NO (2012)【映画】現実と虚構のクロスオーバー

      2014/12/02

CMは世界を変えられるのか!?

NO ガエルガルシアベルナル

『NO (No)』鑑賞。2012年チリ / アメリカ / メキシコ。パブロ・ラライン監督。118分。

第85回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートを筆頭に各国映画賞で高い評価を得た、実話ベースの社会派ドラマ。1988年のチリを舞台に、軍事独裁政権を敷くアウグスト・ピノチェト将軍の信任延長を拒否する反対派陣営に雇われた広告マンの姿を見つめる。

via: シネマトゥデイ

主演はガエル・ガルシア・ベルナル。共演にアルフレド・カストロほか。

「まるで映画のようなおはなし」だが、紛れもない実話であるらしい。

ピノチェト政権てキーワードくらいは聞いたことあったけど、場所も時代もあやふやで、実情は全く知らなかった。けっこう最近の話なのね。

映画として素晴らしいのはもちろんのこと、いい勉強にもなった。

画質の秘密

実話ベースらしく、全編ドキュメンタリータッチで描かれている。

宣伝文句には「笑って泣けて〜」みたいなことが書いてあったので、もうちょっと娯楽性があるのかと思っていた。それが存外シリアスな内容で、観終わるころにはどっと疲れた。あ、これは褒め言葉ね。心地いい疲労感、映画の醍醐味のひとつ。

80年代後半の空気に合わせるかのような、擦〈かす〉れた映像が特徴的。

最初は観づらくて「だいじょぶかこれ?」と思ったが、しばらくすると慣れる、とゆうかむしろ虚構とは思えないリアリティを生んでいて、実に効果的だった。

とゆうかこの映画、観終わってから調べたら、CMの映像は全部本物ってことを知って驚愕した。あーこれ映画で出てきたやつだ!て感じで、ひとりアワアワしてしまった笑。

「NO Chile」で検索したらすぐに見つかったので、いくつか載せておく。

Franja Politica del No 1988 en Chile – YouTube

Franja Politica del NO – YouTube

「イエス」派のCMも探せばあるらしい。

なるほどなあ、あの画質は、このCMに合わせるためだったのか。考えてみれば確かに、どこまでが現実でどこからがフィクションなのか、境界が曖昧だったもんなあ。

CM部分も含めて、てっきり全部撮り直したものだと思ってたけど、つか実際の映像が使われてるなんて考えはこれっぽっちも浮かばなかったけど、まさか本物だったとは!すごい!すごい!

それと本作は光の量も凄まじくて、時折白く飛んでしまうほどだった。

太陽の”匂い”まで届きそうなほど明るくて、いかにも南米らしい空気感がひしひしと伝わってきた。はじめは「うわ眩しい!観づらい!」て思ったけどねもちろん笑。

レネと電子レンジ

主役の広告マン・レネ (ガエル・ガルシア・ベルナル) がとにかくカッコイイ。こーゆうクールな男、いいね!

ガエル・ガルシア・ベルナルは、別段カッコつけてる感じでもないのだが、もうナチュラルにカッコイイから恐れ入る笑。よれよれのポロシャツにヒゲづらなのに清潔感漂うってどんだけ笑。

大きくて複雑な色の瞳、あんなのに魅入られたらおっさんのぼくでもドキドキしちゃうよ笑。

決してアツくなったりはしないのに、内側に秘めた信念、みたいなのが滲み出てるのも素晴らしい。

最初のほうの上司との会話で、「電子レンジは”見えない熱”で温める」てのが出てくるけど、これってレネのことだよね?

