フライト (2012)【映画】

      2014/12/02

英雄<ヒーロー>か、犯罪者か?

映画フライト

デンゼル・ワシントン主演の映画『フライト』を観てきました。

デンゼルはけっこう好きな俳優さんです。ただし「好き度合」みたいなことを言うとあくまで「まあまあ」くらいで、「彼の主演作はゼッタイ観たい」てほどではありません。

でも何だかんだいって観ちゃうし、けっこう満足できるのがデンゼルクオリティかなと思います。

本作もそんな感じで、最初はスルーしようかと思ってたんですが、来日PRとか見てたら何か面白そうて気になってきたので、観に行ってきました。

ストーリー&予告編

ストーリーはこんな感じです。

フロリダ州オーランド発、アトランタ行きの旅客機が飛行中に原因不明のトラブルに見舞われ、高度3万フィートから急降下を始める。機長のウィトカー (デンゼル・ワシントン) はとっさの判断で奇跡的な緊急着陸に成功。多くの人命を救い、一夜にして国民的英雄となる。しかし、ウィトカーの血液中からアルコールが検出されたことから、ある疑惑が浮上し……。

via: フライト : 作品情報 – 映画.com

よくできた設定で、何これ実話?て感じですが、フィクションです。あ、でも「背面飛行」で緊急着陸、てのは実際にあったことを元にしてるみたい。あんなんホントにできるんだスゲ。

予告編はこちら。

ロバート・ゼメキス監督作品

監督がロバート・ゼメキス、てのはエンド・クレジットで知りました。観る前に知ってたらちょっと印象違ってたかなあ。

ロバート・ゼメキス – Wikipedia

予告編や冒頭のアクションの雰囲気から、何となくサスペンスっぽい展開を想像していた、というかそういうのを期待したからこそ観に行ったわけですが、それとはちょっと違う感じでした。

もっと人間ドラマっぽいとゆうか、登場人物の心理描写とかがメインの映画です。

人間ドラマな感じがうまい監督さんなので、あーなるほどなあと、観終わった後一人納得してしまいました。

息子の名前は?

冒頭の緊急着陸のシーンが圧巻です。このシーンだけでも映画館で観てよかったなあと思えるくらいです。

助かるのかとかはだいたいわかってるんですけど、それでも手に汗握ります。比喩とかではなくホントに手汗凄かったです。観てて疲れました。飛行機にはしばらく乗りたくないですね。

背面飛行を実行する直前のシーンが特に気に入りました。

副操縦士と手順を確認して、さあこれからやるぞ、てときに、手伝ってもらうチーフアテンダントに対してウィトカー機長はこんなことを訊ねます。

「息子の名前は?」

何でこんな時にそんなことを?聞かれた方はもちろん、観客である僕も不思議に思っていると、

「ボイスレコーダーに声が残る」

最期になるかもしれないからメッセージ残しとけるよ、てことなんですね。

この一言で、テンパってるメンバーを落ち着かせると同時に、さあやるぞ、という気にさせています。

さらに観客である僕たちに対しては、絶体絶命ともいえる状況下でもこのパイロットにはまだそういうことを言う余裕がある、それくらい落ち着いていられる、かなり熟練したパイロットだということを印象づけることに成功しています。

しかもこれにはちょっとした後日談的なシーンもあって…。

何気ないシーンですが、いろんなことを端的に表現できている素晴らしいシーンだなあと思います。

デンゼルの強さと弱さ

有能なパイロットである反面、酒とドラッグに溺れる主人公ウィトカー。

デンゼルは最近こういう、ちょっとダメなところがある役ばかりだなあと思います。

仕事はできるけどどこか欠点があったり、あるいはちょっとした弱さから魔がさして道を踏み外してしまったり。決して善人ではないけれど、かといって悪者にもなりきれない。

これってよくよく考えると、すっごい普通の人間です。みんなそうだよと。とても人間臭い。

デンゼルがあまりに自然に演じちゃってるもんだから今まで気づかなかったけど、そういう人間臭い部分を内面まで演じきるのって、とっても難しいことなんじゃないかと思います。

こういう複雑な役をこなせる俳優ってハリウッドにもあんまりいないのかも。

つーか普通に酔っ払ってく感じとか、ホントに飲んでんのかと思うくらいです。オスカーノミネートも納得。

脇役も豪華だよ

え?と思うくらいに脇役陣も超豪華です。

ドン・チードルは、彼が出てるから観に行ったといってもいいくらい好きな俳優さんです。なのでもう少し見せ場があったらよかったかなあとも思います。でも存在感はやっぱりあるなあ。

存在感で言えばメリッサ・レオも、ラストの方にチョロっと出てくるだけだけどすごかったなあ。すっごい贅沢な配役。

あとケリー・ライリーはよく知らなかったですが、あの幸薄そうで何か儚い感じはけっこう好きです。

でもでも脇役の中でダントツに光っていたのはジョン・グッドマン。大好きです。『アルゴ』でも似たような役回りでしたが、それに輪をかけて今回のキャラクターはテキトーかつクセがあります。

ある意味背面飛行よりも絶体絶命のピンチを救うシーンは最高でした。

酒・タバコ・ドラッグ

本作はアルコールやドラッグへの依存がある種のキーワードになっています。

なのでお酒はバンバン飲みますし、ドラッグもやります。

アメリカ映画ではアルコール依存とその怖さを描いた映画というのを、それそのものが主題ではないにしても比較的よく見かける印象があります。断酒会のシーンとか、TVドラマだけど『ER』なんかでもよく出てきたよなあ。

それとこの映画ではお酒なんか比じゃないくらいにタバコも吸いまくるんですが、タバコに対してはアメリカはそれほどうるさくありませんね。日本だと最近はタバコを吸うシーンを観ることはほとんどなくなったので、何だかちょっと新鮮です。

逆に日本ではお酒に対してはそれほどうるさくないというか、まあ交通事故とか起こさなければいいんじゃない?くらいの認識かなと思います。

このあたりの認識の違いはどこからきてるのかわからないですが、ちょっと興味深いなあと思います。

自分に嘘はつけない

大勢の命を救ったパイロットが、実はそのとき酔っぱらっていて…。彼は果たして罪に問われるべきか否か?

なんだかマイケル・サンデル先生の講義テーマで出てきそうな話です。

主人公ウィトカー機長がどう裁かれたかはこの映画の主題ではないですが、とはいっても結末でもあるのでここには書けませんが、僕が見ていて思ったのは、「やっぱり人間自分自身に嘘はつけねえよなあ」てことです。

誰かを貶めるような嘘は別としても、誰も傷つかないような嘘とか、あるいは小さな見栄みたいな嘘だったら他人に対してはいくらでもついてもいいと思います。時には嘘が優しさになることだってあるでしょう。

でも自分の本心に対して嘘をつくことはとても苦しいことです。人間そういう自分に対する嘘はつけないんじゃないか。僕は常々そう思っています。

そんなことを改めて考えさせられる、という意味では、人間ドラマを越えてちょっと哲学的ですらあります。

 

 

期待してたのとはちょっと違う感じではあったものの、これはこれで全然アリというか、いろいろと考えさせられる映画でした。

 -2010年代の映画 , ,

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