ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 (スティーグ・ラーソン)【読書】

      2014/11/07

世界中に旋風を巻き起こした驚異のミステリ三部作、ついに完結!

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士 スティーグ・ラーソン

スティーグ・ラーソン著『ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士』読了。2011年ハヤカワ・ミステリ文庫 (2009年早川書房) 刊。ヘレンハルメ美穂・岩澤雅利訳。上583、下556ページ。

宿敵ザラチェンコと対決したリスベットは、相手に重傷を負わせるが、自らも瀕死の状態に陥った。だが、二人とも病院に送られ、一命を取りとめる。この事件は、ザラチェンコと深い関係を持つ闇の組織・公安警察特別分析班の存在と、その秘密活動が明るみに出る危険性をもたらした。危機感を募らせた元班長は班のメンバーを集め、秘密を守る計画を立案する。その中には、リスベットの口を封じる卑劣な方策も含まれていた。

via: 裏表紙 (上)

『3』のあらすじ自体が『2』のネタバレになっちゃってるほど、ガッツリつづきである。とゆうか、これまでの物語はこの『3』(の特に下巻) への壮大なネタふりだったのね、と言わんばかりの展開で、ただただ圧倒されて読んだ。

つづきではあるものの、趣きは全く別ものと言っていいくらいに異なっている。『2』はアクションやサスペンスの要素がメインだったけど、この『3』はスパイ小説で社会派の政治もので、さらには法廷サスペンスまで盛り込まれている。もう何だそれ、てくらい贅沢な構成。

思えば『1』は、金田一耕助を彷彿とさせるクラシカルな密室殺人ミステリだったし、何だかおんなじ作者が、しかも登場人物を変えずにこんだけいろんなジャンルの小説を書けるってことが素晴らしいとゆうか恐ろしい。

何を書いてもネタバレになっちゃいそうで、とりあえず面白いから読んどけ、みたいな元も子もないことを言いたくなっちゃうんだけど、気に入ったとこを以下にぽつぽつと書いていく。ネタバレとかはあんまり考えてないのであしからず。

狂卓の騎士 vs. “班”

タイトルにある「狂卓の騎士」とは、「リスベットを救う会」のこと (ちなみに眠れる女、てのがリスベットのことね) 。リスベット自身は誰かにわかってもらおうなんてこれっぽっちも思ってないし、そーゆうところがかっこいいのだが、深く関わった人間はみんなリスベットのことが好きになって、結果的に何だかたくさんの人に支てもらえてる、てのがすげー泣ける。

で、この「狂卓の騎士」と、公安警察の通称”班”とのスパイ合戦が最大の読みどころ。なんだけど、”班”がちょっと弱すぎるんだよなあ。「騎士」側が一枚も二枚も上手すぎて、ほとんど勝負になってない。前半の、ザラチェンコとグルベリの件まではかなりドキドキだったんだけど。

後半の興味は精神科医のテレボリアンとの対決。最近の流行りで言うと、どうやって「倍返し」してくれるのか、て気になってモリモリ読んだ。

読者目線だと、これでもかってくらいリスベットに「圧勝」してもらいたいわけで、そのためには序盤戦から大量リードしてないと難しい。そう考えると「勝負にならない」くらいでちょうどよかったのかもしれないなあ。

スウェーデン近代史

本作、というよりはシリーズ全体を通してだけど、スウェーデンの社会情勢や近代史についてかなり詳しく書かれている。

そのへん疎い、とゆうか全然知らない僕としてはめちゃめちゃ勉強になった。本作に限っていえば、”班”の活動が近代の政治史と密接に関わってるし、詳しくないのでどこまでホントなのかとかはよくわからないんだけど、何だか”実話”の混ぜかたが絶妙なんじゃないかなあ、と感じた。

スウェーデンをはじめとする北欧諸国って、主に社会福祉の面である種の理想として紹介されることが多くて、何だかすげー住みやすい国みたいなイメージがあったけど、それなりに問題は抱えてるんだなあ、てのが何となくわかんないなりに感じることができた。重厚感溢れる社会派小説が大好きな身としては、この辺りの凄まじいリアリティにただただ圧倒されてしまった。

今回も活躍する女性たち

女性の活躍はシリーズを通したある種のテーマで、本作でも登場する女性たちすべてに見せ場があって何とも痛快だった。

ミカエルの妹で弁護士のアニカの「倍返し」はこれでもかってほどスカッとする。エリカを巡るある”事件”では、”恋敵”だったはずのエリカとリスベットが手を組んだりしてニヤニヤできる。エリカとスサンヌの友情なんかはちょっと安っぽいものの、わかりやすくてホッとできる。

公安警察のモニカの件は、うーん、ちょっと余計だったかなあ。このシリーズでは珍しく何だか女性的だったし、ミカエル色男まわりの話を盛り上げる役どころだったってことなのかなあ。

それにしてもこの著者さんはいろんなタイプの女性たちを書き分けるのがホントに巧い。男性の僕から見たらどのキャラクタもみんな魅力的なんだけど、女性から見たらどうなんだろ。男女で好みが分かれそうな気もする。

さいごに

とりあえずは完結したものの、何だか地味に謎も残ってしまったこのシリーズ。かなり先まで続ける構想もあったみたいだし、その伏線と思われるような記述もちらほら (リスベットの妹とか) 。著者の早逝で読めなくなってしまったのが残念でならない。

けど重厚すぎて消化できなかったところもたくさんあるし、しばらくしたらまた読み直たいなあ。何だかけっこうずっと楽しめる感じの三部作、全部で6冊もあるからすんごい読み応えだし、ミステリファンなら外せないシリーズ。超絶オススメ、ぜひぜひ。

おわり。こーた ( @cota1Q82 ) でした。

kindleなら上下合体版がお得っぽい。

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