回想のシャーロック・ホームズ (コナン・ドイル)【読書】

      2015/07/09

宿敵モリアーティー教授登場!第2短篇集。

回想のシャーロックホームズ

『回想のシャーロック・ホームズ』を読みました。ホームズシリーズの4冊目、短編では2冊目にあたります。

訳書によっては「思い出の〜」あるいは「〜の回想 (思い出) 」など、さまざまなタイトルで出版されているのですが、これらのタイトルだと”Memories (メモリーズ) “と勘違いしてしまいそうですね。原題は”Memoirs (メモワール) “。「回想録」という意味です。なので、「シャーロック・ホームズ回想録」あたりが一番しっくりくるような気もします。

とまあ、邦題はさまざまですが、中身はまさに「回想録」と呼ぶにふさわしい物語がつまっています。以下、目次です。

  • 〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪 (Silver Blaze)
  • 黄色い顔 (The Yellow Face)
  • 株式仲買店員 (The Stockbroker’s Clerk)
  • 〈グロリア・スコット〉号の悲劇 (The Gloria Scott)
  • マズグレーヴ家の儀式書 (The Musgrave Ritual)
  • ライゲートの大地主 (The Reigate Squire)
  • 背の曲がった男 (The Crooked Man)
  • 寄留患者 (The Resident Patient)
  • ギリシア語通訳 (The Greek Interpreter)
  • 海軍条約事件 (The Naval Treaty)
  • 最後の事件 (The Final Problem)

以上11篇 (原題の”The Adventure of” は省略) 。

ホームズ物語は、相棒ワトスンが書いた記録、とゆう体裁をとっています。この形式は本作でも踏襲されていますが、中には、ワトスンがホームズからはなしを聞いただけ、という事件もいくつか含まれています。ホームズがワトスンと出会う以前に経験した事件を、「思い出ばなし」として聞かせる、といった形式で、「〈グロリア・スコット〉号の悲劇」や「マズグレーヴ家の儀式書」がそれにあたります。物語の物語、といった趣きが新鮮ですね。

全体的にアイデアが枯渇したのか、トリック自体は以前にも出てきたような事件ものもたくさん混ざっていました。「株式仲買店員」は、「赤毛連盟」のアップデート版みたいです。

解説を読むと、このころのドイルはホームズ物語をやめたがっていたようで、わりとやっつけ仕事っぽいノリで書いていたんだそうです。挙げ句の果てには、「もう書かない!」と宣言するかのように、「最後の事件」でホームズを死なせてしまっています。

その「最後の事件」では、宿敵モリアーティ教授が初登場するんですが、背景説明がだいぶやっつけというか、伏線も何もあったもんじゃなくて、唐突に登場して終わる、といった雰囲気で、イマイチ入り込めませんでした。まあ、オチが有名すぎるってのもありますけど。

でもこれ、リアルタイムで連載を読んでいたら、かなり印象違ったんだろうなあとも思います。何しろ突然すぎる最期ですからね。今読むとむしろ、どんだけ書きたくなかったんだって話です笑。現代の我々は、のちに復活することを知ってしまっているせいか、それほど驚けませんでした。

アイデアの枯渇、などと書きましたが、事件の種類は実にさまざまで、飽きずに読むことができます。小説としては読みやすくなっているとも感じました。けどそれは、訳の問題もあるのかもしれません (毎回、異なる出版社・訳者で読んで、違いを楽しんでいます) 。創元推理文庫の旧版・阿部知二訳 (『緋色の研究』[感想] ) は、キライじゃないけどちょっと古典的すぎましたし (本自体が古かったので、単純に字が小さくて読みにくかった、てのもあります) 、河出文庫の小林司&東山あかね訳 (『四つの署名』[感想] と『シャーロックホームズの冒険』[感想] ) は、逆に現代的すぎて、ちょっと鼻につく感じでした (それと注釈も、ホームズ初心者のぼくには重すぎでした) 。

今回の、創元推理文庫新版・深町眞理子訳は、両者の中間、て感じで、かなーり読みやすかったです。

ミステリとして面白かったのは、「〈シルバーブレーズ〉号の失踪」と「海軍条約事件」。特に「〈シルバーブレーズ〉〜」は、競馬が題材になっているのもよかったです。まあ、競馬のルール的には、だいぶヤケクソなんですが笑。

「ライゲートの大地主」も良いですね。それにホームズが療養先で事件に遭遇する、という設定が好きです。

「黄色い顔」「背の曲がった男」「寄留患者」は、ホラー色が強い作品。特に「黄色い顔」は、依頼人からのはなしを聞くだけで、ホームズはほとんど何もしないんですが (とゆうか、珍しく間違える) 、物語自体は『思い出のマーニー』をホラーテイストにしたような内容で、面白かったです。

「ギリシャ語通訳」は、ホームズの実兄マイクロフト・ホームズが初登場するおはなし。三谷版人形劇の影響で、何となく仲が悪いのかと思ってましたが、意外と仲良しで、そんな両者の掛け合い (と、戸惑うワトスン) も楽しかったです。

やっぱりホームズは短編が面白いですね。60ページくらいで、コンパクトにまとまっていて、サクッと終わる構成が、実に鮮やかです。とまあ、順番的に次は長編『バスカヴィル家の犬』を読むんですが笑。

おわり。

作品情報

アーサー・コナン・ドイル著『回想のシャーロック・ホームズ (The Memoirs of Sherlock Holmes) 』読了。2010年創元推理文庫刊 (1893年原著初版) 。深町眞理子訳。465ページ。

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 -小説

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