楽園に殺人は存在しない【映画】チャイルド44 (2015)

   

真実は、歪められる。犯罪も、愛さえも。

チャイルド44 トムハーディ

『チャイルド44 森に消えた子供たち (Child 44) 』[公式ページ] の試写会に行ってきました。

1950年代のソ連を舞台にしたサスペンス・ミステリです (詳しいあらすじは、[シネマトゥデイ] や [予告編] を参照ください) 。原作は2009年度の「このミステリーがすごい!」海外編第1位に輝いた傑作なんだとか (未読です。というよりは、映画公開で、はじめてその存在を知りました) 。

たしかに映画を観ていて、本で読んだほうがずっと面白いんだろうなあと感じました笑。謎が複合的で、スパイ小説の緊張感と、猟奇殺人の謎と、主人公夫婦の愛のゆくえが、見事に絡み合った素晴らしいストーリーなんですが、2時間ちょっとの映画では、どうしても駆け足になってしまいます。もうちょっと、じっくり楽しみたかったなあ、という気がしないでもないです。

観終わったあとだと、ああ、あのシーンにはそういう意味が込められていたのか!と分かってナットクするというか、ひとつのシーンに二重の意味が込められていたりして、なかなか巧くできているなあ!ということに気づいて驚くんですが、観ている途中だと、はなしがどこへ向かっているのか分からなさすぎて、少々混乱しました。そういう意味では、あらすじを理解した上で、もう一度観たい映画ではあります。

それと、あらゆる謎 (というか、悪事?) の根源が、結局のところ「ソ連だから」という理由で片づけられているのも、何だかなあという気がしました。

すべての「犯罪」は、資本主義による精神の堕落が原因だから、理想そのものであるソ連の社会主義国家には、犯罪なんてあり得ない!楽園に殺人は存在しないんだ!という設定は、なかなか面白いんですけどね……。とりあえずこの作者 (というか、西側諸国?) は、ソ連のこと大っキライなんだな、ということだけは、よくわかりました笑。ぼくは途中から「これはソ連にとてもよく似た架空国家のおはなしなんだな」と、頭の中で勝手に設定を置き換えて、半ばSF的な感覚で楽しんでいました (まあ、本作に限らずフィクションって何でもそうなんですけど) 。

それでもやっぱり、この手の過去を掘り下げていく系の犯罪捜査は、胸が躍ります (好きなんです) 。連続だと思われていなかった「点」の犯罪を、遡って調べることで、「線」に繋げていく。

ネステロフ将軍 (ゲイリー・オールドマン) が地下の資料室で、地図にピンを差していくシーンが良いですね。資料を繰っているだけなのにワクワクする感覚には、『ドラゴン・タトゥーの女』と似た悦びがあります。

そのゲイリー・オールドマンを含めて、すべてのキャラクタに深みがあったのも、良かったです。ストーリーが複雑なせいか、キャラクタの心情も複雑で、かれらの佇まいを見ているだけでも、十分楽しめました。

何といっても、主役のトム・ハーディ!素晴らしいです。カッコイイ、というのとはちょっと違うんですが、どこかセクシーで、愛嬌もあって、魅力的でした (ちなみに、まともに観たのは本作がはじめてでした) 。声が良いですね。ロシア訛り風の喋りかたが、実によくハマっていました。

奥さん役のノオミ・ラパスも存在感抜群で、この夫婦の「対決」は、見ごたえ十分でした。肝心の謎解きでも、もうちょっと活躍してほしかったなあ。

それと、鬱蒼とした画の質感は、物語の空気感と実によくマッチしていてました。重苦しい雰囲気が心地いいです。

純粋にストーリーを楽しむなら、やはり原作を読むに越したことはないですが (てぼくは読んでないんですけど笑) 、キャラクタだったり佇まいだったり雰囲気だったり、映画には映画のよさがあって、それなりに楽しめたように思います。映画って、やっぱりあらすじはどーでもいいんですね。

暗く重い映像が、魅惑的な深みを演出してくれる一本。梅雨どきにぴったりの映画です。

おわり。

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作品情報

『チャイルド44 森に消えた子供たち (Child 44) 』。2015年アメリカ。ダニエル・エスピノーサ監督。137分。

リドリー・スコット製作。主演はトム・ハーディ。共演にゲイリー・オールドマン、ノオミ・ラパス、ジョエル・キナマン、ヴァンサン・カッセルほか。7月3日公開。

 -2010年代の映画 ,

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