カッコウの卵は誰のもの (東野圭吾)【読書】

      2014/07/17

私が育てた娘は、妻が他人から盗んだ子なのか?

カッコウの卵は誰のもの

東野圭吾著『カッコウの卵は誰のもの』読了。2013年光文社文庫 (2010年光文社) 刊。392ページ。

あらすじ: 往年のトップスキーヤー緋田宏昌は、妻の死を機に驚くべきことを知る。一人娘の風美は彼の実の娘ではなかったのだ。苦悩しつつも愛情を注いだ娘は、彼をも凌ぐスキーヤーに成長した。そんな二人の前に才能と遺伝子の関係を研究する科学者が現れる。彼への協力を拒みつつ、娘の出生の秘密を探ろうとする緋田。そんな中、風美の大会出場を妨害する脅迫者が現れる__。

via: Amazon内容紹介

タイトルがけっこうキャッチーなので期待してたんですが、うーん、微妙な感じだったなあ。

でもスラスラと読めてしまうのはさすが東野作品。相変わらずの安定感です。

テーマ多すぎ

「ウインタースポーツ」や「遺伝子」といったキーワードは東野さんの得意分野ですね。

そこに「親子の絆」とか「才能って何だ」みたいな重めのテーマも加わってきます。でもテーマの割に内容は驚くほど軽いです。事件も現在と過去でいろいろと起こるし、ちょっと盛りこみ過ぎなんじゃないかなあ。

登場人物の「誰」が「何」を「どこまで」知っているのか、てのがけっこう複雑で、僕はそのあたりを理解するのを途中で放棄してしまいました。

誰かの推測なのか事実なのかってのがあやふやな部分もあるし、しかもそーゆう複雑さがあんまり面白さに繋がってないんですよね。

しかも後半の展開はかなり慌ただしくて、僕はちょっとついていけませんでした。あまりに唐突すぎる感じ。

事件の真相とかはほどほどに、ドラマ部分をメインにしてくれたらもうちょっと読み応えあったかなあ。いやそうゆうの東野作品に求めるのは無理か。

遺伝子とスポーツ

スポーツの優劣に関わる遺伝子の研究って、実際のところどれくらい進んでるんでしょう。

アメリカには実際にこの手のビジネスを展開してる企業もあるみたいですが、まだまだ難しい部分も多そうです。

トップアスリートの遺伝子を解析して、能力を説明するってのは (こじつけっぽいけど) ある程度できそうな気がします。でも未知の人材を発掘するってのはまだ無理なんじゃないかな。

あと「黒人選手の身体能力 (が優れている)」みたいな文章が出てきますが、これって明らかな人種差別なんですよね。

人種は関係ないんじゃないかな。それだったら黒人選手を連れてきてスキーヤーに仕立て上げたほうが手っ取り早いだろって話ですからね。そっちのほうインパクトも強そうですし。

まあ結局この小説自体が「遺伝子なんてものでは何にも決まらないよ」ってゆう、ある種のアンチテーゼになってるってことなのかもしれませんが。

カッコウの托卵

「 (略) カッコウっていう鳥は、ほかの種類の鳥の巣に自分の卵を産むそうだ。モズとかホオジロとかのさ。そうして、雛を育てさせる。知ってるかい?」

「聞いたことがあります。托卵というやつですね」 (略)

「才能の遺伝ってのはさ、いわばカッコウの卵みたいなもんだと思う。本人の知らないうちに、こっそりと潜まされているわけだ。(略) それを本人がありがたがるかどうかはわからない」

via: P366

うーん、わかったようなわからないような。繋がるような繋がらないような。なんかうまいこといったように見えて、実はちょっとズレてるような気もします。

でも良いタイトルですね。心に引っかかります。

研究者は誤解されやすい

キャラクターもイマイチ深みがなくて、テーマの割に軽いのはそのせいかなとも思うのですが、遺伝子の研究者「柚木」のキャラクターはなかなか良かったと思います。

シニカルで嫌なヤツなんですが、物語が進むと印象が変わる感じ。

研究者ってだいたいシニカルなんですよね。その上シャイで口下手でやたらと理屈っぽいので、誤解されやすいです。まあ不器用なんですよね。

僕自身もあんまり器用ではないので、客観的に見て「自分嫌なヤツだなあ」と思ったりもします。「もっとうまくできたよなあ」と後悔することもしょっちゅうです。

そういうちょっと自分と似たとこのあるキャラクターが活躍してくれると嬉しいです。

まとめ

ほとんど文句みたいになってしまいましたが、読みやすかったのはホントです。

何かイマイチなんじゃないかなあと思いながら読んでるのにグングン読み進められるって、かなりすごいことだと思います。途轍もない文章力。

まあそれなりに感動はできますが、驚くほど心に残らないです。この軽さはホントに素晴らしいなあ。あ、これ僕の中では褒め言葉です。

 -小説

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