めまい (1958)【映画066】

      2014/10/31

死の気配を漂わせた美女と彼女に魅入られた男の皮肉な運命。

めまい

『めまい (Vertigo)』鑑賞。1958年アメリカ。アルフレッド・ヒッチコック監督。128分。

高所恐怖症の元警官が主人公のサスペンス・ロマンス (?)で、10年くらい前にも一度観た作品です。何だか細かいテクニック的なこと (めまいショットとか) は覚えてたんですが、ストーリーはすっかり忘れていたので、初見のように楽しく鑑賞できました。

タイトルがステキ

まずこの「めまい」ってタイトルがとってもステキじゃありませんか。センス良いよなあ。

ソール・バスのオープニング・タイトルもそれに輪をかけて素晴らしくて、50年以上昔に作られたとはとても思えないほど現代的、めちゃめちゃカッコイイです。『サイコ』のタイトルもハイセンスだったけど、本作はより怪しげな雰囲気で、内容ともぴったりマッチしててとにかくちょーすげーです。最初だけでも観て欲しい。

裏窓のような会話

オープニングの屋上を走るシーンはちょっとだけ『マトリックス』のオープニングと重なる感じがしますね。僕も高所恐怖症なので、主人公の気持ち、とってもよくわかります。

その高所恐怖症の主人公”スコティ”を演じるのはジェームズ・スチュワート。ヒッチコックのお気に入りですね。ザ・良いひと。最初の”事件”がきっかけで、警官を辞めて今はフラフラして暮らしています。

で、暇だから友達のミッジの家に遊びに来てる。このあたりは『裏窓』っぽくて良いですね。つかスチュワートは何だかいつも最初はどっかケガしてんなあ笑。『裏窓』でも脚のギプスがもうすぐ外れるとか言ってたし笑。

このシーンの会話はかなりステキで、それでいて人物や状況を自然と説明していくのはさすがです。ヒッチコック映画最大の魅力、うまいよなあ。

ミッジを演じているのはバーバラ・ベル・ゲネスとゆう女優さん。カワイらしいメガネっ娘、なかなかイイ感じです。元恋人という微妙な関係で、会話にもちょっとした緊張感があったりして、そーゆうところもステキです。

高所恐怖症

このミッジとの会話シーンで出てくる、高所恐怖症を克服しよう、てシーンが最高です。

「徐々に目線を上げていけば克服できるんじゃないか」みたいなことをスコティが言い出して、椅子の上に立ったり、脚立を一段ずつ昇ってみたり。

けど最上段の三段目でやっぱりくらくら「めまい」がしちゃってダメってゆう。どんだけ笑。

スチュワートは見るからにめちゃくちゃ巨人で、たしか190cm以上あったと思うんですが、そもそもそんなデカイひとが高いとこ苦手ってところですでにちょっと笑えます。ヒッチコックはスチュワートのデカさとか良いひとっぽさをネタにしてる節があるからなあ。あの脚立、僕だったら一番上まで昇っても、目線はスチュワートより下なんじゃないかと思うんですよねー。

(2013/10/24追記: よくよく観直してみたら、脚立に乗ったことで窓の外が見えちゃってるんですね。勘違い。まあそれでも高所恐怖症過ぎなことに変わりはないですが。)

女性蔑視?

ミッジは画家兼デザイナーのような仕事をしています。ホントは絵を書きたいんだけど、食ってけないから下着のデザインもやってる、みたいなシーンが後のほうで出てくる。

ちなみに「絵画」はこの映画でけっこう重要な小道具ですね。ヒッチコックはこういった小道具を使うのも実に巧みです。

ヒッチコック映画に登場する女性たちって、手に職を持ってたりしてて、けっこうちゃんと自立してるよなあといつも思います。

『裏窓』のグレース・ケリーはちゃんとしたモデルだったし、『知りすぎていた男』のドリス・デイは有名な元歌手。ミッジも含めてみんなけっこうアクティブな性格ですし、男性よりも頼りになる場面もしばしば。

ヒッチコックの映画は多くの作品で女性が酷い目に遭うからか、「女性蔑視だ!」なんて言われることも多かったみたいですが、全然そんな風には思えないんだよなあ。性格や暮らしぶりはかなり現代的な女性像だし、酷い目に遭うのは性別関係ないとゆうか、悪いことした報い、みたいなところもあるからなあ。

昔の映画の女性って (今でもだけど) 、か弱い、守るべき存在なことが多いけど、そんな感じはあんまりないし、そーゆうほうがよっぽどおかしいと思うんだけどなあ。これって現代的な感覚なんだろうか。

キム・ノヴァク

旧友の実業家に「奥さんを尾行してほしい」と頼まれるスコティ。その奥さん = マデリンが映画のヒロインで、演じるのはキム・ノヴァク。美しいですねえ。いかにもヒッチコックが好みそうな顔、健康的な感じのするブロンド美女です。まあブロンドは染めてるらしいんですが。

