本陣殺人事件 (横溝正史)【読書】

      2014/08/22

金田一耕助、デビュー戦。

本陣殺人事件 横溝正史

横溝正史著『金田一耕助ファイル2 本陣殺人事件』読了。1973年角川文庫刊 (1946年初出) 。407ページ。

江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷を完全な密室にしていた……。アメリカから帰国した金田一耕助の、初登場の作品となる表題作ほか、「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」二編を収録。

via: Amazon内容紹介

金田一耕助シリーズの読み直しは『悪魔の手毬唄』『犬神家の一族』に続いて3冊目。デビュー戦らしく、ミステリの古典的な題材にトライしていて面白い。

読み直しの前2冊は市川崑監督の映画を観たあとに「おさらい」として読んだのだが、本作はいきなり小説からってことで、初読のような気持ちで読むことが出来た。

表題の『本陣殺人事件』は、「密室殺人」とゆうミステリの王道を扱っている。

他の2編もそれぞれ「一人二役」(『車井戸はなぜ軋る』) 、「顔のない屍体」 (『黒猫亭事件』) とゆう古典的な題材がテーマで、ミステリとゆう枠組みが持っている形式をなぞるように展開するあたりは、何やら様式美のような面白さがある。

ただテーマは直球でも、おはなしは一筋縄でいかないのがさすが金田一。琴だとか三本指の男だとか、おなじみのアイテムもしっかり登場して、おどろおどろしい雰囲気を醸し出すのに一役買っている。

ま、デビューの頃からワンパターンなのかと言えなくもないが、読めば読むほど深みにハマっていくような不思議な魅力を持っている。

ホラーってそーゆうものか (金田一はミステリとゆうよりホラー笑) 。パターンをなぞりつつ、やっぱり怖い、けど読みたい、そんな気持ちにさせられる。怖いもの見たさ。

ある程度「わかってる」部分、普通のところに殺人とか「別」のものが入り込んでるから怖いんだもんなあ。パターンがないといけないってのはある意味当たり前なのかもしれない。

本作は十数年前のまだ子供だった頃に一度読んでいるので、犯人やトリックなどの大枠は、読みながらジワジワと思い出してきた。屍体の描写とかけっこう強烈で怖いんだよなあ、子供の頃によく読めたと思う。あるいは意味が分かってなかったのか。

意味が分からないと言えば、金田一はけっこう難しい言葉、最近では使わなくなった昔言葉がけっこう出てくる。そーゆうのをいちいち調べながら読むと、理解が深まって楽しい。

日本家屋の構造とかも、読んでるだけだと今ひとつピンとこないんだけど、Googleの画像検索しながら読むとイメージの良い補助になるからオススメ。

それとGoogleといえばやはりGoogleマップも欠かせない。本作で地名は伏せ字になっている (久_村など、伏せかたが特殊でちょっと戸惑う笑) のだが、岡山ってのは分かってるのでだいたいの見当はつく。

大まかな位置関係が分かると小説の世界にも入っていきやすい。簡単にいろいろ調べられるインターネット、便利な世の中になったのう笑。

密室のトリックは、はじめて読んだ子供の頃はすげーよく出来てんなあと感心したような記憶がある。けど改めて読んでみると、かなーりアクロバティックで驚いた笑。まあね、そんなもんだよね。コナンくんあたりにも似たようなのがあったような笑。

デビュー戦てことで金田一もまだまだ若い (20代?) し、探偵になる以前に何をしていたのかとかも詳しく書かれていて面白かった。つか、なかなか出てこくてけっこう焦らされる笑。

それにしても、アメリカに留学してたとかヤク中みたいになってた時期があったとか、すっかり忘れてたなあ。

『黒猫亭事件』には、記録係のYさん (つまりは作者横溝正史のことね) との出会いまで書かれている。つか本作の事件の頃は、まだ世間に知られた名探偵てわけでもなく、依頼人がけっこう身内だったりするのも何だか初期作らしくて楽しい。

多少憶えていた『本陣殺人事件』とは違って、あとの2編はもう読んでても全く思い出せないほどすっかり忘れていたので、物語を存分に堪能することができた笑。

「一人二役」(つかその逆の「二人一役」?) を扱った『車井戸はなぜ軋る』は、何やら『犬神家の一族』の予行演習みたいな感じなのが面白い。本作でのアイデアを膨らませて『犬神家〜』を書いたんじゃないかと思うくらい、設定がよく似ている。

ぼくは本作のほうが好きかな。短くまとまってるし、あと書簡体で書かれているのも妙な緊張感があって面白い。

「顔のない屍体」がテーマの『黒猫亭事件』は、都会が舞台のおはなし。金田一といえば田舎だけど、ときどき都市部のおはなしもあって、そっちのほうが新鮮な感じがして好きだったりする。

つかぼく自身田舎に住んだことがないせいか、田舎が舞台の物語ってフィクション感が強くなってしまう。一種のファンタジーとゆうか、ミステリよりもホラー色が鮮明になっちゃう。

その点東京が舞台だと、多少はリアリティが出るとゆうか、ミステリやサスペンスの要素が増して、また違った楽しみかたができる。どっちが良いとか好きとかでもないけど、舞台によってジャンルや楽しみかたの質が変わるってのが何よりも嬉しい。

▼▼▼▼

つーわけで、デビュー戦の表題作に、佳作2編を加えた中短編集。本としての構成もなかなか巧くて楽しめた。

次は何を読もうかなあ。憶えてないほうが楽しめそうなので、ちょっとマニアックな作品に手を出してみようかな。

おわり。

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『本陣殺人事件』は、『三本指の男』とゆうタイトルで映画化されているらしい。

三本指の男 – Wikipedia

片岡千恵蔵版金田一の第一作目だから、映画版の金田一としても元祖ってことになる。残念ながらDVDにはなっていないのか、Amazonでは見つけられなかった。ちょっと観てみたい気もする。

 -小説

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