犬神家の一族 (横溝正史)【読書】
2014/07/17
「斧・琴・菊」は、「良き事聞く」。
あいかわらずおぞましい表紙だなあ。これは、松子さんですかね。まさか珠世じゃないよなあ。
本作『犬神家の一族』は、数ある金田一耕助シリーズの中でも一番記憶に残っている作品です。もう何度目の再読だろう。市川崑監督の (新旧2本の) 映画を観るたびに読み返しているように思います。
さすがに何度も読んでいるためか、物語そのものはちょっと退屈に感じてしまいますが、映画と違うところを探したり、この前読んだ『悪魔の手毬唄』と比べたりしならが読んだらいろいろと発見があって楽しめました。
ストーリーの感想は今さら感があるので、枝葉の部分で「へえ〜」と思ったところなんかを、ちょっと書いてみようと思います。
ちなみに映画の感想などなどは以下の通りです。
犬神家の一族 (1976)【映画069】 (コタノト!)
悪魔の手毬唄 (横溝正史)【読書】 (コタノト!)
斧琴菊
斧琴菊は最初、那須神社の、なんといいますか、一種の神器だったんですね。つまり、三種の神器ですね。東京の役者の、尾上菊五郎の家にも、斧琴菊という嘉言があるそうですね。
via: P96
今回読んだ中で一番「へえ〜」と思ったのがこれ。ちょっと調べてみたら、「役者文様」なんてのがあって、かなりオシャレです。犬神家の惨劇とはかけ離れてるなあ笑。
団十郎の「鎌輪ぬ」(「構わぬ」の意) なんてのもあるんですね。
で、尾上菊五郎といえば、現在七代目菊五郎の息子さんは五代目尾上菊之助で、このひとは2006年のリメイク版犬神家でスケキヨ役をやっていたひとなんですよね。
しかもしかも、お母さんの松子役は富司純子さんで、このひとは菊之助のリアルお母さん、親子競演だったんですね。言われてみれば話題になったような。
これは意図的なキャスティング、なんだろうなあ。今の今まで全く気づきませんでした。
那須市?諏訪市?
信州那須市、とゆうところが舞台なんですが、そんな地名は実在しません。
つか栃木の那須高原が、長野とは比較的近いところにあるのがややこしいんですよね。この小説のせいで、那須といえば長野、とインプットされちゃってていつも間違えます。
この那須市は諏訪市がモデルになってるみたいなところがあります。湖を中心に、上那須と下那須に分かれていたり、神社がポイントなのも諏訪とよく似ています。
近在として出てくる伊那や天竜川は、諏訪湖周辺に実在してるんですよね。犬神家の旧邸がある「豊畑村」てのは、どこのことかよくわからなかったなあ。
スケキヨが逃げ込む「雪ヶ峰」は霧ヶ峰のことですね。てか周りをここまで似せて作るんなら、もう諏訪でいいじゃないかとさえ思います。
まあでも残忍な事件ですし、イメージ悪くなりますからね。作者なりの配慮なのかなあ。
東北生まれの金田一
署長さん、見そこなっちゃいけませんぜ。ぼくはこれでも東北生まれです。スキーは下駄よりはきなれてまさあ。
via: P344
金田一耕助は岡山に縁がある (あっちのほうでの事件が多い) から、何となく関西のひとなのかと思ってましたけど、実際は東北生まれなんですね。どこなんだろ。青森とかかなあ (根拠のない当てずっぽうです) ?
しかもスキーがめちゃくちゃうまいってゆう。
そいえばこの時代 (昭和20年代のおそらく前半) のひとって、スキーはどれくらいやったんだろうか。レジャーとして認知されてたのかなあ。
金田一はイメージに反して何気に運動神経いいんですよね。年齢 (アラフォー) のわりにけっこうタフだし。まあいちおう探偵だからなあ。
いずれにしても、じわじわと素性がわかっていくのがシリーズを読み返す楽しみだったりします。
▼▼▼▼
今回は事件と全然関係ない話を書き散らしてみました。
やっぱり映像のイメージが鮮烈だからなあ、ある意味原作を越えてるような面白さがあって、改めて市川崑すげ、と思いました。
昔読んだときは良くできたミステリだなと思ったんですけど、改めて読むとけっこういい加減だなと思ったのも逆に面白かったです。てか偶然重なりすぎ笑。
何だか関係者が死にすぎで、真犯人はもういい加減そのひとしかいねーだろ、みたいなところも面白ポイントな気がします。
推理小説を楽しむ、てのとはちょっと違った心持ち (何だろ、ホラー?) で挑むと、より楽しめるような気がします。
おわり。
次はあんまりよく憶えていない作品を読んでみようかなあ。
▼▼▼▼
横溝正史著『犬神家の一族〈金田一耕助ファイル5〉』。1972年角川文庫 (1950年初出) 。414ページ。
信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助に協力を要請していた顧問弁護士事務所の若林がやがて何者かに殺害される。だが、これは次々と起こる連続殺人事件の発端にすぎなかった! 血の系譜をめぐる悲劇、日本の推理小説史上の不朽の名作!!
via: Amazon内容紹介
kindle版もありますね。お得です。
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