そして父になる (2013)【映画058】

      2014/10/31

6年間育てた息子は、他人の子でした。

そして父になる

『そして父になる』鑑賞。2013年フジテレビジョン他。是枝裕和監督。120分。

申し分のない学歴や仕事、良き家庭を、自分の力で勝ち取ってきた良多(福山雅治)。順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明する。血縁か、これまで過ごしてきた時間かという葛藤の中で、それぞれの家族が苦悩し……。

via: シネマトゥデイ

哲学の思考実験のようなテーマである。まるでマイケル・サンデル教授の白熱教室で取り上げられるようなお話で、アメリカ的な感じもちょっとする。そういえば『クレイマー・クレイマー』なんかとも通じるところがあるかもしれない。

子供を巡る主題の他にも、経済的な豊かさと精神的な幸福感との対比など、観ていて様々なテーマについて考えさせられる。

観る前はちょっと設定に無理があるんじゃないかなと思ってて、正直それほど期待せずに観にいったのだが、観はじめたらまるで気にならなかった。役者さんの演技はとっても自然だし、描きかたもちょー丁寧。

是枝監督は日常の風景を描くのがホントに巧い。ちょっとした会話や仕草がいちいち細かくて、「あるある!」て感じで思わずクスッてなっちゃう。樹木希林さんとかリリー・フランキーさんとか、自然なんだけど細かい。ストーリーはあんまり気にせず、そーゆう何気ない情景を楽しむ映画なんだと思う。

そいえば個人的には『凶悪』を観たばっかりだったから、リリーさんの抽き出しの多さにも驚いた。ちょっと恐いくらい真逆笑。ついでにゆうとピエール瀧さんが (ちょっとだけだけど) 出てきたときは思わず「凶悪じゃん!」てツッコミたくなった。以上余談。

説明的な描写やセリフがほとんどないところも好き。大事なことはあんまり言わないんだよね。現実もそうなんだよなあ。照れとかもあるし。最近の映画では何でもかんでもセリフにしちゃうけど、ホントに大事なときって人間何も言わないんだよね。

子供の心理描写は特に説明されない。複雑だし、言葉で表せるもんでもないからなあ。だからちゃんと観てないとわからないかもしれない。

タイトルでもわかるように、主に父の視点で描かれてるけど、返って母側の描写が際立っていたように思う。

良多の妻みどりを演じた尾野真千子さんが特に素晴らしい。なぜ気づかなかったのかとゆう悩み、現状に迷いながらも何とか受け入れて折り合いをつけようとする葛藤、などなど、見事に表現されていたと思う。

みどりとゆかり (真木よう子) がすぐに仲良くなったりとか、女性同士の会話のノリがすっごいリアルなのも面白い。つか真木よう子さんはホントにキュートだなあ。ウインクとかすごい。

男の僕からすると、やっぱ女はつえーなあ、て思うシーンがたくさんあった。

良多 (福山さん) はけっこう現実から目を背けようとしてるとゆうか、ちょっと一歩引いてるとゆうか。なんだかずっとそんな感じで、それがどう変わってくのか、てのがタイトルの意味で、その変化がじわじわくる感じは作り手と福山さんの巧さでもあるんだけど。

なんか自分で産んだわけでもないし、だから冷静でいられるんだろうけど、そのくせ「血」とかにこだわるのって確かに男だよなあとも思った。

女は血の繋がった子供を愛するのはもちろんなんだろうけど (現にみどりは琉晴を好きになってる自分に気づいて戸惑ったりしてる) 、そーゆうのは関係なく本能的に母性ってやつを持ってるんだなあと思う。ゆかりが言う「愛せますよもちろん」てのが全てを表しててすごい説得力。

良多は嫌なヤツだけど、僕も子供を持ったらこんな感じになっちゃうんじゃないかあ、とゆう気がした。ついでに言うと雄大 (リリーさん) が一見ふざけたことばっかり言ってるのは見栄とゆうか照れ隠しとゆうか。そーゆうところも自分と通じるところがあってわかるような気がした。

