禁断の魔術 (東野圭吾)【読書】

      2014/07/17

湯川が殺人を?

禁断の魔術 ガリレオ8 東野圭吾

『真夏の方程式』の映画を観にいった後から、何気なくはじめたガリレオシリーズの読み返しも本作が最後です。うう、寂しい……。

シリーズ初の全編完全書き下ろし、だそうです。4つのおはなしが収録されています。ページ数的には短篇3つに中篇1つ、といったバランス、最後のおはなしだけだいぶ長いです。

感想やらグッときた引用やらを交えながら、ひとつずつ振り返っていきます。

透視す〈みとおす〉

トリックは単純なほど騙されやすい。種を聞いてみれば、なあーんだ、というのがね。科学の世界でも同じだ。一見すると複雑そうに見える問題ほど、その構造はシンプルだったりする。問題を複雑化させていたのは、じつは人間の頭の固さが原因だったということが、過去にもいくつかある

via: P12

透視マジックを特技にしていたホステスが殺される事件。透視のトリックは何だったのか、そしてなぜ彼女は殺されたのか。

のっけから一番好きなおはなしです。本作のみならず、数あるガリレオシリーズの中でもかなり好きな部類に入ります。なぜだかドラマ化されなかったんですよね。かなしす。

何が好きなのか自分でもよくわかんないんですが、ひとつはこのおななしの主人公である女性がけっこう好みな感じ、てのはあるかもしれません。

かわいいんだが童顔。そして華奢。まるでお人形みたいだった。面白いことに、ホステス仲間からは、かわいいかわいいっていわれてた。女性から好まれるビジュアルなんだ。だけど男は違う。男は、もっと平凡で下品な顔が好きだ

via: P28

ぼくは草薙と違って、女性から好まれるような女性が好みだったりするからなあ。

俺が慣れない東京暮らしで悩んでいた時だって、いつも彼女に励まされてました。大丈夫だよ、東京なんて田舎者の集まりなんだから、自分たちだってきっとうまくやっていけるよって

via: P35

ぼくは小説読んで泣くとかほとんどないんですけど、このおはなしはなぜだか軽く泣けました。

いなくなっちゃったひとの過去を探る系のおはなしが好きってのもあるような気がします。本作は過去の事件ではないですけど、被害者の過去を探ってくあたりが面白いです。

おはなしの構成なんかもホントに無駄がなくて、ガリレオらしいなあと思います。ある意味でこのシリーズの到達点のような気がします。完成度が素晴らしいです。

曲球る〈まがる〉

台湾には優秀な物理学者が多い。彼等の素晴らしいところは、たとえ非科学的であろうとも文化や因習を軽視しないことだ。

via: P117

戦力外通告を受けたベテランピッチャーの妻が殺された。犯人はすぐに捕まるが、不思議な縁で湯川がトレーニングに協力することになって……。

「透視す」もなんですが、事件の本質とか解明とは関係ない部分の面白さがあります。短篇のふたつめはだいたいいつもちょっと変化球系のおはなしですし。タイトルもピッタリ、これ狙ったのかなあ。

それと、死者からのメッセージを探る、みたいな部分は「透視す」もそうでしたし、全編に共通する本書の大きなテーマのように感じます。

念波る〈おくる〉

女性が家で襲われたとき、双子の妹はその危機を察知していたと主張。テレパシーは存在するのか?

だからそれが間違っている。僕以外にいないのではなく、僕もいない。頼むから、そんな話は持ち込まないでくれ

via: P135

捜査協力を渋る件は久しぶりに出てきた気がします。湯川はやっぱりこうでなくっちゃ笑。草薙&内海の、説得するための屁理屈も楽しいです。

あとこのおはなしは終わりかたが良いですね。ニヤリとできます。ちなみに「曲球る」ははじまりが素晴らしいです。

みたいなものではなく、竹籠そのものだ。新しく開発した磁性体の結晶構造がこれとそっくりなので、模型に転用することにしたというわけだ

via: P164

湯川の研究テーマは何となくぼくが大学院でやってたテーマと近いように思います。磁性体の結晶構造とかまさにドンピシャ、なんだか嬉しいなあ、そんなところもこのシリーズが好きな理由だったりします。

ちなみにこーゆう工作は実際にけっこうやったりします。良い先生ほど、こんな遊びみたいなことを日々楽しそうに考えてるものです。

猛射つ〈うつ〉

ジャーナリストが殺され、容疑者として浮かび上がったのは湯川の教え子?大物政治家のスキャンダルも絡んでボリューム満点の中篇。

本書の半分くらいを締めるのがラストを飾る本作。けどぼくにはイマイチでした。何だかここまでいっちゃうとミステリとゆうか、ちょっとファンタジーだよなあと思ってしまいます。

回想や独白で物語を進める、てのも何だかあまりに工夫がなくて好きじゃないです。ちょっとズルい。

ホテルの騒動の件は代わりの人間に来てもらうとかさ、他にいくらでもやりようがあったんじゃないかと思ったり、なんか全体的にこじつけっぽい感じが気になりまくっちゃって、全然入り込めませんでした。

ホテルと言えば『マスカレード・ホテル』をちょっと思い出したなあ。似たようなエピソードがあったような……。気のせいかもしれません。ぼくの頭ん中で混ざってるだけかな。

使う人間によっては武器になる、だろ?科学技術には、常にそういう側面がある。良いことばかりではない。使い方を間違えれば、禁断の魔術となる。

via: P309

タイトルにもなってる禁断の魔術、これは原発のことを言ってるのかなあ、なんて思わずにはいられません。

かつて『古畑任三郎』でも化学者の犯人が、「どの薬品だって使いかたを間違えれば危険だ」みたいなことを言ってたなあ。そいえばあれも演じてたのは福山さんだったなあ。そんなことを思い出したりもしました。

おわり。

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▼▼▼▼▼

東野圭吾著『禁断の魔術 ガリレオ8』。2012年文藝春秋刊。327ページ。

湯川が殺人を?「自業自得だ。教え子に正しく科学を教えてやれなかったことに対する罰だ」。ガリレオシリーズ初の完全書き下ろし。

via: Amazon内容紹介

 -小説

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