「アーニーズ」とゆうレストランで初めて登場するんですが、ここは実在する有名なお店なんですかね?東京だったら何だろう、神楽坂の料亭とか?でも店名言われてもわかんないよなあ。

この初登場シーンはとても幻想的で、美しさを引き立たせてるような撮りかたをしてる感じがします。素人には技術的なことはわからんですが。

不思議な映像体験

キム・ノヴァクの登場シーン以外にも、全体的に撮影法にすっごいこだわってる感じがします。有名な「めまいショット」もそうですが、「あー変わった撮りかたしてて何か狙ってんだろうなあ」と思えるシーンがいたるところにあります。

素人なんで技術的なすごさや新しさ、その意図なんかは全然解説できないんですけど、その効果なのかすっごいフワフワした幻想的な雰囲気になってるんですよね全体的に。無意識に働きかけられているような、何だかとっても不思議な感覚を味わうことができる映像になっています。

わからない怖さ

ここまでストーリーはあえて明示してこなかったんですが、この映画はどこに向かってるのかわからない、とゆう展開もジワジワと不安な気持ちにさせてくれる効果を持っています。

これは『裏窓』や『サイコ』にも共通するところで、何が起こってるのかわからない、とゆうかしばらくは何も起こってないんですよね。なのにじわじわ怖いような気がしてくる。主人公自身の不安感と重なる部分もあるし、ヒッチコックはそーゆう恐怖の演出は本当にうますぎです。

わからない恐怖とストーリー的な怖さがフッとシンクロする瞬間が何度かあるんですよね。ゾッとします。

夢?

ある”出来事”がきっかけで、重度の鬱病をわずらってしまうスコティ。病院で廃人のようになってしまった姿が何とも哀しいです。そんなスコティを献身的に介護してくれるミッジ。ホント、いいコだなあ。

このときの「スコティの頭の中」みたいなシーンがあまりにも恐ろしいです。子供のころ観たらトラウマになってたかも。

怖っ、と思ったのも束の間、画面は晴れ晴れとしたサンフランシスコの街並に切り替わって、そこからまたしれっと物語が再開します。

何かまだちょっとおかしいのかなと思うような仕草や目つきではあるものの、普通に街をうろつくスコティ。回復はやくね?つかこれ現実?ひょっとして夢的な?

とゆう雰囲気で後半はずーっと進みます。画的にもちょっと現実離れした感覚がちょこちょこ出てくるし、やっぱりちょっと幻想的。観終わった後ちょっと調べてみたところ、この”夢説”を唱えてるひとは有名な批評家にもいるみたい。実際はどうなんだろうなあ。

結末まで観るとこの解釈はちょっと怪しいかなとも思いますし、何とも言えないところです。そーゆう風にも思えるように作ったってところなのかなあ。

何かヒッチコックはプロットやテクニックに重きを置くとゆうか、面白くなるんなら途中の細かい部分は大胆に捨てるようなところもありますし、まあゾクゾクするならどっちでもいいよ、みたいな考えかたなのかなあ。

あっさりと終わるラストもヒッチコック映画らしくて好きです。人生でも何でも、重要なのは結果ではなくプロセス。途中を楽しまないと、てことですね。人生だって、「死」とゆう結末はみんな同じ。映画の結末なんて何でもいいんです。

さいごに

2012年発表の評論家が選ぶ史上最高の映画トップ50てランキングで、堂々1位に選ばれている本作。

前に観たときは何が凄いのかイマイチよくわからなかったんですが、今回は半分くらいわかったかなあとゆう感じです。観るたびに意味が繋がったり、注目するところや解釈がかわりそうで、何度でも楽しめる感じがします。あんまり古さも感じないですし。やっぱり名作なんだなあ。

ヒッチコックの一本目には向かないような気がするんで、『サイコ』や『鳥』なんか観て面白いなあと思ったかたはぜひ。

夢の中をさまよう人・こーた ( @cota1Q82 ) より

めまいの作品情報

『めまい (Vertigo)』。1958年アメリカ。アルフレッド・ヒッチコック監督。ジェームズ・スチュワート、キム・ノヴァク他。128分。

極度の高所恐怖症を理由に退職した警官が、旧友の頼みで彼の妻を尾行する事になる。奇異な行動を取る女に接近して行く内に二人は恋に落ちるが……。前半の謎めいたロマンスから後半の心理的なサスペンスまで、技巧を凝らした演出とバーナード・ハーマンの音楽で紡ぎ上げた極上のミステリー。

via: allcinema

Wikipediaはこちら → めまい (映画) – Wikipedia

iTunesはこちら → めまい Vertigo(字幕版) [1958]

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