ガリレオの苦悩 (東野圭吾)【読書】
2014/07/17
論理の短篇!
毎月1冊くらいのペースで東野圭吾さんのガリレオシリーズを読み直しています。長篇を逆順に読んできて、今は短篇を1作目から読んでいるところです。
で、今月は『ガリレオの苦悩』を再読しました。短篇としては3冊目、シリーズ通しては4, 5冊目 (長篇の『聖女の救済』と同時刊行) にあたります。
刊行年は2008年。発売と同時に購入してすぐ読んだので、以前読んだのはもう5年も前、てことになりますね。けっこう経ってるなあ。それにしてはわりと内容を覚えていました。
前の2作 (『探偵ガリレオ』と『予知夢』) は自分でもビックリするくらい忘れてたんで、ちょっと意外でした。読んだ時期は大して変わらないはずなんだけどなあ。
いくつかのおはなしは、今年放送されたドラマ (セカンドシーズン。2013年4-6月期) の原作にもなっていて、それで核となるトリックはけっこう覚えていた、てのはあるかもしれません。
収録されているのは『落下る〈おちる〉』『操縦る〈あやつる〉』『密室る〈とじる〉』『指標す〈しめす〉』『攪乱す〈みだす〉』の5篇です。長さがまちまちで、『操縦る』と『攪乱す』はちょい長めの中短篇みたいな扱い、他の3つはいつも通りの短篇、といった趣きです。ぼくは短いほうが無駄がなくて好きです。
『密室る』『指標す』『攪乱す』はセカンドシーズンで、『落下る』『操縦る』は『ガリレオφ』とゆうスペシャルドラマでそれぞれ映像化されています。
前作までは基本的に、草薙刑事が厄介な事件を湯川に相談しにくる、とゆうスタイルでしたが、今作あたりから、容疑者が知り合いだったり偶然巻き込まれたり、とゆうケースが増えています。
名探偵の周りでは殺人事件が起きやすい、名探偵の掟 (東野さん自身がそのものズバリな小説を書いてますね笑。読んでないですけど) とゆうか、マキコミの法則とゆうか。『容疑者Xの献身』からの流れもあるんであれですけど、つか知り合いに殺人者多すぎだろ、と思わずツッコミたくなってしまいます。
それと、『探偵ガリレオ』や『予知夢』では顕著だった「オカルトや超常現象を科学的に解決する」とゆうスタンスが、若干薄れてきてるのも特徴かなと思います。
オカルトっぽいのは『指標す』くらいかなあ。まあ結局のところ、このおはなしが一番面白いんですけどね。よくよく見たら表紙にもなってますし。今の今まで気づきませんでした!
「超常現象 vs. 科学」みたいなおはなしは実のところあんまり好きじゃないんですが、そーゆう対立構造をあんまり感じさせないのがガリレオの好きなところだったりもします。
んでやっぱりオカルトっぽい話が出てこないと、「それ別に解くの科学者じゃなくてもよくね?」てなっちゃいますし、やっぱりガリレオ本来の土俵っぽい感じはします。
容疑者も科学者だと、ただの「科学 vs. 科学」になっちゃいますからね。それだったら本来の研究を舞台にした闘い、それこそ本物の科学史を読むほうが遥かに面白いですからね。わざわざ犯罪を巡って闘わなくてもいいだろう、なんて思ってしまいます。
あとあと、湯川の変人ぶりもだんだんマイルドになってきています。相手が内海刑事に変わったからかな。草薙はもともと友人ですし、お茶目な部分だったり、真に変人的な素の部分もけっこう簡単に見せるんですけどね。やっぱり相手が女性だと、それなりによそ行きにはなるよなあ。
ただ以前までは「ちょっとおかしな科学者」てだけだったのが、本作あたりからじわじわと湯川自身の科学観、のようなものが語られはじめるのは面白いですね。この傾向はさらにシリーズが進むにつれて、どんどん顕著になってくような気がします。
そーゆう意味で本作は、シリーズのちょっとした転換点、といえるのかもしれません。
さーて、ガリレオ再読の旅もあとは最新の短篇2冊を残すのみ。やっぱり短篇のが読みやすくて好きだなあ。「読んだ感」が大きいのはもちろん長篇なんですけどね、つかまあどれも面白いから再読してんですけど笑。
おわり。こーた ( @cota1Q82 ) でした。
ぼくは単行本で読みましたが、今では文庫化 (2011年文春文庫) されています。改訂はしていないはずですし、値段的にそちらのほうがお得です。
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