読んでも楽しいバルセロナ【Sports Graphic Number 797】

      2014/02/14

みんな大好きバルセロナ。

特集は、総力特集FCバルセロナ バルサはなぜ、史上最強なのか。別冊なんかを除くと、本誌で一冊まるまるバルサ特集、てのは初めてだそうな。

Contents

NumberWebで目次を見ることができます。

記事のいくつかは実際に読むことが出来ます。気になった記事があったらupされてるかチェックしてみましょう。

<総力特集FCバルセロナ>バルサはなぜ、史上最強なのか。 – [Sports Graphic Number雑誌紹介] – 本誌雑誌 – Number Web – ナンバー

バルサと私

最初にはっきり言ってしまうと、僕はバルサがあまり好きではない。

みんな好きだから、いまさら僕が好きにならなくてもいいだろう、みたいな天の邪鬼的な感じもあるし、スカパーとかWOWOWとかに入っていない僕の環境では、そもそもバルサの試合を観る機会があまりないというのもある。観なけりゃ好きになりようがない。

それでも、現在世界最高にして最強のフットボールに興味がないかと言われると、全然そんなことはなくて、観たいし年に何試合かは実際に観ている。

僕が観るバルサは必然的に大一番であることがほとんどで、一番最近観たのはクラブW杯決勝だったし、その前は確かCL決勝だった。

実際に観るバルサは、やっぱり素晴らしい。みんなが魅せられて好きになるのも分かるなあ。僕だってそこまでひねくれてるわけじゃない。

でもそんな気分は試合開始から15分ほどしか続かない。

強すぎるのだ、今のバルサは。

南米王者のサントスも、サッカーの母国を代表するマンUも、全く歯が立たない。

サッカーが、相手のあるボールゲームである以上、試合展開が一方的になってしまえばその面白さは半減する。

このエッセイがそんな僕の気持ちを的確に代弁していた。何だ、みんなおんなじように感じているのか。

[スペシャルエッセイ]文●万城目学
バルセロナ・チューインガム説

しかもそのつまんない感じをバルサのせいにはできないから、アンチとしては余計に腹立たしいんだよなあ。

ちなみに少し脱線するが、この万城目学さんの作品はまだ読んだことはないが、前々から気になっていた作家さんだ。この文章を読んで、一層彼の小説を読んでみたくなった。

サッカーは観て楽しいスポーツ

最近の『Number』はサッカーばっかりなので、サッカーの記事はちょっと飽き飽きするほど読んでいる。

試合も週3試合くらいのペースでは観ている。

そこで思うのは、サッカーはやっぱり観る方が圧倒的に面白いよなあ、てこと。

文章は「サッカーの見方」を教えてくれたりして、それはそれで読んでいて十分楽しい。でもその面白さが試合そのものに優る、なんてことはあまりない。

一時期流行った「システム論」なんかは、手っ取り早く「通」ぽくなれるし結構語れるんだけど、机上の空論ぽさが拭えない。なんか嘘くさいのだ。

「観る>読む」なのは、サッカーの試合がほとんど止まらないことと関係してるかな、と思う。

こちらに考える時間を与えてくれないのだ。いや、こちらだけではない。ときに選手自身のゲーム回顧が、ものすごい後付けな感じに思えることがあったりする。

例えば野球なんかだと、動いていない時間の方が長いから、「考えながら観る」ことができる。だから「江夏の21球」のような、試合そのものを越えちゃうような読み物も生まれうるのかな、なんて。

どっちが良いとか言いたいのではなくて、サッカーは「感じるスポーツ」なんだと思う。だから読み物には不向きなのだ。

でも、バルサだけはここでも例外なのである。バルサは読んでも面白い。なぜだろうか?

