人気作家の平凡な日常【読書】3652 (伊坂幸太郎)

      2015/07/14

伊坂のマル秘!

3652 伊坂幸太郎

『3652 伊坂幸太郎エッセイ集』を読みました。大好きな作家、伊坂幸太郎さんが、デビューから15年間で書き綴ってきた「小説以外」をまとめたものです。

もともとはデビュー10周年に単行本としてまとめられたもので、10年の日数 (365日 × 10年。うるう日が2回) が、本のタイトルになっています。

で、今年は伊坂さんのデビュー15周年だそうで、5年分の文章を追加して文庫化されたのが、本書です。

特にこれといって変わった体験が書かれているわけでもないのですが、読みはじめたらやっぱり面白くて、100ページほど読んだあたりで「これは一気にモリモリ読んでしまいそうだな、けどそれは何だかもったいないな」という気持ちになって、以降は少しずつ、チビチビと味わうように読みました笑。

小説家の日常、というだけで十分変わっているともいえますが、だいたいは「こんな本を読んだ」とか「今こんな小説を書いている」とか、そんなはなしがほとんどです。いたって平凡な作家の日常なんですが、僕の場合、伊坂さんの「小説以外」の文章を読む機会って、それこそ今までは小説の「あとがき」くらいしかなかったので、とても新鮮な気持ちで読むことができました。

出不精だったり、読書を旅ととらえていたり (読書は精神的な旅なので、それで満たされてしまって、実際の旅にはあまり行かない) 、映画をたくさん観ていたり、といったあたりは、ぼくもわりと似たような感じなので、勝手に親近感を抱いて、嬉しくてひとりニヤニヤしてしまいました (小説の趣味は、けっこう違いましたが) 。

小説 (映画) とは何だろう、みたいなはなしも、決して偉そうではない距離感で語られていて、ずっと変わらない部分と、年を重ねることでじんわり変化している部分とがあって、そんな比較ができるのも、エッセイ「集」の面白いところだなあと思ったりしました (比較、というほど厳密なものでもないですが、雑多な文章でも、まとめることで「文脈」のようなものが生まれているのが、面白かったです) 。

一番感動したのは、本文ではない脚注 (これは文庫版オリジナル、なのかな?) に書かれていた「駄洒落は啓蒙活動」という発想です笑。駄洒落に対する反応とあわせて神がかっていて、目からウロコでした。

映画や小説の感想 / 解説 (あるいは「お祈り」) も、たまに書かれているのですが、ぼくもこのブログでそういう感想のようなものを書いている身としては、参考になる部分が非常に多かったです。

感想 / 解説文に限らず、どんな文章でも、気取らず、偉ぶらず、取り繕わず、独り善がりになることなく、平易な文章で、正直にしっかりと書く、ということは大事だなあと、改めて感じました。実際にやろうとすると、かなり難しいことなのですが笑。

創作の進めかた、みたいなものが垣間見えるのも楽しかったです。すでに読んだ小説は、また読み直したくなりましたし、まだ読んでいない小説は、ますます楽しみになりました。

そしてただ楽しみに作品を待つだけではなく、ぼく自身も何か創作をしてみたくなるような、そんな刺激にも満ち溢れたエッセイでした。エッセイって、そもそもそういう刺激を与えてくれるものなのかもしれません。

伊坂さんの初期のころの作品は、あらかた読んだのですが、最近の作品は「買って積読」というものがけっこうあります (ごめんなさい笑) 。何だか読んでしまうのがもったいなくて、とっておいたらそのままになっていた、みたいな本が何冊かあるんですよね笑。それこそもったいないので、これを機に本棚から引っ張り出してきました。

伊坂さんの小説を読んだら、またこのエッセイ集に戻ってきて、その読んだ小説を書いていた時期のエッセイを読む。そんな楽しみかたもできるかな、と思ったりしました。

一度通読したあとも、手近に置いておいて、ときおりパラパラと読み返したい、そんな一冊です。

おわり。


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作品情報

伊坂幸太郎著『3652 伊坂幸太郎エッセイ集』。2015年新潮文庫 (2010年新潮社) 刊。446ページ。

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