ゼッタイ押すなよ!【映画】人生スイッチ (2014)

   

押したら、さいご。

人生スイッチ

『人生スイッチ (Relatos Salvajes / Wild Tales) 』の試写会に行ってきました。

「キレる」をテーマに、6つのおなはしがオムニバス形式で展開する、ちょっと変わった映画です (詳しい情報は、[公式ページ] や [シネマトゥデイ] 、あるいは [予告編] などを参照ください) 。

ぼくはそれぞれのおはなしが、最後つながるんだと勝手に想像しながら観ていたのですが、そういうことではなくて、ひとつひとつが独立した、短編形式の映画でした。まあ、何でも繋げりゃいいってもんでもないですよね笑。

6つのおはなしに共通するテーマは、「キレる」。原題を直訳すると「野生の物語」で、これには「理性が切れる瞬間」みたいな意味合いが込められていそうです。日々の憤りが、些細なきっかけで大爆発。そんなわかりやすい展開が、映画を見やすくしています。

「コント」のようなスタイルで、けれども映像やプロットはやっぱり「映画」で、似たようなものがありそうでなかった、ちょっと独特な雰囲気が何とも新鮮な作品でした。面白かった!

日本でもお笑い芸人のかたが映画に出たり映画を撮ったり、なんてことがよくありますが、どうせならこういう映画撮ったらいいのになあ。コントっぽい映画、あるにはありますけど、作りはコント寄りでチープな反面、プロットは映画的で、ヘンに間延びしてしまうんですよね。それを逆にしたらいいのか!てのを、この映画は教えてくれています。豪勢な作り込みで、何気ない情景を複数、描いていく。

あるいは日本では、「コント」そのものが発達しすぎていて、逆にこの手の映画は作りにくいのかもしれません。そういうのやりたいなら、映画にする必要ないじゃん、みたいな感覚です。

古い邦画、たとえば小津の映画なんかを観ていると、情景のみをひたすら撮っていて、そこに人間の自然なおかしみが描かれていたりして、何だかコントみたいだなあ、と思ったことがあります。本作はまさに、その南米版といった趣きです。

そんなラテンのノリとも関係があるのか、テンポがいいのも実に心地よかったです。2時間に6つのおはなし、なのでひとつがだいたい20分くらい。前置きなくいきなりはじまって、ノンストップで進んで、サッと終わる。で、すぐ次!て感じで、どうということのない、ほとんどすじなんてないような、しょうむない情景ばかりがどんどん展開して、飽きません。

登場人物は特に成長するわけでもなく、むしろ後退していくし、これといった教訓もない。あとにもほとんど残らない。けれども観ているあいだはサイコーにおかしくて面白い。コメディとしてはこれ以上ないくらい、カンペキです。素晴らしい!

ブラック・コメディというか、バッド・エンドっぽい結末のおはなしばかりなのに、観ていてなぜかスカッとするのも、良かったです。ぼくは下品な笑いってちょっと苦手なんですが、本作はさほど不快には感じませんでした。はなしの短さがいいのか、「成長しない」ってのが効いてるのか、あるいは映画全体を包んでいる、南米特有の明るさが、品の悪さをうまく覆い隠しているのか。いずれにしても不思議です。

映像のセンスもぼく好みで、それが何気に一番効いてるような気もします。やっぱり映画って、おはなしは二の次なんだなあ。

役者さんにほとんどなじみがないせいか、キャラクタの役割がすぐには掴めなくて、先の展開を読みづらいのも、本作の場合は効果的でした。

ちなみに、6つのおはなしのタイトルは、順に「おかえし」「おもてなし」「エンスト」「ヒーローになるために」「愚息」「HAPPY WEDDING」。で、ぼくがいちばん好きなのは「おかえし」です。ありえないのに、妙にナットクできてしまう雰囲気がサイコーでした (まあ、どのおはなしもそうなんだけど笑) 。

怒りのスイッチの先にある、予測不能の笑撃が素晴らしい一本。

おわり。

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作品情報

『人生スイッチ (Relatos Salvajes / Wild Tales) 』。2014年アルゼンチン / スペイン。ダミアン・ジフロン監督。122分。

ペドロ・アルモドバル製作。出演はリカルド・ダリン、ダリオ・グランディネッティほか。7月25日公開。

 -2010年代の映画 ,

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