インターステラー (2014)【映画】2014年宇宙の旅
2014/12/22
地球の寿命が終わる。人類の挑戦が始まる。
試写会にて『インターステラー (Interstellar) 』鑑賞。2014年アメリカ。クリストファー・ノーラン監督。169分。
『ダークナイト』シリーズや『インセプション』などのクリストファー・ノーラン監督が放つSFドラマ。食糧不足や環境の変化によって人類滅亡が迫る中、それを回避するミッションに挑む男の姿を見つめていく。
via: シネマトゥデイ
キップ・ソーンほか製作総指揮。主演はマシュー・マコノヒー。共演にアン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、マッケンジー・フォイ、ケイシー・アフレック、マット・デイモン、マイケル・ケインほか。11月22日公開。
最初に断っておくと、本作はほとんど何も知らずに観たほうが断然楽しめる (どんな映画だってそうだけど) 。
どこまでがネタバレなのかよくわからない、つか何かを語ろうとすると、すべてがネタバレなんじゃないかと感じる (良い映画の条件!) 。
だって、例えばストーリーにしたって、言葉で要約すると恐ろしくチープになってしまう。
人類を救うため、人間が住める星を求めて、ワームホールを通って別の銀河へ旅する映画。ね、チープでしょ笑?
つーわけで、あんまりネタバレとかそーゆうのは配慮せず好き勝手に書く (笑) んであしからず。まあ明日公開だからいいよね。
長い笑!
interstellar。星間の、という意味。
3時間弱の星間旅行。長旅だった……。この映画、とにかく長い!
劇中の表現を借りれば、上映時間はたった3時間でも、地球時間では50年くらい、といったところか。観客を引きつける「重力」は、それほどまでに強烈。それにしたってだいぶ長かったけど笑。
もうちょっとまとめてくれよ、なーんて思わないでもない。いや、後半の破綻ぶりはヒドいもんなので、まとまっているとは言いがたい。
それでも前半の積み上げは恐ろしいほど丁寧。なのでその破綻は実のところあまり気にならない。
ゆっくりはじめて、徐々に加速していくストーリーテリングの巧みさ。積み上げたブロックを壊す快感。「破綻」とは必ずしも作品の否定にはならない。むしろ必要不可欠な要素。
素晴らしい映像美
とはいえ、ストーリーは邪魔に感じる。
それほど本作の映像体験は素晴らしい。最先端の理論物理学の視覚化。ウットリする。
ただただ、もっと観ていたい。この宇宙空間にずっと浸っていたい。
何かを語ろうとするのは返って野暮。スペースオデッセイはもっと退屈でいい。これは2014年宇宙の旅なのだ。
とはいえそれじゃあ、商業映画にならないか笑。『HHhH』でも言っていた。人々の記憶に侵入するには、文学 (物語) に変換しなければならない、と。
そんなことは分かっているが、それでもなお、何がしかのストーリーラインに沿うことを拒否したくなるような、圧倒的な「美しさ」をこの映画は備えている。
物語の骨格は、恐ろしくシンプル。
家族の愛と絆。あらゆる時代と場所で、幾度となく語られてきたテーマ。ともすればチープ。物語が邪魔に感じるのは、そのシンプルさゆえなのかもしれない。
重力が強すぎる
さきに (そして本エントリのタイトルにも) 「2014年宇宙の旅」と書いたが、そういえば「2013年宇宙の旅」は、”重力 (gravity)”とゆう名の、無重力を漂う旅だった。
今年はこの重力が格段に強すぎるのが厄介、とゆうコントラストはなかなか面白い (そもそも作り手が違うし、意図したわけでもないだろうが) 。
『ゼロ・グラビティ』を越えた!だって?(そーゆう評価をチラホラ目にする)
そう感じるのは、描かれる物理学のせいなのかもしれない。
古典力学を徹底的に描いた『ゼロ・グラビティ』。対して本作で描かれるのは、相対論と量子論 (それに惑星科学/化学も少々) 。20世紀に入ってから生まれた、より高度な物理学。
それでも、どちらの物理が (そして作品が) より優れている、とゆうことでもない。よりシンプルな現象、例えば宇宙空間における作用・反作用のような物理ほど、イメージ (視覚化) するのは難しい。
そういえば本作でも、「運動の第3法則」として出てきたな笑。それもけっこう重要な場面で。
土星へと向かう重力ターンだって、古典力学で計算できるはなしだ。(“人”が行ったことはないとゆう意味で) 人類がまだ見ぬ広い宇宙へ飛び出すためには、古典力学だって大いに重要なのだ。
そいえば『ゼロ・グラビティ』もだいぶ静かな映画だったけど、本作の無音ぶりはそれ以上。静寂の緊張感と驚愕。
“人”とは何か
『2001年宇宙の旅』では、人工知能 (HAL) は悪役だった (これは『2001年〜』のネタバレだな笑) 。
本作でもそうなのか?と思わせるようなミスリードを誘うシーンはあるものの、さすがに同じじゃつまらない。ちゃんと”越えて”くるのでご安心を。
AIは最後までちゃんと味方 (しかもユーモアたっぷりだ!) 。『月に囚われた男』のガーティを思い出す。
では悪役は誰か?それは見てのお楽しみ。てまあこのあと書いちゃうんだけど笑。
“人”とは何か?、とゆうのがおそらく本作のテーマのひとつで、それ描きたかったんだろうな、てのがわかりすぎるほどわかってウザい笑よくわかる。
人間の善い面と悪い面、両者が提示される中で、その対照として描かれるAI。作品に奥行きを生んでいる。
マット・デイモンとアン・ハサウェイ!
