容疑者Xの献身 (東野圭吾)【読書】

      2014/07/17

運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。

容疑者Xの献身 東野圭吾

最初に読んだのはドラマの1stシーズン放送の前後だったと思います。それ以来の再読なので約6年ぶりってことになりますが、あいだに映画版を何度か観てたからか、内容はけっこう憶えていました。

むしろキャストなどのイメージが強すぎるとゆうか、読んでてちょっと邪魔に感じるくらいでした。

ガリレオシリーズは、とゆうよりも多くのミステリは、探偵よりは犯罪者側のドラマであることがほとんどなのですが、本作もその例に漏れません。

本作の主人公をひとり選べといわれれば、謎を解くひと・湯川よりも、謎をかけるひと・石神を挙げたくなります。

この石神、映画では堤真一さんが怪演してましたが、小説を読んでくとどうもイメージとズレてくるんですよねー。

そいえばはじめて読んだときも、映画では誰がやるのかなあと思ってたら堤さんて発表されて、えーイメージと違う!てなったんだった今思い出しました。映画観たらかなりハマってたんで忘れてたんですけど、何とゆうか堤さんだとカッコよすぎるんですよね。小説読んだだけだと、何考えてんのかわからない怖さみたいなところも含めてもっと怪物的なイメージです。

アパートの隣人、花岡親子による殺人を偶然目撃してしまった石神。被害者の元妻花岡靖子が容疑者として浮上するものの、石神の隠蔽工作によって捜査は難航。しかも当の石神は湯川の同級生で、大学時代には互いを天才として一目置くようなよきライバル関係だったことがわかり……。

とゆう感じで、犯人はあらかじめわかっているような、いわゆる倒叙型のミステリです。てガリレオシリーズはだいたいどのおはなしもそうなんですけど。

ポイントは石神が仕掛けたトリックと、彼が花岡母娘を助ける動機です。タイトルにもある「献身」がキーワードなんですが、わかりそうでわからない展開は東野圭吾さん特有のうまさですし、あと一歩のように思えて全く見当違いの沼地を歩かされてたかのような感覚は、作中における草薙刑事たちの捜査展開ともシンクロしてて面白いです。

幾何の問題に見せかけて関数の問題、というはなしが出てきます。盲点をつく、てやつです。単なる数学のはなしかと思ってたものが、殺人のトリックとも関連してくるあたりがとっても巧いんですが、これってミステリの構図にも当てはまりますね。どうやってミスリードさせるかがミステリ作家の腕の見せどころですから。

論理的に物事を考えられる人間は何をやってもうまいです。ましてや数学者は論理を扱うプロですからね。それに数学の証明に限らず、科学の手法と犯罪捜査って、どこかちょっと似たところがあるように感じます。怪しいところを見つけたらその周辺を徹底的に調べ、証拠を積み上げて答えにたどり着く。

一見ミステリとは無縁とも思える物理学者が活躍できるのも、この辺りの接点と関係があるような気がします。んでその最強の敵は数学者、とゆうのはなるほどいかにもナットクです。

でもいっくらカンペキな論理を積み上げても、肝腎なところでは感情に負けちゃうことが往々にしてあるのも人間の面白いところかなと思います。

だって、何ごとも論理だけで決まっちゃったらそれこそ面白いことないですからね。「だから何だい、うるせいやい」みたいなところに深い感動が潜んでるものです。この小説もそんな感じの物語なんじゃないかなあ。

三谷幸喜さんも「99%論理的に積み上げて、1%破綻させるところが面白い」みたいなことを言っていました。本作は物語的に破綻してるわけではないですが、もっとも感動的な部分はちょっとした”破綻”によってもたらされています。

小説としての完全性と、物語の中で起こる破綻、そんなコントラストも面白さの源泉なのかもしれません。

おわり。理系だけど論理的思考は苦手・こーた ( @cota1Q82 ) でした。

▼▼▼▼▼

東野圭吾著『容疑者Xの献身』。2005年文藝春秋 (2008年文春文庫) 刊。352ページ。

数学だけが生きがいだった男の純愛ミステリ。天才数学者でありながらさえない高校教師に甘んじる石神は愛した女を守るため完全犯罪を目論む。湯川は果たして真実に迫れるか。第134回 (平成17年度下半期) 直木賞受賞。

via: Amazon内容紹介

ぼくはハードカバーで読みましたが、今なら文庫版がお得です。改訂もないはず。

 -小説

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