バルセロナの正義の話をしよう

バルサにはヨハン・クライフの時代から脈々と受け継がれる「哲学」がある。

ざっくり言ってしまうと、プレーして楽しい、観て美しいサッカー。それは時に勝利よりも優先されるほど、とにかく徹底されている。

どの分野でも、哲学を語るのは楽しい。

その是非を論じることができるからだ。そしてその問いには「答え」がない。論じることで答えを探さないといけない。マイケル・サンデル教授の白熱教室のように。

現在のバルサでその哲学を体現しているのがこの人。タイトルにもそのキーワードがちゃんと入っている。

[歴史を変える指揮官に迫る]文●豊福晋
グアルディオラ「崇拝と超然と哲学」

ちなみにちょっと補足しておくと、この記事、内容自体にさほどの新鮮味はなかったが、以下の理由でとにかく貴重。

昨年末、グアルディオラに直接インタビューする機会に恵まれた。
話ができると聞いたときは、にわかに信じられなかった。彼は独占インタビューというものを一切受け付けないからだ。選手時代から顔見知りの記者にも、影響力を持つTV局にも、いかなるメディアに対しても例外はない。しかし、今回はFIFA絡みのインタビューで、クラブとしても断るわけにはいかなかったのだという。

さて、つまりこういうことだ。

グアルディオラとは哲学者であり、さらに言うならば、バルサという教義を掲げる宗教家のような存在なのだ。

そしてこう続く。

多くの選手はそれに心酔し、そうでない者はやがてチームを去る。ロナウジーニョやデコ、エトー、そしてイブラヒモビッチがそうしてきたように。

では心酔する選手とは?

それはカンテラ(下部組織)育ちの選手たちだ。

シャビ、イニエスタ、メッシ、・・・。今期からは出戻りもセスクも加わった。今のバルサは彼らが主翼を担っている。

考えてみれば当たり前なのだ。子供の頃から、こういうサッカーが楽しい、というのを徹底的に植え付けられている。それを世界トップレベルでも実現できて、さらに勝利という結果もついてくるんだから、心酔しないわけがない。

でもそうでない選手たちにとってはさぞ息苦しいことだろう。押し付けられるように要求されても、心の底から理解するのは難しい。哲学とはそういうものだ。

美しさ、楽しさという「哲学」に加えて、「勝利」というスポーツにおける絶対的な「答え」も提示していながら、僕がどうもバルサを好きになれない理由はこの辺りあるのかな、なんて思った。

「哲学」から生まれる、ある種の閉塞感。

なんかどっかで似たようなのあったよなあと考えてみたら、去年までの落合ドラゴンズだった。

オレ流も「流」てついてるように、一種の「哲学」だったよなあ。

勝利を徹底的に求める感じは、僕は本来好きなんだけど、何か息苦しい。

すんなり受け止めるには強烈すぎる。だから一歩引いてしまう。

それに、そんな「哲学」にどっぷり浸かっちゃうのが怖い、みたいなところもある。

そんな理由で、イマイチ好きになりきれない、そんな気がした。

それでも恋するバルセロナ

でもやっぱり、と思う。

僕だって美しいサッカーに酔いたいし、もっともっと、より深く知りたいと思う。

ここからは少々散文的だが、グッときた記事を引用しながら、バルサの「魅力」を紐解いていく。

[我がバルサが目指すもの]インタビュー●ハビエル・ミゲル / 文●横井伸幸
シャビ・エルナンデス
「相手を絶望させるサッカーを」

<我がバルサが目指すもの> シャビ・エルナンデス 「相手を絶望させるサッカーを」(1/3) – Number Web : ナンバー

「僕の人生のうち10年間は耳にたこができるほど聞かされてきた。『お前は小さすぎる。その身体のサイズで中盤でプレイするのは無理だ』って。
ところがいまはどう?みんなイニエスタと僕をミッドフィールダーの手本にしてるじゃないか。
(略)
僕がフィジカル面で恵まれていないのは事実だ。だからこそ素早く頭を回転させる。その速さは、今日のサッカーでは、身体的な速さより重要だ。考えるスピードが僕と同じレベルで、さらにパワーもあったのは過去にたった1人、ジネディーヌ・ジダンしかいないね」

