ディス (イズ) コミュニケーション【映画】きみはいい子 (2015)

      2015/06/28

抱きしめられたい。子どもだって。おとなだって。

きみはいい子 呉美保

『きみはいい子』の試写会へ行ってきました。

幼児虐待や学級崩壊といった、「子ども」がテーマの社会問題を描いた、群像劇です (詳しいあらすじは、[公式ページ] や [シネマトゥデイ] あたりを参照ください) 。

観るまえから、これは重いテーマだなあと思ってはいましたが、いざ観てみたら、自分でも驚くほど感動してしまいました。子ども (の映画) って、ちょっとズルい (そりゃ誰だって、泣いちゃいますよね笑) とつねづね思っているのですが、それにしてもここまで感動するとは!というほどに、クライマックスシーンでは、自分の内側から何やら突き上げてくるものを感じて、思わず「うわあ」と声を上げてしまいそうでした。

「泣く」というのとはちょっと違うんですよね。もちろん泣ける映画ではあって、今でも [予告編] を観ると、いろいろ思い出してウルッときてしまうくらいなんですが、実際にはもっと途轍もない、「感動」というよりは「衝撃」といってもいいくらいのものを、ガツンと食らったような感覚があります。映画 (映像) のチカラって、本当にすげえなあと、ただただ感じ入ってしまいました。

このおはなしに、小説の原作があることが信じられません。言葉を超越した描写がとにかく素晴らしくて、それが原作の文章では、どのように表現されているのか、逆に気になってしまうほどでした (と言いながら、未だに読んでいないのですが笑) 。

ポスターにも書かれているキャッチコピー「抱きしめられたい。子どもだって。大人だって。」が、本作のすべてを表しています。良いコピーです。

そして、このコピーをストレートに体現しているのが、雅美 (尾野真千子さん) のママ友、陽子を演じた池脇千鶴さんです。誰よりもその存在に説得力があって、実は闇も抱えていて、もう何だか言葉にならないほど、すごすぎました。重いテーマの中で、唯一の救いといっていいキャラクタです。

その池脇さんを際立たせているのが、対照的な役柄を演じた尾野真千子さん。池脇さんに負けず劣らず、素晴らしかったです。子どもに手を上げてしまい、罪悪感に苦しむ役どころですが、その、子を叱るシーンの迫力といったら!画面越しに自分が叱られているようで、思わずすくみ上がってしまいました。

ママ友たちに混じって、子どもたちを見つめるときの、あの神経質そうな、場の空気を気にしすぎているような、ほかの親子と比べてしまうような、何ともいえない表情も、とても印象的でした。ちなみに上映後の舞台挨拶では、尾野さんご自身の、あっけらかんとしたキャラクタが役柄とあまりにかけ離れていて、このひと天才かよ、と余計に驚いてしまいました笑。

本作は、重いテーマなのに暖かさにも満ち溢れていて、観終わったあとに何やら希望を貰えるあたりも、本当に素晴らしい映画だなあと感じました。岡野 (高良健吾さん) の姉 (内田慈さん) が言うセリフが、とりわけ印象深いです。

「わたしが子どもに優しくすれば、子どもも他人に優しくしてくれる。優しい子に育つ。子どもを可愛がれば、世界が平和になる」

ペイ・フォワードですね。子どもも大人も、ホントはみんないい子。そんな性善説的な考えかたが、清々しいです。

姉のこのセリフを受けて、岡野が提案する「宿題」。その「回答」のシーンも映画ならではで、うちひしがれました。突然ふわっと、タッチがドキュメンタリーのように切り替わる感覚が、何とも言えません。あまり経験したことのない、不思議な心地よさがありました。

本作を観て、コミュニケーションて言葉だけじゃないんだな、ということを、つくづく感じました。

よく「コミュニケーション能力」などといわれますが (おぞましい言葉です) 、それは、明るく陽気に振る舞うだとか、言葉巧みにおしゃべりを展開するだとか、そんなことでは決してない、ということが、本作を観ると本当によくわかります。

表情、仕草、ボディタッチ、すべてコミュニケーションです。あるいはこれらは、言葉が生まれる以前からあるはずですから、コミュニケーションの原点、と言っていいかもしれません。現代人は、言葉に頼りすぎているなあと、反省させられます。

本作は、「抱きしめる」という、言葉を越えた、シンプルかつもっとも強力なコミュニケーションがいかに大切かと言うことを、これ以上ない説得力で気づかせてくれる、素晴らしい映画です。

観終わったあと、必ず誰かを抱きしめたくなる、そんな一本。

おわり。

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作品情報

『きみはいい子』。2015年アークエンタテインメントほか。呉美保監督。121分。

主演は高良健吾。共演に尾野真千子、池脇千鶴、喜多道枝、高橋和也、富田靖子、黒川芽以、内田慈ほか。6月27日公開。

 -2010年代の映画 , ,

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