英国王のスピーチ (2010)【映画081】

      2014/12/02

英国史上、もっとも内気な王。

英国王のスピーチ

セットやロケーションなどの背景がとっても美しい映画です。ライオネル (ジェフリー・ラッシュ) の”城”である診察室の壁のなんと素晴らしいこと!

そんなステキな背景を活かしきるかのように、人物を極端にズラして撮る構図も何だか心地よくて、絵画を観ているような気分で楽しむことができる映画です。

オープニングはサッカーの聖地ウェンブリースタジアム。吃音症でうまく話すことができないヨーク公 (コリン・ファース) が主人公です。

このひとは後の英国王ジョージ6世。競馬ファンにとっては「キングジョージ」のレース名でおなじみです。ちなみに、競馬大好きな現在のエリザベス女王が、まだあどけない少女として登場するんですが、木馬が大好きと思われるシーンがあって、「このころからすでに馬好きの片鱗が?」みたいな感じになってるあたり実に微笑ましいです。

コンプレックスに悩む国王とその療法士の友情が淡々と描かれていきます。とってもストレートな友情ドラマで、まあ言ってしまえばよくある「良い話」なんですが、歴史がうまいこと絡んできたりして全く退屈しません。

大きな歴史のうねりの中で、ちょっとした情景だけにフォーカスしたようなおはなしってけっこう好きなんですよね。それに登場人物が少なめで、余計なエピソードを描かないのも潔いです。

自国が戦争へと向かっていく中で、国民へ向けたスピーチをしなければならなくなるんですが、このスピーチが映画的にもとってもわかりやすいクライマックスになってるのが何ともうまいです。淡々と進んでくなかにも大きな流れみたいなものが生まれるんですよね。素晴らしいアクセントです。

何だかそう考えると映画全体が名スピーチのお手本みたいになってるんだなあ。ポイントを絞って、あくまでも冷静に、でも大きな流れは作って……。今気づきました。

国王とゆうこれ以上ないほど特別な存在なのに、生真面目すぎるがゆえに自信を持てずに悩み苦しむ、なんて姿はいかにも”普通”で、そんなコントラストもうまいですね。

ヒトラーの演説映像を見たジョージ6世が「何を言ってるかわからないけど演説はうまい」みたいなことを言います。ヒトラーへの痛烈な皮肉みたくなってて面白いんですが、しゃべりかたよりも伝えたいことのほうが大事だよ、とゆうメッセージとして捉えることもできるシーンなのかなと思います。

スピーチをうまくやろう、なんて思うとどうしてもテクニック的なところに注目してしまいがちです。そーゆう類いのビジネス書って、世に数多溢れてますよね。

でも小手先のテクニックなんかよりも「何を」語るのか、「誰が」語るのか、のほうがずっと大事なんですよね。「どうやって」はその後です。

クライマックスのスピーチシーンでは、ライオネルが「友である私に語りかけるように」みたいなことを言います。これってスピーチをうまくやるための、ひとつのコツではないでしょうか。

多くのひとに伝えようと思うと緊張するから、とゆうのもありますが、それよりもまず、たったひとりに伝わらないことが多くのひとに伝わるわけもありません。まずはひとりの友に伝わるように話す。大事です。

で、何かを語るべき友を作るためには、相手と心を開いて話さないといけません。うわべをいくら取り繕っても見透かされてしまいます。何かを語るということは、そのひとの内面、つまりは私は何者か (誰) を語る、てことと同義なんじゃないかと思います。

でも心を開くのは誰でも怖いです。内面をさらす恐怖を克服するには、まず自分に自信を持つことが肝要で、自信を持つためには……。何だかグルグル回りはじめてしまいました。

半歩踏み出して、ちょっとずつ心を開いてみるのがグルグルを断ち切るための手っ取り早い第一歩、なのかなあ。まずはゆっくり時間をかけて、少しずつ進めばいいんだと思います。われわれは王ではない、”普通”の平民なのですから。

おわり。こーた ( @cota1Q82 ) でした。

▼▼▼▼▼

『英国王のスピーチ (The King’s Speech)』。2010年イギリス・オーストラリア。トム・フーパー監督。118分。

英国王ジョージ5世の次男ジョージ6世 (コリン・ファース) は、幼い頃から吃音というコンプレックスを抱え、人前に出ることを極端に恐れる内向的な性格となり、成人してからも自分を否定し続ける人生を送っていた。吃音を克服すべく、何人もの言語聴覚士の治療を受けるものの一向に改善の兆しは見られない。そんな夫を心配する妻エリザベス (ヘレナ・ボナム=カーター) が最後に頼ったのはスピーチ矯正の専門家というオーストラリア人のライオネル (ジェフリー・ラッシュ) 。彼は王子に対しても遠慮のない物言いで次々と風変わりな治療法を実践していく。そんな中、国王に即位した兄エドワード8世 (ガイ・ピアース) が、王室が認めない女性との愛を貫き、突如王位を返上してしまう。王位の継承など考えてもいなかったジョージは、最も恐れていた事態に直面し、恐怖のあまり泣き崩れてしまうが…。

via: allcinema

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