曇りのち晴れ【映画】アリスのままで (2014)

      2015/07/13

もうすぐ私は、すべてを忘れる。けれども愛した日々は、消えはしない。

アリスのままで

『アリスのままで (Still Alice) 』[公式ページ] の試写会に行ってきました。

若年性アルツハイマー病を患う女性を描いた物語です (詳細は [シネマトゥデイ] [予告編] などを参照ください) 。主人公アリスを演じたジュリアン・ムーアが、アカデミー賞主演女優賞に輝いたことで話題になっています。

難病系の映画はあまり得意ではないんですが、ジュリアン・ムーアは好きなので、観にいってきました。

お涙ちょうだい丸出しの、ヘンに感動を強要してくるようなおはなしだったらイヤだな、と思っていましたが、そこは実に中立といいますか、病気に蝕まれていくさまが、わりと淡々と描かれていました。

主人公の不幸に、過度に寄り添うことなく、病気の経過に伴って、徐々にアリスが「失われていく」過程が、ちょっと突き放したような視点で描かれていて、それが逆に、この病気の恐ろしさをいっそう際立たせているように感じました。

日常的に使っている単語が「抜け落ちる」、知っている場所で迷子になる、自分が壊れていくのがわかる、という感覚は、とても恐ろしいです。頭のいいひとほど、自分で対処法を見つけて処理してしまうので、結果的に発見が遅れる、というのも、とても残酷です。

そんなわけで、あらすじだけを追いかけてしまうと、「アルツハイマー病は怖い病気だと思いました。」という、わりと身もふたもない小学生みたいな感想しか出てこないんですが (笑) 、それぞれの情景はなかなかに印象的でした。

明るいんだか暗いんだか、よくわからない不安定な気持ちにさせられるのは、何とも心地よかったです。感情 (やトーン) がハッキリしていない映画が好きなので、なかなか楽しめたように思います (楽しい、という表現は本作にふさわしくないようにも思いますが) 。風景の描きかたや、間の取りかたなんかは、わりと邦画的だな、とも思いました。

ジュリアン・ムーアの演技がどれほど優れているのかは、正直なところ、ぼくにはよく分かりませんでした。好みでいったら、『博士と彼女のセオリー』[感想] のフェリシティ・ジョーンズや、『サンドラの週末』のマリオン・コティヤールのほうが、ぼくは好きです。

(こうやって並べてみると、性格や状況はさまざまでも、困難に立ち向かっていく、という点では共通していて、そんな役柄の女性が多かったことに改めて気づかされました。助演女優賞に輝いた『6才のボクが、大人になるまで。』[感想] のパトリシア・アークエットもまた然り。あ、『ゴーン・ガール』[感想] のロザムンド・パイクは、ちょっと違うか笑)

本作のジュリアン・ムーアは、ヘンに芝居がかっていないのに、何とも表現しがたい、複雑な感情をもたらしてくれました。そーいった点では、やはり素晴らしいのかな、とも感じます (何だかエラそうな言いかたになってしまいましたねごめんなさい笑) 。

アリスを支える夫ジョンを演じたアレック・ボールドウィンも、とても印象的でした。献身的に支える、というわけでもない、けれども愛情を感じる。そんな距離感が、現実的でした。何度同じことを聞かれても、嫌がらずに答えるシーンが、とても好きです。

余談ですが、ぼくは祖母と暮らしています。祖母の頭はまだしっかりしていますが、耳が遠いので、同じことを何度も聞いてくるときがあります。あまりに伝わらないと、ついイライラしてしまうんですが、あのジョンのような姿勢は、ぼくも見習わないといけないな、と映画を観ながらちょっと反省しました。

そういえばボールドウィンは、昨年『ブルージャスミン』[感想] でもケイト・ブランシェットの (元) 夫役を演じていましたね。何なの、アカデミー獲らせる俳優なの笑。

