悪魔の手毬唄 (1977)【映画093】
2014/10/31
可憐な手毬唄にのって起こる、凄絶な連続殺人。
子供のころハマって読み耽った金田一耕助シリーズ。中でもこの『悪魔の手毬唄』はシリーズ屈指の面白さだったように記憶しています。
けど何だか「面白かった」てこと以外は一切忘れてしまっていて、かなーり新鮮な気持ちで映画を楽しむことができました。
金田一の小説はあらかた読んだんですが、映画は『犬神家の一族』くらいしか観たことがなかったんですよね。市川崑監督&石坂浩二さんのコンビで5作も製作されてるのかあ。こりゃ順繰りに観ていかないとなあ。
てわけで『犬神家〜』に続く第2弾が本作です。何だか『犬神家〜』は金字塔のようにめちゃくちゃ評価されてますけど、本作も負けず劣らずすげー作品です。市川崑てやっぱすげーんだなあ。
▼▼ちなみにシリーズ第1弾、『犬神家の一族』の感想はこちら。
犬神家の一族 (1976)【映画069】 (コタノト!)
めちゃくちゃ息苦しい
おどろおどろしいのが金田一のウリですが、そんなおそろしげな空気感は前作以上です。とにかく全編息苦しい。
何だろ、舞台設定の「人里離れてる感」みたいなのが増してるからかなあ。鬼首村ってすげー名前笑。岡山と兵庫の間の山間部てのも絶妙です。
セットなんかもイチイチ重苦しいんですよねー。何だかこの映画観た日の夜は、自宅でも暗い中動くのがちょっと怖かったです。
死体の演出 (泰子の人形笑) とか殺しのシーンとかは相変わらず凝ってて、何とも生々しいとゆうか毒々しいとゆうか、こーゆう感じって最近あんまり観ないよなあと思います。目背けたくなる感じ、でも何か艶〈なまめ〉かしいんだよなあ。下品だけど品があるとゆうか。
市川崑監督にはこーゆう独特の怖さみたいなものがあります。痛い感じはリドリー・スコットとかコーエン兄弟とかもうまいですけど、ちょっと違うんだよなあ。
「いつものひと」の安定感
いわゆる常連組のお芝居は安定感があるとゆうか、前作とおんなじように撮って遊んでるようなところもあって楽しいです。
加藤武さんとか三木のり平さんとか、前作とは違うひとの役 (役割は似ている。あ、そーゆう意味ではおんなじ「役」なのか!) なのに、ほとんど同一人物かよって思うくらい、いい意味での既視感があります。
加藤武さんなんて名前の読みかた一緒 (橘と立花) だしなあ笑。「よし!わかった!」から揺れまくるジープまで、全部お約束な感じでかなり笑えます。
他にも草笛光子さんに大滝秀治さん、小林昭二さんなんかも含めてみんな「市川崑組」みたいな感じですね。出てくると何か安心します。まあそんなこと言ったら主演の石坂浩二さんもそうなんですが笑。
そいえば石坂浩二さんて、説明的なセリフが全然気にならないのがすごいなあとちょっと思いました。
ミステリなんでどうしても状況説明みたいなセリフがべらぼうに多くなるんですけど、何だかものすごい自然な感じなんですよね。
下手なひとがやると、「そんな風にしゃべる人間いないよ」みたいに思って興ざめしちゃうんですけど、すんごいサラッと聞けるとゆうか、物語を邪魔してないんですよね。
何だろ、滲み出る知性がそう思わせるのかなあ。理屈っぽいこと言っても気にならないとゆうか。
どうも話がややこしいなあ
複雑な事件に思わず立花警部もこんな風にぼやいていますが、もう何だかいつにも増して難解です。ちゃんと話聞いてないと置いてかれます。ぼくはところどころ戻したりしながら観ました笑。
思えば30年以上前に作られた映画で、そこからさらに30年くらい前の設定で、さらにさらに20年前のある事件が重要な意味を持ってくる、てなおはなしなんで、ややこしいのは当たり前なのかもしれません。
今観ると民俗や風習などの田舎文化はピンとこない部分もありますし、映画の歴史もちょっとだけ絡んでたり細かいところにいろんなものが盛り込まれています。
そんないろいろが物語に彩りを与えてるといいますか、良い意味でアクセントになってるから面白いおはなしになってるんですが、ミステリとしてはかなーりややこしくなっています。
まあ金田一の映画は、犯人が誰とかけっこうどうでもいい感じの部分もありますし、そんでもいいのかもしれません。つかキャストでだいたいわかるしなあ笑。そいえば小説の内容はすっかり忘れてたんですが、犯人が誰かってゆう肝腎のところはなぜかしっかり憶えてました。何でだろ、他の作品はけっこう忘れてる気するんだけどなあ。
初参加陣!
「いつものひと」が脇を固める一方、今作から (あるいは今作だけ?) の役者さんもかなーりいい感じに輝いています。
まず何といってもヒロイン仁科明子さんの美人ぶり。すげーカワイイです。
『犬神家〜』の島田楊子さんもですけど、市川崑監督って若い美人をキレイに撮るのがめちゃくちゃ巧いなあと思います。
岸惠子さんは表面的な明るさと、その裏にデッカイ闇を抱えてそうな暗さのバランスが絶妙です。どことなく水商売を感じさせる雰囲気も、若いころ芸能の仕事してたって役柄とマッチしてますね。
ちょっと田舎臭さを感じさせるあたりもまた絶妙なんだよなあ。顔のタイプ全然違うけど、エイミー・アダムスと似た雰囲気があります。都会っぽさと田舎っぽさの同居とゆうか、配分が素晴らしい感じ。
若山富三郎さんは間が独特ですね。石坂さんと対話するシーンはどことなくアドリブっぽいです。再会の挨拶から事件の話をするシーンがすんごい滑らかで大好き。
あと全然関係ないですけど、自転車二人乗りのシーンは『キッズ・リターン』思い出しました。
そして最高にオシャレなラストシーン。岡山の田舎の駅なのにオシャレとかすごすぎます。やっぱり金田一は駅が似合うなあ。
▼▼▼▼
もともと歴史が好きだったりするのもあって、「過去を探る」てのがぼくの中ではちょっとしたテーマになってます。
ミステリでも、過去の未解決事件をほじくり返す「探索系」が大好きなんですが、子供のころ読んでハマった本作も20年前の事件を探るって構図だったってことにかなりビックリしました。このころから好きな方向って変わってないんだなあ。
思えば金田一はだいたいそーゆうおはなしですし、だからハマったてのもあるのかもなあ。
映画を観たら何だかまたいろいろと読み返したくなってきました。まずは記憶も新しい本作あたりから、ちまちまと読んでこーと思います。
おわり。
▼▼▼▼
『悪魔の手毬唄』。1977年東宝他。市川崑監督。144分。
文明社会から隔離され、古い因習がいまも力を持つ鬼首〈おにこべ〉村。村に伝わる手毬唄。その歌詞に見立てた殺人事件が発生する。事件解決を依頼された金田一耕助。やがて、事件の背後に村を二分する二大勢力、由良家と仁礼家の存在が浮かび上がってくる。金田一は真犯人を見つけ出すため、失われた手毬唄の秘密を追うが……。石坂浩二の金田一耕助シリーズ第二弾。
via: allcinema
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