おんなじチビとしては嬉しい言葉。これこそチビの生きる道。そんでもって、ジダンてやぱスゲ。

[完全解剖・世界No.1プレイヤー]文●木崎伸也
遠藤保仁、本田圭祐、風間八宏の言葉で読み解く
リオネル・メッシ

味方がボールを持ったとき、普通の感覚の選手なら空いているスペースに走り込んで、パスを受けようとしただろう。だが、メッシはスッと立ち止まった。そのことで相手からの距離を取ることに成功したのである。
「もしスペースに走り込んでいたら、相手に捕まっていたでしょうね。バルセロナの場合、『メッシは止まっていても、マークを外している』っていう認識がしっかりあるから、パスが出てくる。普通、止まっている味方にはなかなかパスが出せないけれども、メッシの技量を知っているからとにかくボールを当てようとする。アルゼンチンでメッシがうまくいかないのは、こういう感覚がチームに共有されていないことが大きな原因だと思います」

僕は「バルサのメッシ」より「アルゼンチンのメッシ」を観ることの方が多い。そこでのメッシは噂に聞くほどでもない。ダメダメなのだ。

ふむふむ、なるほどこういう理由があったのか。すんごい納得。

[ペップに見出された男]文●横井伸幸
セルヒオ・ブスケッツ
「最も目立たないMFの存在理由」

「バロンドール賞をもらうようなことは絶対にないだろう。みんなサッカーをわかっていないからね。沢山ゴールを決めるわけでもないし、テレビにも映らないし。でも試合中、あれほど戦術的なプレーができる選手を僕は他に知らない。あれだけ巧く、フィジカル面の強さも兼ね備えている選手は他にいない」

チームメイトのシャビから最大の賛辞。こういう縁の下の力持ち的な選手が好き。

[データで読み解く]データ提供●庄司悟 / 文●木崎伸也
バルサの「常識」はサッカーの「非常識」

この手のデータ解析は大好きです。

[無敵王者への挑戦状]文●小宮良之
マルセロ・ビエルサ
「戦術博士が授けた究極のバルサ対策」

徹底した「哲学」に対抗できるのは、やはり強烈な「哲学」を持った変人だけなのかも。この人は以前から好き。今一番観たいチーム。

[歴代名将を徹底比較]文●田邊雅之
最新のバルサは最高のバルサなのか
ペップ / ライカールト / ファンハール / クライフ

サッカーの概念を解体し続けるグアルディオラは、議論の座標軸をもずらした。
従来、バルサの強さはフォーメーションやシステム論の立場から評されることが多かったが、近頃ではボールの止め方と蹴り方、体の入れ方、相手の重心や目線、そしてタイミングの外し方といった「ミクロな視点」で分析されるようになってきた。
とは言え、マクロのシステム論とミクロの技術論は車輪の両輪でもある。ミクロの技術論だけで事足りるのであれば、チーム事情と戦況、対戦相手に応じて、グアルディオラはシステムを変更したりしない。
むしろここで強調されるべきは、グアルディオラが論争の土俵を様変わりさせたという事実だろう。それほどのインパクトと革新性をバルサは持っている。

ミクロとマクロ。パラダイムシフト。うーん、科学っぽい。

まとめ

好きだろうがそうじゃなかろうが、いろいろ語れてしまうバルサ。やっぱりもっとゲーム観たいなあ。

今リーガではレアル・マドリーに勝ち点で大きく離されてるらしい。これで勝てないことがある意味がわからないヨ。

でも苦しんでる方が可愛げがあっていいなあとも思う。

美しいものは、儚いほうが良い。徹底的に美学を追究して、その果てに華々しく散ってくれると何か好きになれるかも。

バルサを苦しめるような、そしてどのチームでもある程度マネできるような、そんな強力な方法論、はやく出てこないかなあ。

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ロシア人論が『坂の上の雲』っぽくて面白かった。

セリエAは好きなリーグなのでやっぱり残念。

本田△はケガ治ったのかな?早く代表でも観たい。

 -雑誌

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