そうゆう男のダメなところが人間的な可笑しみとゆうか、喜劇っぽくて何だかとっても良いなあとも思った。

これは余談だけど、そいえば『ゴーイングマイホーム』(是枝監督のドラマ) で阿部寛さんが演じた主人公も「良多」じゃなかったって、と思って調べたら、『歩いても歩いても』 (未見) の主人公も「良多」で驚いた。是枝さんなりの何かこだわりでもあるんだろうか。

さいごに

「映画ってこうだよね」てのを思い出させてくれるとってもステキな作品。重いテーマなのにあったかい気分に浸れてめちゃめちゃ良かった。子供がいる人はもちろん、そうでない人も、父にも母にもおすすめ。

何か観にいった映画館の感じだと、福山さん効果なのか9割以上が女性のお客さんだったんで、ぜひ男子も観にいきましょう。

おわり。こーた ( @cota1Q82 ) でした。

『そして父になる』の作品情報

予告編はこちら (1分40秒ほどの動画) 。

ノベライズ版はこちら。映画は福山さんたち「野々宮家」中心で描かれてたけど、本ならもうひとつの家族「斎木家」側の視点も書かれてるんじゃないかなあと想像しているのだが、どうだろうか。そのうち読みたい。

最後まで読んでいただきありがとうございました。当ブログのランキングはこちらで確認できます。

にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ

 -2010年代の映画 , ,

ad

スポンサーリンク

  関連記事

ドラゴン・タトゥーの女 (2011)【映画】

誰がハリエットを殺した?

イコライザー (2014)【映画】勧善懲悪デンゼル・ワシントン!

19秒で世の不正を完全抹消する。

わが母の記 (2011)【映画】なぜ『しろばんば』を読まされたのか

たとえ忘れてしまっても、きっと愛だけが残る。

曇りのち晴れ【映画】アリスのままで (2014)

もうすぐ私は、すべてを忘れる。けれども愛した日々は、消えはしない。

テッド (2012)【映画028】

『テッド』鑑賞。徹底的にただただバカバカしい笑。そしてテッドがカワイイです。教訓めいたものは何もありません。最高!

メイジーの瞳 (2013)【映画091】

愛が何か見えているのは、きみの瞳だけ。

フルスロットル (2013)【映画】ノープランを凌駕する驚異の身体能力

身体能力【全開〈フルスロットル〉】で跳べ。究極の”ゼロG”アクション誕生!!

終戦のエンペラー (2012)【映画035】

『終戦のエンペラー』鑑賞。あんまり戦争映画っぽくない雰囲気でしたが、当時の日本人への敬意が感じられるなかなかの意欲作でした。

猿の惑星: 新世紀〈ライジング〉(2014)【映画】人間に似すぎた猿

ヒトの世紀が終わろうとしている。

キック・アス (2010)【映画094】残酷さとナンセンスのバランス

正義の心で、悪をKILL。

ad

スポンサーリンク

  Message

メールアドレスが公開されることはありません。

ad

スポンサーリンク

長いお別れ【映画感想】岸辺の旅(2015)

物理学に、ホール(正孔 / せいこう)という考え方がある。 整然と並んだ電子の列で、そのうちのひとつ

終わるまでが戦争です【映画】日本のいちばん長い日(2015)

降伏か、本土決戦か__。

迷路荘の惨劇 (横溝正史)【読書】

角川文庫・金田一耕助ファイルの8冊目『迷路荘の惨劇』を読みました。子どものころハマった金田一を、1年

ゼッタイ押すなよ!【映画】人生スイッチ (2014)

押したら、さいご。

マイベストグルメ!〜2015上半期〜

2015年の上半期に行ったお店の中から、特に美味しかった5店舗を選んでみました!

  • ランキングに参加しています。当ブログの順位は以下から確認できます。

    にほんブログ村 映画ブログ おすすめ映画へ

    ブログランキングならblogram track feed コタノト!



  • follow us in feedly