シャイン (1996)【映画074】
2014/10/31
誰があなたを輝かせるの。あなたは誰を輝かせるの。
『シャイン (Shine)』鑑賞。1996年オーストラリア。スコット・ヒックス監督。105分。
メルボルンに生まれたデイヴィッド (ノア・テイラー / ジェフリー・ラッシュ) は、厳格な父親の元、ピアニストになるべく英才教育を受けていた。天才少年と呼ばれた彼の元に、イギリスの王立音楽院に留学する話が持ち上がるが、父親がそれを許さなかったため、家を飛び出す形でロンドンに渡る。ロンドンでピアノに打ち込むデイヴィッドは、コンクールで難関であるラフマニノフの「ピアノ協奏曲第3番」に挑戦し、見事に弾いたものの、その後精神に異常をきたし始める。
via: Wikipedia
漫画家の浦沢直樹さんが「すごく調子がいいときに、これ以上踏み込んだらおれヤバイかも、と思う瞬間がある」みたいなことを、以前どこかで語っていた。
そこで突き抜けてしまわずに、いかにうまいこと抑えるかが良い作品を生み出すポイントらしい。「天才」なんて呼ばれ (かつ世間的にも評価されてい) る人たちは、異口同音に似たような発言をしている。
「天才と何とかは紙一重」なんてゆうけれど、その境目は文字通りの「境界線」を越えちゃうか踏みとどまれるかなのではないか。
で、本作はその一線を越えてしまった天才ピアニストの物語である。
天才の狂気
主人公デイヴィット・ヘルフゴットは実在、どころか存命のピアニスト、であるらしい。有名なんだろうか。あるいはこの映画で有名になったのだろうか。
僕は普段クラシックはほとんど聴かないし、「ラフマニノフ」という名前くらいはさすがに聞いたことあるけど、いつの時代の人でどんな曲が有名なのかとかはまるで分からない。
本作のストーリー上重要な位置を占める「ピアノ協奏曲第3番」てのも、何となく聴いたことあるかなあ、てくらい。
そんな音痴な僕でも、天才ピアニストが如何にして曲をわがものとするのか、みたいな過程がものすごっいよくわかるように作られている。若きデイヴィッドが練習に打ち込みやがて壊れてしまう一連のシーンは圧巻そのもの。ただただ圧倒される。
徹底的な楽譜の読み込みと反復練習で曲を体得し、その上で自身の解釈や感情、熱量などを載せていく。これって手順自体は何も天才に限った話じゃないよなあ。芸術に限らず普通の仕事とか勉強とかでも、何か新しいことを会得しようと思ったらこのやり方になるんじゃないだろうか。成長に王道なし。
自らを徹底的に追い込んだ先にある到達点がどこか、てのが天才と凡人の違い、てことになるわけで、しかもそのギリギリのところで踏みとどまれるかがちょー大事。
本作はそんな境界線近傍までは遠く及ばない凡人にも、あー天才が体験する境地ってこんな感じなのかなあ、て思えるくらいには生々しい風景を見せてくれる、とゆうところがとにかく素晴らしい。
小説っぽい映画
このブログでも何度か書いてるけれど、本作みたいな「戻る映画」が僕は好きだ。
オープニングからしばらくして回想に入って、その回想がずーっと続いて、いつの間にか回想だったことも忘れた頃にオープニングのシーンに戻ってくる、そんな構成の映画である。
何で好きなのかは自分でもよくわからないんだけど、「繋がった感」が心地いいのかなあ。
あとこの映画は何だか作りが小説的だなあとも思った。説明なしにシーンが変わったり、つかそもそも全体的に説明が少ないんだけど、「行間を読」まないといけないところなんかが、小説を楽しんでるときと似た感覚を味わえる。
小説家も登場するし、題材は音楽だし、構図はちょと絵画的だし、何だかあらゆる芸術を詰め込んだような雰囲気もかなりステキまくる。
よくよく考えるとなんだかすんげーかなしい流れなのに、主人公はいい感じに明るくて、けどお父さんとは結局何だかモヤモヤしたままで、現実ってけっこうそんなもんだよなあと思えるところもあったりしてちょっと不思議なおはなし、なのかもしれない。
さいごに
晩年を演じたジェフリー・ラッシュが素晴らしいのはもちろん (本作でアカデミー主演男優賞!) だけど、若い頃のノア・テイラーもなかなかステキでよかった。
オーストラリアの映画って他に観たことあったかなあ。全体的に役者さんはほとんど知らない人なんだけど、景色はキレイだし、空気感とか何だか妙に落ち着くなあと思った。ハリウッドともヨーロッパとも異なる「暖かみ」みたいなものを感じるんだよなあ。
何だかたまにはクラシックも聴きたいなあ、そんな気分になるポカポカした映画だった。なるほどだからシャインてタイトルなのかな。
おわり。クラシックといえばベートーベン・こーた ( @cota1Q82 ) でした。
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