夜は短し歩けよ乙女 (森見登美彦)【読書】

      2014/07/17

キュートな乙女と一途な先輩にどうか、幸ありますように!

夜は短し歩けよ乙女

森見登美彦著『夜は短し歩けよ乙女』読了。2008年角川文庫 (2006年角川書店) 刊。320ページ。

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

via: Amazon内容紹介

森見さんの小説を読むのは『ペンギン・ハイウェイ』に次いで2作目。インターネッツでちょっと調べてみたところでは、本作のほうが、より「森見ワールド」な感じみたい (とゆうか『ペンギン〜』がちょっと異質?) 。

僕はどちらかとゆうと恋愛ものもファンタジーも苦手なのだけれど、本作はけっこう楽しく読むことができた。この人は超現実の混ぜ方が本当に巧い。独特の文体も最初はちょっと戸惑ったけど、リズムが良いのですぐ慣れるし、慣れてしまえば返って心地いい。

薄汚い青春の最中に立ちすくむ大学生が、じつは世界で一番清らかであるという真実はつねに無視される。

via: location 1290

登場人物たちはだいたいがダメ学生ってのが何より素晴らしい。もう何とゆうか大学生なのに勉強してる素振りを微塵も感じさせなくて、「授業に出た」みたいな記述すらない。かつては僕自身もそうだったよなあとゆう「ダメ学生あるある」的な感じが面白い。

文体とか「ダメ自慢」ぽいところとか、どことなく太宰っぽいなあと思って調べたら、森見さん自身がけっこうな太宰ファン (選集やパロディも出版されている) らしくて、なるほどなあと思った。

僕も太宰の作品には何だかわからないけど惹かれてハマったことがあるので、そのあたりも本作にグッときた理由なのかもしれない。

「それで、あの子とは何か進展あったの?」 「着実に外堀は埋めている」 「外堀埋めすぎだろ? いつまで埋める気だ。林檎の木を植えて、小屋でも建てて住むつもりか?」 「石橋を叩きすぎて打ち壊すぐらいの慎重さが必要だからな」 「違うね。君は、埋め立てた外堀で暢気に暮らしてるのが好きなのさ。本丸へ突入して、撃退されるのが恐いからね」

via: location 1790

本作は4つのお話からなっていて、それぞれはほぼ独立して楽しむことができる。連作短編といった趣き。

こーゆう作りの小説は大好きで、しかもそれぞれのお話が春夏秋冬になってるところも素晴らしく良い。伊坂幸太郎さんの『砂漠』もそうだったけど、大学生と四季って何かすごい相性いいんだよなあ。

つかほとんど独立して読めるって、「先輩」の外堀を埋める作業がいかに進展してないかってのがよくわかる笑。あんまり意味ないんだよなあ外堀埋めるのって。撃退されるのが恐い、て指摘が的を射すぎててドキッとする。

「今までの人生で読んできた本をすべて順に本棚にならべてみたい。誰かがそう書いていたのを読んだことがある。そういう気持ちが君にはあるか」

via: location 1080

お酒に本に文化祭に恋。それぞれのお話のテーマとゆうか、中心となる「小道具」は、どれも学生のうちにそれなりに齧っておくべきものだなあと思った。

もちろん学生のうちは何よりも勉学に励むべきだし (自分が不真面目で、後になってもっとちゃんとやっとけばよかったと少しだけ後悔したことがあるから余計にそう思う) 、「勉強よりも大事なことが云々」てのはそれこそ詭弁だと僕は思っている (そいえば「詭弁論部」てのも出てきたな笑) 。

それでもお酒とか恋愛とかを全く経験しないのもどうかと思うし、バカバカしくもオモチロイことは若いうちに済ませといたほうがコストもかからなくていい。大人になってから初めてってなると、いろいろ面倒くさいからなあ。

お酒の嗜み方が楽しい表題作もよかったんだけど、やっぱり大好きな本をテーマにした『深海魚たち』が4つのなかでは一番グッときた。本との距離感、みたいな描写がいろいろとステキで、いちいち納得してしまった。

樋口さんと言えばつねに古ぼけた浴衣に身を包み「職業は天狗」と自称する人です。大学入学以来私が出会った人たちを、よく分からない順に東大路に北から南へならべれば、樋口さんはその不思議行列の最北端に立つでしょう。こうして学園祭へ顔を出すということは、天狗とは世を忍ぶ仮の姿、その正体は大学生なのでしょうか。

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奇想天外な登場人物が本作最大の魅力といってもいいだろう。一番笑ったのは「パンツ総番長」で間違いないが、最も魅力的だったのは「樋口さん」。

僕自身が彼のような一見ちゃらんぽらんな生き方に憧れてるとゆうか、目指してるからかもしれない。

「所詮は夢だろ」と水を差す野暮な人は犬に喰われるがよい。夢か現実か、それは本質的な問題ではない。たしかに私の才能の宝箱は払底気味であった、だがしかし、唯一残されていた最大の能力を私は忘れていたのだ──妄想と現実をごっちゃにするという才能を。

via: location 3604

先に「太宰っぽい」なんて書いたけど、太宰の作品はどれも暗くて何となくねっとりとまとわりつくような不愉快さを孕んでいる。でも森見さんの作品はもっと陽性で明るくて、読んでるこちらも何だかフワフワと夢の中にいるような気分に浸れてしまう。どっちも結局は、「いやダメだろ」とゆう気がしないでもないのが。

「京都の大学生」が主役の作品はまだまだけっこうあるみたいで気になっている。ジワジワとだが確実に「森見ワールド」にハマりつつある。

おわり。こーた ( @cota1Q82) でした。

『夜は短し歩けよ乙女』の作品情報

森見さんの作品はkindleで大体手に入るし、電子書籍との相性もいい感じがしている。

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