とは何か』。プラネタリウム [感想] へ行ったらまた読みたくなったので、再読しました。事あるごとに読み返している、お気に入りの科学啓蒙書です。

重力を軸として、20世紀から現在へと至る宇宙論研究の流れが、平易な文章で説明されていきます。もくじは以下の通り。

  • 第一章 重力の七不思議
  • 第二章 伸び縮みする時間と空間__特殊相対論の世界
  • 第三章 重力はなぜ生じるのか__一般相対論の世界
  • 第四章 ブラックホールと宇宙の始まり___アインシュタイン理論の限界
  • 第五章 猫は生きているのか死んでいるのか__量子力学の世界
  • 第六章 宇宙玉ねぎの芯に迫る__超弦理論の登場
  • 第七章 ブラックホールに投げ込まれた本の運命__重力のホログラフィー原理
  • 第八章 この世界の最も奥深い真実__超弦理論の可能性

まずはじめに「重力の七不思議」を提示して、それに答えるカタチで展開していく、という構成は、往年の名著『砂時計の七不思議』[感想] を彷彿とさせます。馴染みのある「重力」という現象にもこれだけのナゾがあるんだよ、という入りかたに、まず惹き込まれます。

数式を使わず、かといってごまかしをせず、優しい語り口で進んでいくさまは、さながら『ホーキング、宇宙を語る』[感想] の日本版 (且つ21世紀版) といった趣きがあります。内容的にも、よく似ている、とゆうかホーキング博士は本書後半の主人公 (ちなみに前半の主人公はアインシュタインです) でもあるので、それもある種の必然なのかもしれません。

内容のわかりやすさもさることながら、著者の文学や映画に対する造詣の深さが垣間見えるのも素晴らしいです。比喩も巧みで、唸らされます。科学という中身を抜きにしても、純粋に読み物として面白いです。

科学史に沿った構成も、理論の発展を追いやすいです。そして、過去の偉人たちが学問的な困難をどのように打破していったのかという過程を辿る旅は、わかりやすさ以上に、エキサイティングでもあります。

ガリレイやニュートンの時代の宇宙観をさらっとおさらいしたのち、2章からはいきなり相対論の世界に入っていきます。

特殊相対論や「光が曲がる」などの現象は、わりとどの啓蒙書でも言及されますが、本書の説明はもう一歩踏み込んだところまで、細かく書いてくれていて、より納得感があります。

「フラットランド」による次元の説明は、後半に出てくる超弦理論 (昔は超ひも理論と言いましたが、プロは超弦理論というそうです。本書が登場してから、一般にも超弦理論といわれることが多くなったように思います) への、うまい橋渡しにもなっています。「欠損角」「余剰角」の説明なども非常にわかりやすかったです。

アインシュタインが10年かけて完成させた相対論ですが、ホーキングによってブラックホールに投げ込まれることで、その限界を露呈してしまいます (4章) 。そこから抜け出すために量子力学 (5章) との融合を模索し、さらには超弦理論の登場 (6章) へと進んできます。

量子力学の章 (5章) では、ファインマン・ダイアグラムの意味 (というか見方) をはじめて知りました。未来からやってくる粒子は、未来へと向かう反粒子。なるほどよくできてんなあ。あ、それと短い時間ならエネルギー保存則が破れても構わない、というのも、はじめて読んだときはわりと衝撃でした。

超弦理論の応用例として紹介される「ホログラフィー原理」も面白かったです。言葉だけは知っていましたが、画像技術のホログラフィーが、何で重力や宇宙論・素粒子論と関係があるのか、ずっと謎でした。その辺りの関係性だけでもわかって、よかったです。

超弦理論が高温超伝導の理論的解明に応用できるかもしれない、というのも個人的にかなり驚きました (学生時代に超伝導の研究をかじっていたので) 。

他にも「事象の地平線」「不確定性原理」などの説明は、本書を読んではじめて腑に落ちたように思います。もっと早くに読みたかった笑……。

これらの考えかた (に限らず物理学のイメージなら何でも) は理解してしまえばなんてことないのですが、一般的な「常識」とはかけ離れていて何だかよくわからない、ということがよくあります。上に挙げたキーワードで、イマイチ自分ではうまくイメージを描けていない、というものがひとつでもあるかたは、ぜひ一読をオススメします。

わかったときのスッキリ感が、とても気持ちいいです。重力に引っ張られるように、ストンと腑に「落ちる」一冊。

おわり。

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オマケ

超弦理論については『大栗先生の超弦理論入門』[Amazon] という本があって、そちらのほうがより詳しそうです。ぼくは手元にはあるのですが、ずっと積読状態です。今度こそ読もうと思っています笑。

とその前に、『重力とは何か』の続編的内容の『強い力と弱い力』[Amazon] をまずは再読しておこうと思っています。

『重力〜』は相対論からのアプローチでしたが、『強い力と弱い力』は量子力学からのアプローチです。素粒子論の標準モデルについて書かれています。たしか南部先生の理論 (自発的対称性の破れ) やヒッグス粒子についても詳しく書かれていて、わりと一般的にも馴染みが深い、のではないかなあ笑。

作品情報

大栗博司著『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』。2012年幻冬舎新書刊。289ページ。

 -その他の読書

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