代官山コールドケース (佐々木譲)【読書】

   

この街で夢を追いかけた少女の悲劇。闇に潜む真犯人を、追い詰める。

代官山コールドケース 佐々木譲

佐々木譲著『代官山コールドケース』読了。2013年文藝春秋刊。468ページ。

1995年、代官山・カフェ店員殺人事件。被疑者となったカメラマンは変死。2012年、川崎・女性殺人事件。代官山の遺留DNAの一つが現場で採取。「17年前の事件の真犯人を逃して、二度目の犯行を許してしまった、となると、警視庁の面目は丸つぶれだ」―。かくして警視庁・特命捜査対策室のエース・水戸部に密命が下された。「神奈川県警に先んじて、事件の真犯人を確保せよ!」好評「特命捜査対策室」シリーズ第二弾。

via: オビ / 裏表紙

大好きな街・代官山が舞台の警察小説、てことでほとんどタイトルだけで衝動買いしてしまった作品。語感もなかなかにステキなタイトルで、後ろに続く「コールドケース」とは「未解決事件」とゆう意味。「過去の事件をほじくり返す系ミステリ」も大好物な僕としては、かなりノリノリで読むことができました。

初佐々木譲

佐々木譲さんの小説を読むのは本作がはじめてです。警察小説で有名なのは知ってたので、前々から気になってた作家さんのひとり。ようやく読む機会を得たとゆう感じです。

かなり無機質な文章で、ところどころ誰がしゃべってんだかわからなくなったりもして、最初のほうはちょっと読みにくかったんですが、それも慣れてくれば気にならないです。何だか必要最小限のことしか書かれていない無駄のなさが、ロジカルな捜査手法とシンクロする感覚で、後半へと進むにしたがって加速する展開と相まって、最後のほうはかなり心地良く、ぐいぐい読み進めました。

随所に見え隠れするキャラクター

本作は主人公・水戸部裕が活躍する「特命捜査対策室」シリーズの第二弾、とゆう位置づけです。この手のシリーズものって、何となく順番通りに読みたいタイプなので、前作を知らない身としてはだいじょぶかなあと思ってたんですが、ほとんど気にせず読めました。

一部の人間関係とか、前作の事件に関する言及なんかはちょこっと出てくるものの、適当に読み流せるレベルですし、必要なところはちゃんと説明されています。

相棒となる女性刑事・朝香千津子がかなりカッコイイです。手際のよさが尋常じゃない。小道具の使いかたや提案することなんかは、刑事じゃない普通のひとでもけっこう参考になるんじゃないかなあなんて思ったり。この人は完全に初登場のキャラクターなのかなあ。何だか過去にいろいろあった人っぽくて、その辺あんまりちゃんと説明されないあたり気になります。

別の事件を追いながら捜査に協力してくれる時田も、サヴァン症候群のような特殊能力を持ってたりして面白いです。

全体的にキャラクターについての描写は少ないなあという印象があります。人となりが細かいのは科捜研の中島くらいかなあ。

あとは全体的に無味乾燥とゆうか、警察そのものが主人公、みたいなところがあって、だから警察小説なのか、なんて思ったりもしました。

淡々と捜査していく中で、随所に登場人物のキャラクタが垣間見えるあたりがなんだかものすごくリアルだなあと感じます。

実際の人間関係でも、特に仕事の付き合いだったりすると、どんな性格なのか、てのはなかなかわからないですからね。ちょっとしゃべっただけで、どんな人かわかるくらい自らの主張を発散しまくってる人なんて、実際にいたらウザいだけです。

普通はちょっとした言動からそのひとの本質が浮かび上がってくるものです。本作にはあんまり描かれないからこそのリアリティがあって、何だかじわじわと登場人物たちに親しみが湧いてくるから不思議です。これって狙ってるのかなあ。

警察怖い

殺人事件の事情聴取なんてもちろん受けたことないんであれですけど、少なくとも「警察って怖いなあ」と思ってしまうほどには、捜査手法や尋問のしかたなんかがかなりリアルに描かれていて、何とゆうか納得感みたいなものがあります。

