ザ・マスター (2012)【映画052】

      2014/12/02

男はただ、信じようとした。

ザマスター

『ザ・マスター (The Master)』鑑賞。2012年アメリカ。ポール・トーマス・アンダーソン監督。143分。

本作との出会い

昨年度 (2012年度) のアカデミー賞授賞式を観てて面白そうだなーと思った本作。俳優部門にやたらとノミネートされてて、中でも大好きなフィリップ・シーモア・ホフマンがいかにも胡散臭い新興宗教の教祖を演じてるってとこにかなりそそられました。

ポール・トーマス・アンダーソン監督作品を見るのは久しぶりですが、『マグノリア』は好きな映画ですし期待できます。

てわけで劇場公開時 (2013年3月) に映画館で観てきたんですが、感想エントリ書きそびれてました。DVDリリースされるみたいなんで、このタイミングに便乗してちょっと振り返ってみます。

作品情報

あらすじ

第2次世界大戦後のアメリカ。アルコール依存の元海軍兵士のフレディ (ホアキン・フェニックス) は、「ザ・コーズ」という宗教団体の教祖ドッド (フィリップ・シーモア・ホフマン) に出会う。やがてフレディはドッドを信頼し、ドッドもフレディに一目置くように。そんな中、ドッドの妻・ペギー (エイミー・アダムス) は暴力的なフレディを追放するよう夫に進言し……。

via: シネマトゥデイ

時代とか新興宗教とかはけっこう好きな舞台設定。でもストーリーはあってないようなもんなんじゃないかなって気がします。

あくまで「場」として最低限必要な「筋」だけで、下手に追いかけるとあんまり楽しめないんじゃないかな。本作の本質はそこじゃないとゆうか。映画でストーリーを気にするなってのは難しいんですが……。

キャスト

主演はホアキン・フェニックス。何だかあんまり縁がなくて、意識してまともに観たのは本作がはじめてです。いろんなとこですげーすげー言われてるのがよくわかりました。命を燃やしているかのような鬼気迫る演技はちょっと怖いくらいです。

フィリップ・シーモア・ホフマンは大好きな俳優さん。何だろ、あの独特の気持ち悪さは本作でも健在です。もちろん褒め言葉笑。胡散臭い感じが絶妙なんですよねー。

あとは奥さんのエイミー・アダムスも怖いです。一番まともな感覚を持ってそうに見えて、実は何気に一番怖いんじゃないかてゆう。

いずれも素晴らしいキャスト。この3人のお芝居をただただ観てるだけでも十分楽しめてしまいます。

予告編

予告編はこんな感じ。

グッときたポイント

息詰る演技対決

上のキャスト紹介のとこでもちょっと書きましたけど、「演技対決」ともいうべきホアキンとホフマンの掛け合いがもう見事としかいいようがないほどに最大の見どころです。何しろ本作はこの2人の「関係性」を描いた映画ですからね。

船の中で行われる「プロセシング」 (カウンセリングみたいなやつ) はまさに対決というにふさわしい内容。ホアキンはホントに瞬きしてないみたいで、観てるこっちまで眼が痛くなってきます。

二人揃って留置場の牢屋に入れられるシーンも圧巻の迫力。お芝居とはいえ、あんなに感情を剥き出しにすることって人生のうちに何度あるだろうか。いや、逆上してるから憶えてないだけで、案外しょっちゅうやってたりして。そう考えると余計に怖ろしい。

何だろ、ストーリーとかどうでもよくなっちゃうくらいに役者さんの演技そのものに惹き込まれた映画って、はじめてかもしれません。凄すぎます。

わかりにくさと不快感

ストーリーはぶっちゃけよくわからない部分も多かったです。あんまり親切じゃないとゆうか、ほとんど説明してくれませんから。

公式サイトの「観る前にご一読ください」にもあるように、主人公 (とゆうか俳優) 2人の関係性が主題ですからストーリーは二の次なのかもしれません。

僕も観てる途中で「あーこれはおはなし自体に大した意味はないんじゃないかな」と思ってからは、そのへんあんまりこだわらずに演技や映像の美しさを意識して観てた気がします。何だろ、「理解する」てゆう雰囲気の映画じゃないってゆうか。

それと、観ていてハッピーな気分になれる感じは全くなくて、どっちかというとむしろとても不愉快な気持ちにさせられる作品でもあります。

心の奥のほうを直になでられるような感覚で、しかもその質感はざらざらとかぬるぬるとか、心地いいものでは決してない感じ。

観ていてものすごく不安になる感覚もあります。未知の強烈な何かと出会ったときの不安感。でも描かれる人間の暗い部分はよく知っているものだからこそ、不快感を抱くんですけど。

何かそうゆうのって普通は触れたくないんだけど、なぜか気になって惹き込まれてしまいます。恐いもの見たさ、て感情は近いのかなあ。たしかに一部分ではあるけれど、それともちょっと違う感じ。危ないってわかってるのに近づいてっちゃう感覚。何てゆうんだろ。

人間てそういうホントに些細なところでも矛盾してるし、めちゃめちゃ複雑です。そういう複雑さを描いてる感じが本作の良さだし、僕がこの映画好きな理由もこの辺りにあるような気がします。めちゃめちゃ居心地悪い心地よさ、みたいな。

豪華客船に乗り込むシーン

映像が驚くほど綺麗なのも本作の好きなところ。やっぱり映画は映像です。人間の暗部を鮮やかな映像で描く、なるほどなあ、アンダーソン監督が「21世紀のキューブリック」て言われるのも納得です。

中でもホアキンが豪華客船に乗り込むシーンが一番のお気に入りです。

落ちぶれて寂しく歩くホアキンの背中と、甲板上で繰り広げられる華やかなパーティーのコントラスト、それをカメラがよったり引いたりしながらずーっと1カットで繋げててめっちゃセンスいい映像、ちょーカツコイイです。

他にも、畑を走って逃げるシーンとか、クライマックスといえるバイクのシーンとか。画的にはめちゃめちゃ爽快なはずなのに、それとは真逆の恐ろしいほどの息苦しさが伝わっています。もう疾走感とかまるでないです。何なんだこれ。

さいごに

DVDがリリースされるみたいですが、また観たいという気持ちと、ちょっと疲れるからどうしようかな、て気持ちが半々です。いずれにしてもあまり疲れていない、気分が充実してるときに観たほうがよさそうです。

わかりやすさ全開の夏休み映画 (つか最近はどの作品もそんなのばっかりですが) にちょっと飽きたなって人は、本作のわかりにくさと、わけもなくザワザワする居心地の悪さを味わってみるのもいいかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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