映画のキーワードとしてたびたび登場する“未来志向”の象徴のようなレンジが、主人公のキャラクタともマッチしてるって、何気ないエピソードだけどすごく好き。

つか80年代後半なのに電子レンジに驚愕してるってことに驚いた。『アメリカン・ハッスル』でもレンジが”最先端”の家電として登場したけど、あれは70年代後半のおはなしだったもんなあ。

チリの生活レベルが端的に分かる、てゆう意味もこめられてんのかな。一石三鳥の電子レンジ、本作の最優秀”小道具”賞だ。

レネと龍馬

観に行ったタイミング的には、スコットランド独立を問う住民投票があったりして、実にタイムリーだった (つかそれがあったから観に行ったようなところもある) 。映画と現実のシンクロ!素晴らしい。

客層もちょっと大人しめとゆうか、娯楽映画の雰囲気とは明らかに違う感じで、政治的な関心の高いひとたちが観にきてんのかな、なんてことを思ったりもした。『プロミスト・ランド』のときも似たような雰囲気だったなそいえば。

んで実際観てて考えさせられる部分もたくさんあった。デモが頻発している今の日本も、決して他人事じゃねーな、と。

作家の司馬遼太郎さんがどこかで、「盛り上がったエネルギーをそのままのカタチでストレートにぶつけても、変革はできない」と言っていたのを思い出した。

正義を振りかざして、正面からぶつかっても潰されるんだよね。幕末の長州藩なんかまさにそうだった。

それよりは本作のレネみたいに、信念は奥底に仕舞っておいて、勝つ方法を考えるってほうが遥かに現実的なんだよね。

鉄道模型を並べたりスケボーしたり、一見すると遊んでるようにしか見えない、てのは、何だか坂本龍馬にも通じる部分があって面白い。

マジメであることは尊いと思うし、そーゆうのが正しく評価される社会って素晴らしいと思うけど、それだと変革期にはうまくいかないのかな、なんてことを思ったり。

あとなんだろ、「NO」てゆうネガティブなことを普及させるのってつくづく難しいんだな、てことも再認識した。

例えば脱原発とかね。電力 (エネルギー) 減っちゃうけど我慢しよーぜ、てのはやっぱ辛くて気が重くなる。それよりは「経済ハッテン!」とかのが、アゲアゲで景気良いから、乗りたくなる。

それに対して「将来世代にツケが……。」みたいなこと言っても、どんどん暗くなってダメなんだよね。真正面から立ち向かわない、てのも時には大事なのかな、なんてことも思ったりした。

デモのやるせなさ、てはこの辺りにあるんじゃないかな、て気がする。あんまりうまくまとめられてないけど。

さいごに

紙芝居 (つかADさんの指示出し) みたいなオープニングの背景説明&エンドロールも、質素なのに何かオシャレだった。好き。

全編重苦しい内容だけど、レネの息子シモンがすんげーカワイくて癒された。とーちゃんがイケメンだからな、子もカワイイのかやっぱ笑。

あとあと、上司のグスマン (アルフレド・カストロ) も複雑なキャラクタで素晴らしかった。仕事と政治信条は別、みたいなね。邪魔はするけど、レネの能力は買ってて、終わったらその結果は尊重する。大人カッコイイ!

てか民主主義の素晴らしさって、このグスマンてキャラクタに全部詰め込まれてるんじゃないだろうか。

淡々と進むし、じわじわ怖いシーンもあったりで疲れるけど、クライマックスの達成感は素晴らしい。

んでいろいろお勉強にもなって、考えさせられることもたくさんあるってんだから、何だかすごい映画観ちゃったな、てのをじわじわ感じている (気づくの遅い笑) 。

実に見事なエンターテインメント。もっとたくさんの劇場で上映してほしいなあ。

おわり。

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作品情報

公式ページはこちら。▷映画『NO』公式サイト

あらすじ

長らく軍事独裁を強いてきたアウグスト・ピノチェト政権の信任継続延長を問う国民投票が迫る、1988年のチリ。広告マンのレネ・サアベドラ (ガエル・ガルシア・ベルナル) は、反独裁政権を掲げる信任継続反対派の中心人物である友人ウルティア (ルイス・ニェッコ) から仕事を依頼される。それは、政権支持派と反対派双方に許されている、1日15分のテレビ放送を用いたPRに関して協力してほしいというものだった。レネの作るCMは徐々に国民の心をつかんでいくが、強大な力を持つ賛成派陣営の妨害に悩まされる。

via: シネマトゥデイ

予告編

予告編はこちら (2分ほどの動画) 。▷ 映画『NO ノー』予告編 – YouTube

 -2010年代の映画 ,

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