仮説を立てて、証拠を集め、(犯人とゆう) 結論にたどり着く。手順の踏みかたが研究ぽくて好きなんですよね。ちなみにですが、科学捜査の研究者が主要なキャラクターとして登場するところも理系の人間としては嬉しいですね。

事件の背景である、冤罪やら隠蔽やら面子やらといった、闇の部分の恐ろしさはもちろんのこと、捜査対象者に対する尋問の手法や、刑事の心証形成とゆう思考過程などなど、正当な部分もかなり怖いです。

警察官の知り合いが以前に、「警察に喧嘩を売ってくるやつは、組織を挙げて叩き潰す」みたいなことを言っていたのを思い出します。

人間誰しもひとつやふたつのやましいことはあるわけで、そーゆう暗部を抉られるのはいやなものです。何だか事件とホントに関わりがなくても、いろいろと揺さぶられたら嘘の自白をしちゃうんじゃないかとさえ思えます。僕だったら耐えられないかもしんない。やっぱり悪いことはするもんじゃないなあ、こわいこわい。

Googleマップ最強

タイトルの通り、事件の舞台は代官山です。事件現場や捜査の経路など、「場所」についてかなり詳細な記述があって、実際にあった事件なのかと錯覚してしまうほどです。

僕はGoogleマップで地図を見ながら読んだのですが、この読みかたはホントに楽しくてオススメです。主人公の思考過程は、あたかも一緒に捜査しているような感覚を味わうことができて素晴らしいですが、地図を見ることでこの感覚はより一層増幅されるような気がします。

気になったら簡単に調べられるgoogleってホント便利だなあと思うんですが、どうせなら過去の地図も調べられたらもっと楽しいのになあなんて思ったりしました。

衛星写真やストリートビューなんかは難しいでしょうけど、過去の地図情報をもとに、年月指定して検索できたりとかしたら楽しいと思うんだけどなあ。それこそ古地図的なところまでカバーできてたらすげー楽しそう。て実用的かどうかは謎ですけど。

地図上だけだとなかなか距離感はつかめないんですが、僕の場合は何度か実際にも行ったことのある大好きな街ですし、記憶や想像でいろいろと補完できました。

東京人の特権めいたことをついでに言うと、「もっと広い視点での距離感がわかる」てのも、この手の小説読むときには大きいかなと思います。一旦警視庁へ寄って、また代官山へ戻ってくるのにどれくらいの時間がかかるのか、電車だったら何線を使うか、みたいなことは地図を見ただけではなかなかわからないですからね。

こうゆう距離感は翻訳ものだとまるでダメで、だからちょっと苦手だったりもします。『ミレニアム』シリーズみたいに細かい地図が載ってるとありがたいんですが。

タイトルに地名が入ってるんであれですけど、「代官山」とゆう土地に対する漠然としたイメージ、みたいなものがないと、今ひとつピンとこない作品かもしれません。渋谷の近く、おしゃれな街、程度でいいと思うんですけどね、このあたりは作中でもサラッと説明されているので。ただ、どこなのかも全然わからん、て感じだとあんまり入り込めないんじゃないかなとゆう気がしました。

僕なんかは代官山の過去の歴史に関してはあまり知らなかったので、けっこう勉強になったようなところもあります。好きな場所 (こと) について深く知るのは何でも楽しいですからね。

さいごに

本作を読んでからはまだ代官山行ってないんですよね。行ったらいろいろと巡りたいなあ。踏切なんかは地下化しちゃってなくなっちゃったんですよねそいえば。何気にけっこうな基点だったよな、てのが本作読んで改めてよくわかりました。

広いようで狭いような不思議な街だよなあとつくづく思います。坂による高低差がけっこう効いてるんじゃないかなあなんて思ったり。

でも実質2日間くらいの物語 (このスピード感も素晴らしい!) で、それくらいの日数でほとんど網羅できちゃうんですからやっぱり狭いんだろうなあ。

あと表紙の装丁にもあるように、 (アナログな) カメラがけっこう重要な小道具として登場するので、写真好きなひともかなり楽しめるんじゃないかなあとゆう気がします。

代官山とゆう街が好きだったらハマること間違いなし、オススメです。

代官山好きのミステリ好き・こーた ( @cota1Q82 ) でした。

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 -小説

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