恋文の技術 (森見登美彦)【読書】

      2014/07/17

書きたまえ、送りたまえ!

恋文の技術 森見登美彦

森見登美彦著『恋文の技術』読了。2011年ポプラ文庫 (2009年ポプラ社) 刊。343ページ。

京都の大学院から、遠く離れた実験所に飛ばされた男が一人。無聊を慰めるべく、文通修業と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。文中で友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れるが、本当に想いを届けたい相手への手紙は、いつまでも書けずにいるのだった。

via: Amazon内容紹介

森見登美彦さんの小説を読むのは『ペンギンハイウェイ』『夜は短し歩けよ乙女』に次いで3作目。そいえば初めて紙の本で読んだなあ。

本作は僕の中では今んところ森見さんのベスト、てまあ3作しか読んでないんですが。こんなに爆笑した小説ってちょっと記憶にないなあ、てほどに笑いながら楽しく読みました。

書簡体小説

手紙文のみで展開される「書簡体小説」とゆう形式をとっています。この手法で書かれた小説って、まともに読んだのは初めてかもしれません。こーゆう制約は大好きで、物語以前に構造そのものを楽しむことができます。

何となく往復書簡のような「やりとり」を想像してたのですが、登場するのは主人公・守田一郎の手紙のみです。彼ひとりがいろんなひとへ手紙を書きまくるとゆうスタイルで、片方からの手紙しか読んでいないのに、あたかもやりとりを見ているような錯覚に陥ってしまうのが何だかすげーです。じわじわと出来事の全貌が浮かび上がってくる感じも素晴らしいですね。

こーゆう形式で実際書くのって、すげーたいへんそうに思うのですが、どうゆう考えかたで書かれてるのかすごい気になります。

時系列に沿った出来事の表なんか作ってみると楽しそうです。つか書くときは実際に作ってるんじゃないかなあと想像するんですが、どうなんでしょうか?

他の書簡体小説もみんなこんな感じなのかなあ。独白調だったり日記調だったりってのは読んだことありますけど、やっぱり何人かの視点だったような気がするし、ひとりのひとがずーっと書いててしかも飽きない、てのはかなり珍しいような気がします。純文学とかだとありそうですけど、だいたい退屈なんですよね笑。

ひとりのキャラクターが相手に合わせて文体を変える、てのも、複数のキャラクターに語らせるより大変な気がするんですよね。だからこそ書きがいがある、てことになるのかなあ。

さらに本作は、単なる小さいエピソードの寄せ集めかと思っていたら、最終的にひとつに収束していくとゆうすんばらしい構成で、完全にやられてしまいました。

近くて遠い能登

能登が舞台、てのも何だか物悲しくていいですね。昔は流刑地だったところだよなあ、と思ってちょっと調べてみたら、平時忠 (「平家にあらずんば人にあらず」て言ったひと) なんかが流されてますね。

距離的には京都からそんなに遠くないと思うんですが、陸の孤島感はハンパないです。ホントに研究以外にすることがなさそうな土地。それこそ手紙書くぐらいしかやることないんじゃないかなあ。クラゲの研究をして、イルカに癒されて、とゆう情景が何とも美しいです。

何にもなさそうなのに、読んでるとちょっと行ってみたいとゆう気がしてくるから不思議です。

偏屈作家・森見登美彦先生

文通相手のひとりとして、森見さん本人が登場します。といってもかなりデフォルメされているようですが笑。

本人が登場する小説って好きなんですよね。伊坂幸太郎さんの『モダンタイムス』にも「井坂好太郎」とゆう作家のキャラクターが登場します。これこそ本人とは全然関係ないんですけど、やっぱり自分で遊んでる感覚があって楽しいです。

そいえば森見さんの好きな太宰 (僕も好き) の作品にも、自分をネタにした作家がいたるところに登場するよなあ。しかもみんなだいたいダメなヤツですよね。

作家が作家のキャラクターを作るときって、架空の人物考えるんなら自分の名前使えばいいや、みたいな感覚なのかなあ。

恋文の技術を獲得するには

守田が試行錯誤と修業の末に獲得する「恋文の技術」は、恋文に限らず良い文章を書くために必要な技術とも言えるんじゃないか、とゆう気がします。文章の技術どころか、何だか人生訓みたいなものまで含んでいてなかなか深いです。

やっぱり繰り返したくさんの文章を書かないとうまくならない、てことはまず間違いないように思います。それも確実に読み手がいるのが望ましいです。

読者はひとりでいいと思うんですが、とにかくだれかに自分の想いなり考えなりを伝える、てのはそれなりに難しいことで、「技術」がいることだと思います。

これは何も文章に限った話じゃなくって、話術だろうが何だろうが、実践しないといつまでたってもうまくなりません。ある日突然できるようになった、なんてことはありえないでしょう。コミュニケーションにも技術は必要です。

その訓練のために手紙を利用する、てのはなかなか理にかなっているのかもしれません。文通武者修業、侮れねーです笑。

さいごに

「おっぱい事件」や大塚女史との対決など、本作も森見ワールド満載ですが、いつもよりはちょっと控えめかな、とゆう印象です。

ペンギンを創造してしまう乙女とか、宙に浮かぶ仙人のようなキャラクタが登場しないからかもしれません。今んとこ僕史上最高の森見作品なのは、このファンタジー色が薄い、てところとも関係あるのかもしれません。

本作を読めば誰かに手紙を書きたくなること間違いなし。時期も時期だし、まずは軽めに来年の年賀状でも書いてみようかなあ。

万年筆無精・こーた ( @cota1Q82 ) でした。

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 -小説

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