虚像の道化師 (東野圭吾)【読書】

      2014/07/17

刑事はさらに不可解な謎を抱え、あの研究室のドアを叩く。

虚像の道化師 ガリレオ7 東野圭吾

ガリレオシリーズも7冊目。さすがに順番に戸惑うくらいの数になったからか、今作からサブタイトルに「ガリレオ7」なんて入るようになりました。短篇としては4作目です。やっぱりガリレオは短篇だなあ。軽い感じもマッチしてますし、とっても読みやすいです。

読みやすいといえば、本の形状も本作からペーパーバック風のソフトなカバーになって、外味もライトになりました。素晴らしい。

発売直後に読んで以来、1年半くらいぶりに再読しました。これくらいの間隔だとさすがにけっこう覚えてるもんです。収録されてる4篇全てがドラマにもなったので、余計に記憶が鮮明なのかもしれません。

以下、印象的な部分の引用とともに、それぞれのおはなしごとの感想をつらつらと。ちなみに各々のあらすじはエントリの最後にあるので、未読のかた忘れちゃったかたはそちらも参考にしていただければ。

幻惑す〈まどわす〉

記事を読むかぎり、被験者はほぼ例外なく連崎氏の力を感じている。感じ方も殆ど同じだ。これを我々の言葉では再現性が高いという。再現性が高い現象は、必ず科学的に説明が可能なはずだ

via: P47

新興宗教が持ってるオカルトなイメージはガリレオとの相性ピッタリで、何で今まで出てこなかったのかちょっと不思議なくらいです。あまりにあからさますぎるからかなあ。

ただ「科学と宗教」とか「信仰とは何か?」みたいな話はとっても大事なことなので、もうちょっと掘り下げて、湯川の言葉で語ってほしかったなあとゆう気もします。ちょっと重くなっちゃうかもですが。

定性的な表現が多くて参考にならない。もっと定量的なことを知りたいんです

via: P48

感じたことを立証するには、何らかの客観性、つまりは数値データが必要です。だからデータは超重要、とゆうか全てです。データがなければ科学とは言えませんから。

心聴る〈きこえる〉

そう、怠け者だ。人の意見に耳を傾け、自分のやり方や考え方が正しいのかどうかを常にチェックし続けるのは、肉体的にも精神的にも負担が大きい。それに比べて、他人の意見には耳を貸さず、自分の考えだけに固執しているのは楽だ。そして楽なことを求めるのは怠け者だ。違いますか

via: P119

2本目はストーリーもトリックもちょっと変化球系のおはなし。

てか1つめはちょっと強めの敵が出てくる派手めなおはなしで、2つめにちょっとライトなおはなし、とゆう並べかたはだいたいいつもおんなじですね。短篇は個々のおはなしの質はもちろん、それ以上に並べかたも大事ですからね。このあたりも巧く計算されています。

科学的な内容としては『ガリレオの苦悩』にあった「攪乱す」を彷彿とさせるような内容です。さすがに7作目ともなると、こーゆう話まえにもなかったっけ?みたいなのがちらほら出てきますが、そーゆうネタ切れ感さえ逆手にとってるようなところはさすがというしかありません。

それとこのおはなしは草薙刑事が主役みたいな感じなのも嬉しいです。ある意味「小説オリジナル」な草薙のほうが好きだったりするんで。

目を覚ました瞬間、やばいな、と草薙は思った。身体が少し熱っぽい。しかも喉に違和感がある。扁桃腺が腫れているに違いなかった。風邪をひくと決まって出る症状だ。

via: P86

僕もまったくおなじです笑。こーゆう草薙の私生活とゆうか、キャラのディテールが垣間見えるのがこのおなはし最大の読みどころなんじゃないかと思います。

偽装う〈よそおう〉

このおはなしも何だか草薙がメインみたいな感じです。そいえば内海は出てこないですね。1つ目もだけど。

てかこのガリレオシリーズって、湯川が主観になることがないんですよね。いつも第三者的に描かれます。湯川の超然としたイメージは文体でも表現されてるんだなあ。7冊目にしてようやく気づきました。

このおはなしに限っては、湯川は何だか”普通の”名探偵みたいな感じでした。普通の名探偵、てのはちょっとおかしな言いかたですけど。

あと犯人の心の声とゆうか、独白による種明かし、みたいなのが最近のガリレオ、だけじゃなくて東野さんの作品に多いような気がするんですが、これはちょっとズルいなあと思います。なんか浮いちゃうんですよね。もうちょっと自然に提示してくれたらなあと思います。

このおはなしで何気に一番「へえ〜」と思ったのは、絞殺と扼殺の違い、ですね。手で締めるのが扼殺、それ以外の紐とかで締めるのが絞殺、です。こんなのミステリ読む以外では全く役に立たない、とゆうか役に立たないでほしい豆知識ですね笑。

演技る〈えんじる〉

虚像を追い求める人生もあるということだ

via: P276

虚像を追う、とゆう表現は、小説を読む、とゆう行為と通じるように感じます。それに対して、科学の研究はまさに実像を追いかけるようなもの。

虚像 (小説) と実像 (科学) の界面みたいなところに位置してるのがこのガリレオシリーズなわけで、両方とも好きなぼくがハマるのはまあ必然なのかなあなんて思ったりしました。

これからもぼくは、虚像と実像の両方を追いかけていきたいなあ、てのはちょっと欲張りかな。

おわり。

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▼▼▼▼▼

東野圭吾著『虚像の道化師 ガリレオ7』。2012年文藝春秋刊。276ページ。

ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。その場にいた者たちは、男が何かから逃れるように勝手に窓から飛び降りたと証言し、教祖は相手に指一本触れないものの、自分が強い念を送って男を落としてしまったと自首してきた。教祖の“念”は本物なのか? 湯川は教団に赴きからくりを見破る(「幻惑(まどわ)す」)。

突然暴れだした男を取り押さえようとして草薙が刺された。逮捕された男は幻聴のせいだと供述した。そして男が勤める会社では、ノイローゼ気味だった部長が少し前に自殺し、また幻聴に悩む女子社員もいた。幻聴の正体は――(「心聴(きこえ)る」)。

大学時代の友人の結婚式のために、山中のリゾートホテルにやって来た湯川と草薙。その日は天候が荒れて道が崩れ、麓の町との行き来が出来なくなる。ところがホテルからさらに奥に行った別荘で、夫婦が殺されていると通報が入る。草薙は現場に入るが、草薙が撮影した現場写真を見た湯川は、事件のおかしな点に気づく(「偽装(よそお)う」)。

劇団の演出家が殺された。凶器は芝居で使う予定だったナイフ。だが劇団の関係者にはみなアリバイがあった。湯川は、残された凶器の不可解さに着目する(「演技(えんじ)る」)。

読み応え充分の4作を収録。湯川のクールでスマートな推理が光る、ガリレオ短編集第4弾。

via: Amazon内容紹介

 -小説

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