マット・デイモンはサプライズだったんだろうか。クレジットこそされていないが、出演はだいぶ前から明らかになっていたよーな。
つかぼくが本作にはじめて興味を持ったのは、大好きなデイモンが出てるからなんだよね。てのは観にいく直前まですっかり忘れてたんだけど笑。
そのデイモン、珍しくイヤなキャラクタだったな笑。いつも通りなのは、恐ろしくアタマのいいヤツ (として通ってる) 、てことくらいか。
それと優等生的な雰囲気も、まあハマってはいるのか。小賢しくて、理論の範疇から抜け出せない、ザ・優等生。
そんでもやっぱり、このひと悪役は似合わねーわ笑。何だろ、もうちょっとうまく切り抜けるんだよないつもは。もう一歩先までいくとゆうか。何とも中途半端なキャラだった。はっきり言ってミスキャスト。
個人的に好きな俳優さんだけに、監督は何か恨みでもあんのかと苦々しかった笑。まー好きだからそー感じるだけなのかもだけど、新境地、て感じは全くしなかったなあ笑。
そうそう、ミスキャストと言えばアン・ハサウェイ。知的な役が似合わなさすぎる笑。あんなに明るい雰囲気の美人、サイエンスの世界にいないよゼッタイ笑。そこだけはリアリティの欠片もない笑。
結果的には大いに足を引っ張ってくれるから、まあいいのかもしれんけど。何だかマイナス×マイナスはプラスみたいな感じでイヤだな笑。
ジェシカ・チャステインとマイケル・ケイン!
対照的に素晴らしいのは、ジェシカ・チャステイン。
このひとは『ゼロ・ダーク・サーティ』もだけど、没頭とゆうか執着とゆうか、その手の役が素晴らしくハマる。人類の進歩は、こーゆう科学者の、ある種突き抜けた拘りによって生み出されるんだろーな。何とも説得力がある。
素晴らしいと言えばマイケル・ケインも!チャステインとの掛け合いは、実の親子のようで一番感動した。けどこのひと、いっつもこんな感じの役だよね笑。
そうそう、ひっそりと出ていたケイシー・アフレックもとても良かった。ぼくは以前から (ベン・アフレックよりも) 断然ケイシー推し (ベンは大根) なんだけど、何だか見た目だけはだんだんアニキに似てきたな笑。はじめて似てるって思った。
さいごに
本作で描かれるのは、役に立たない基礎科学が否定された未来。
アンチ科学の萌芽は、今の社会でさえ感じる部分があるから、ちょっと怖い。「役に立つ」とか、効率なんかを突き詰めていくと、科学は死んでしまう。
劇中でも「アポロ計画」のエピソードとして語られているように、宇宙科学なんて「無用の長物」の最たるものだ。
そして「役に立たない」とゆう文脈でいえば、映画 (や文学といったフィクション) もまた然り。
『トゥモロー・ワールド』とゆう映画 (『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督!) の中で、「100年後には誰も観ないのに、なぜ芸術を残すのか?」ってシーンがあるけど、映画だって、生きていく上で不可欠なものでは決してない。
それでも基礎科学や映画は、われわれにとって必要なのだ (とぼくは信じたい) 。だってこれらは、人間を人間たらしめている、愛や絆 (あるいは好奇心) といった事象と、根源的に結びついているのだから。
本作は、そーゆう「土台」との関わりを描いているのだと、ぼくは思う。
役に立たないとゆう意味ではこれ以上ない、SF (サイエンス&フィクション) とゆうジャンル。そのSFで、科学的になるべくウソのないように、大マジメにサイエンスをしながら、さらに「その先」のフィクションまでも描いた、現時点での最高到達点。
途轍もない映画!
おわり。
オマケ
重力とは何か
本作は相対論や量子論、さらにはそのカップルである超弦理論をも取り込むような、かなり高度な物理学が登場して、少々難しい。
そのあたりはわからなくても大いに楽しめるように巧く設計されていると思うが、多少の知識があればより楽しめるのもまた事実。
つーことで、入門的な本として一冊読むなら、大栗博司先生の『重力とは何か』が断然オススメ。
本作でも重要なキーワード、「重力」の最先端を、わかりやすい語り口で解説していて読ませる。おそらくは文系の、まったく予備知識がないひとでも、少しだけがむばれば読めるレベル、だと思う。
本書を読めば、事象の地平線だとか、5次元時空のイメージなんかも、何となーくつかめるんじゃないか。
5次元時空のイメージ、なんてゆうとちょっと語弊があるな笑。だいじょうぶ、ほとんどの物理学者だって、そんなものを具体的にはイメージできない笑。できなくてもはなしが通じる、てことが、本書を読めばよく理解できると思う。
作品情報
あらすじ
近未来、地球規模の食糧難と環境変化によって人類の滅亡のカウントダウンが進んでいた。そんな状況で、あるミッションの遂行者に元エンジニアの男が大抜てきされる。そのミッションとは、宇宙で新たに発見された未開地へ旅立つというものだった。地球に残さねばならない家族と人類滅亡の回避、二つの間で葛藤する男。悩み抜いた果てに、彼は家族に帰還を約束し、前人未到の新天地を目指すことを決意して宇宙船へと乗り込む。
via: シネマトゥデイ
予告編
予告編はほかにもたくさんある。全部観たいかたは公式ページへ。
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