娘役のふたりも、対照的な性格ながら、互いにとてもステキでした。何より美人ですしね、ふたりとも。

妹のリディアを演じたクリステン・スチュワートが、特に良かったです (姉アナはケイト・ボスワース) 。『トワイライト』というシリーズで有名らしいのですが、ぼくは本作ではじめて観たので、ああこのコがウワサの!という感じでした。整った顔が、とってもキレイですね (子役のころに出た『パニック・ルーム』で注目されたそうです。何度も観てるのに全然憶えてねー笑) 。

反発しながらも、アリスのことをいちばんよく理解していて、最終的には全ての面倒を引き受ける、そんなおいしい役どころを、見事に演じ切っていました。何というか「ああ、このコはアリスのことをとてもよく見ているな」という説得力がありました。役者 (リディアは役者志望です) は観察力が大事なので、そのあたりとも関係があるのかもしれません。

映画の中で、アリスの頭がはっきりしない状態を指して、「曇り」と表現しているのが、何とも巧いです。物語が進むにつれて、どんどん雲が分厚くなっていくなかで、一瞬、晴れ間が刺すようなエンディングが、実に秀逸でした。

「曇り」のように重いテーマを、「晴れ」のような明るさを持った映像で描いた一本。

おわり。

おわり。

にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ
↑クリックしていただくと励みになります。ありがとうございます。がむばります。

作品情報

『アリスのままで (Still Alice) 』。2014年アメリカ。リチャード・グラツァー / ウォッシュ・ウエストモアランド監督。101分。

主演はジュリアン・ムーア (アカデミー主演女優賞) 。共演にアレック・ボールドウィン、クリステン・スチュワート、ケイト・ボスワースほか。6月27日公開。

 -2010年代の映画 ,

ad

スポンサーリンク

  関連記事

テルマエ・ロマエ (2012)【映画】

映画『テルマエ・ロマエ』鑑賞。原作のファンですが、映画も原作以上に楽しめました。

終わるまでが戦争です【映画】日本のいちばん長い日(2015)

降伏か、本土決戦か__。

博士と彼女のセオリー (2014)【映画】天才のとなりで

生きる希望をつないだのは、無限の愛。

交渉人リーアム・ニーソン!【映画】誘拐の掟 (2014)

誘拐犯に告ぐ。殺したら、殺す。

借りぐらしのアリエッティ (2010)【映画】

人間に見られてはいけない。

バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡) (2014)【映画】JAZZだね!

全てを手に入れ、全てを手放した。もういちど輝くために、いったい何をすればいいのか__?

誰よりも狙われた男 (2014)【映画】

その瞬間、世界の全てが敵となった。

大富豪が語るふたつの「裕福」【映画】ハイネケン 誘拐の代償 (2014)

老獪な人質 vs. 素人の誘拐犯たち。

オブリビオン (2013)【映画】

トム・クルーズ主演『オブリビオン (Oblivion) 』を観てきました。想像してたのとはちょっと違う雰囲気で、なかなか奥の深い内容。何か久しぶりに良い意味で裏切られて大満足です。

フルスロットル (2013)【映画】ノープランを凌駕する驚異の身体能力

身体能力【全開〈フルスロットル〉】で跳べ。究極の”ゼロG”アクション誕生!!

ad

スポンサーリンク

  Message

メールアドレスが公開されることはありません。

ad

スポンサーリンク

長いお別れ【映画感想】岸辺の旅(2015)

物理学に、ホール(正孔 / せいこう)という考え方がある。 整然と並んだ電子の列で、そのうちのひとつ

no image
横山秀夫の警察小説にハマる

いまさらですが、横山秀夫さんの小説にハマっています。 サクッと気楽に読める小説を、と手元にあった『深

終わるまでが戦争です【映画】日本のいちばん長い日(2015)

降伏か、本土決戦か__。

迷路荘の惨劇 (横溝正史)【読書】

角川文庫・金田一耕助ファイルの8冊目『迷路荘の惨劇』を読みました。子どものころハマった金田一を、1年

ゼッタイ押すなよ!【映画】人生スイッチ (2014)

押したら、さいご。

  • ランキングに参加しています。当ブログの順位は以下から確認できます。

    にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ

    ブログランキングならblogram track feed コタノト!



  • follow us in feedly